第60話:『ライザーズ』募集中
※『ズーキーパー』という名前が同名のゲームと被っていたことに急にビビり始めた藤井が、第59話の内容を一部変更してギルド名を『ズーキーパー』から『ライザーズ』に変更しました。大変お手数ですが、前話の後半部分をもう一度読んでから今回の話を読んでいただくと嬉しいです。
リアルタイムで追ってくださっている読者様のお手を煩わせてしまい、大変申し訳ありませんでした。
「ウォーターリーパーを【テイム】するのはいいですけど絵理華さん。ウォーターリーパーって水の中でしか生活できないモンスターですよね?どうやって持ち帰る気なんですか?」
「そりゃあもうあれだよ。『ワープ』で動物園の水場まで一瞬で移動して水の中に入れるしかないよ」
例えばメダカなどの生き物を水槽から別の水へと移動させると、淡水か海水かによる水質の違い・水に含まれる成分やph濃度などの違いによりショック症状を起こして死んでしまうのだが、そこは水に生息するモンスターだからか特殊な体質をしているからか、異なる環境の水の中に移してもphショックによって死ぬことはないらしい。
「それじゃあ、まずはウォーターリーパーを『ワープ』で移動させってうおわあああっ!!」
「どうしたんですか絵理華さん!!?」
急に驚いて勝手に転ぶ絵理華をセレンが慌てて起こす。
「何これ……?「ギルド案内所からの通知」…………?」
魔証石を触って空中にウインドウを映し出すと、全員に見えるようにする。
「何々…………?「拝啓エリカ様。エリカ様の希望条件に合致した冒険者様の加入申請がありましたので、〇月〇日にギルド案内所の受付までお越しください」?!!もう集まったの?!!」
「こんなに早く集まるものなんですか?!!」
さすが大陸で最も栄えている都市にあるギルド案内所だ。それだけ人が集まりやすいということなのだろう。
「これどうすればいいの?ウインドウをタッチすれば返答できたりするの?」
「ルナティちゃんギルドに入ったことないから分かんないけど、確かギルド案内所の通知って返信できなかった気がするー」
どちらにせよ、今回のウォーターリーパーに関する依頼の達成報告をしなければならないので、一度ガオバーロのギルド案内所に戻らなくてはならない。『ワープ』でウォーターリーパーを運搬した後、ガオバーロまで四人で『ワープ』で移動して受付で聞いてみる。
が、ギルド案内所というのは、あくまで冒険者たちの名簿とギルドの情報を管理しているだけであり、『ライザーズ』にどのような冒険者が登録したのかは、その募集申請を行ったギルド案内所でないと情報が分からないとのこと。つまり、ロマリアの受付で聞くまでは申請があった冒険者の素性は分からないようだ。待ち合わせの日は二日後なので、それまでランクの低いモンスターの【テイム】やセレンのレベル上げに勤しむ。
☆★☆★☆
そして迎えた約束の日。
ぞろぞろとギルド案内所の受付に立つと、
「『ライザーズ』に入りたいとのことで、二名のオファーがありました!しかも絵理華様の希望通り、タンクとサブディーラーですよ!!」
受付のお姉さんが我が事のように嬉しそうに解説してくれる。
「で、その二人っていうのは何処にいるの?」
「既にこちらに到着しておりますので、二階の応接室に進んでください」
どうやら既に到着していて部屋で待たせているそうなので、受付で一礼すると階段を歩いて向かっていく。
「どんな人が来てくれたんだろうねっ?!男か?!いざとなったら守ってくれる系男子かっ?!!」
「どちらにせよ、これでルナティさんはギルドの先輩ですねっ!よっ!ルナティ先輩!!」
「ル、ルナティ先輩!?いい響きだあ!新入りに絶対呼ばせてやるのだ!!」
「そう考えるとルナティは後輩なんだよね?私のことを先輩って呼んでもいいんだよ?」
「エリポンはエリポン!セレセレはセレセレだよっ!!」
「ボクに比肩する実力を持ったタンクか確かめてやる。かわいがってあげないとね。ふふ……」
理由はどうであれ、いつも無表情なタイガが笑うのは少し珍しい。階段を昇ると指定された部屋まで廊下を進む。
「いよいよだね」
この扉の先に新しい仲間がいる。
この扉の向こうに見たことない冒険者がいる。
期待に胸を躍らせながらドアノブを握り、ゆっくりと扉を開ける。
と。
「あら、もしかして貴女たちが『ライザーズ』の皆様方かしら?」
来賓用に豪華に飾られたインテリアが並ぶ応接室。
その真ん中で優雅にワインを傾ける女性がいた。
「ご機嫌よう。私の名前はメイア=ローゼンガウラ。貴女達には「メイア様」と呼ぶことを特別に許可するわ」
立ち上がって黒いドレススカートの裾を持ち上げると上品にお辞儀する。
「よろしくメイっち!」
「メイっち?何その名前?気安く触らないでよ駄兎!!」
「い゛だっ!!」
早速握手をしようとしたルナティの手を手の甲で弾く。
「あうう……。ギルドに入っているルナティちゃんの方が先輩なんだぞう…………」
「と、とりあえずさ、私たちはこれから一緒に冒険する仲間だよっ!これからもよろしくね!」
「よろしくお願いしますの間違いじゃないかしら?私をローゼンガウラ家の令嬢だと知っていてそのような物言いをしているのだとしたら、相当無知なお方ねっ!」
金色のドリルツインテを揺らしながら柳眉を逆立てる。
「ろ、ローゼンなんとか家?」
「あら?本当に知らないのかしら?そんな知識もないのにLSランクギルドのギルドマスターをやろうだなんて、よく思い立ったものだわ!」
「…………」
ペットとして犬を飼う時、鳴き声などで餌やボール遊びを要求されても従ってはいけないと言われている。
それは、一度ペットの要求を呑んでしまうと、「こうすれば意のままに人間を使うことができる」という成功体験を学習し、同じ行動を繰り返すようになるからだ。だから、どんなにペットに要求されても無視し、あくまで主導権は人間が握っていることを教え込むことが大切なのだという。
目の前にいる高飛車少女も同じだ。
蝶よ花よで余程大切に育てられてきたのか、自分が世界の中心で、全ては自分が思うように事が回ると思っている。
ならば答えは見えている。
「こうすればこうなるであろう」と思っている相手の意表を突くことだ。
「ごめんなさい。私、ローゼンなんとか家がどういう風に凄いのか分からないし、あなたの凄さも分からない。私にいろんなことを教えてくれないかな?」
「っ!!」
やはり、馬鹿にされたことに対して絵理華が激高したり、落ち込んだりすると予想していたらしい。真摯で真っすぐな瞳で見つめられたメイアが面食らったような顔をした。
貴族(かどうかは分からないが、高貴な出自なのには違いないだろう)としては真摯な態度の頼み事を断れないのか、顔を逸らしながら分が悪そうに答えを述べる。
「ひ、昼型吸血鬼の名門一族よ。旗揚げをしたイグロータスト家の側近を務めた一族で、昼型吸血鬼の中ではナンバー2の名家なのよ?覚えておきなさい」
『吸血鬼』と一言言っても、この世界には『昼型吸血鬼』と『夜型吸血鬼』が存在する。
昼型吸血鬼というのは、「吸血行動によって欲求を満たすためには、人間と敵対するよりも、人間社会に迎合した方が効率的である」という考えの元、生活基盤を昼へと移転させた吸血鬼の一派で、家畜の屠殺・モンスターの討伐などにより吸血衝動を満たし、人間と共に行動する吸血鬼を指す。
一方で夜型吸血鬼は、「人間を襲撃して人間から生き血を啜ることこそが吸血鬼が吸血鬼たる所以である」という考え方の元、夜に行動して生きた人間を襲撃することで吸血衝動を満たそうとする吸血鬼である。
平たく言ってしまえば、人間に対して親和的なのが昼型吸血鬼、敵対的なのが夜型吸血鬼だ。
「へえ、吸血鬼ってもっとこう、人間を襲撃して血を吸ったり、太陽の光で灰になったり、ニンニクや十字架を嫌うもんだと思ってたけど、そういうわけでもないんだ?」
「何を仰っているのかは分かりませんが、ほとんどが夜型吸血鬼による悪いイメージですわね。嫌ですわ」
メイアが物憂げに溜息を吐く。
吸血鬼といえば太陽が苦手、ニンニクや十字架を嫌う、鏡に姿が映らない、噛まれると吸血鬼になる、と言った特徴があるが、これらは全て近世以降の小説・映画などによって付け加えられた設定である。
本来、民間伝承による吸血鬼とは、丁寧な土葬がされなかったことによって死者の尊厳を踏み躙られた亡者の遺体が霊的な力によって動き出し、人に襲い掛かるモンスターだ。そのため、金銭的な都合などにより満足な葬式が行われない一般庶民が吸血鬼になることが多いとされ、吸血鬼=貴族のような見た目をしている、というイメージも近世以降に付け加えられた設定だ。
だがしかし、ここは異世界。
『吸血鬼』という種族そのものが存在するらしく、揺り籠から墓場まで吸血鬼のままらしい。
「あれ……?そういえばもう一人いるんですよね?一体何処にいるんでしょう?」
『こ、ここであります』
曇った声がソファの裏側から聞こえた。
「ずっとこの調子ですのよ?全く、こんな状態でモンスターと殺し合いなんてできるのかしら?」
呆れたような表情をするメイアを後目に裏側を覗いてみると、
『は、初めまして……。ハロイラです…………』
全身超重装備鎧に包まれた小柄な少女(?声と体形から判断するならば少女だ)が現れた。
「なろう」にてブックマークを三件、感想を一件いただきました!ブックマーク&感想をくださった方ありがとうございます!!
さて、前書きにも書きました『ズーキーパー』問題。
複数形にして『ズーキーパーズ』にするか否かで散々判断に迷いましたが、「zookeeper」と英語で検索してもゲーム「ズーキーパー」がヒットすることからすると、「zookeeper」という言葉にはゲーム「ズーキーパー」の強いブランドイメージが籠っている、ということがよく分かりましたので、ゲーム「ズーキーパー」の持つ強いブランドイメージを崩さないためにも、類似の名前を避けるために『ライザーズ』と改名する運びとなりました。リアルタイムで読んでくださっている読者様を混乱させるような事態となってしまい、大変申し訳なく思います。
「あれ?絵理華たちのギルドの名前を決める回書いてるけど、いいギルド名思いつかねぇぞ……?」と思いながら切羽詰まった状態で執筆をしていた藤井の下調べ不足でした。
ではまた!これからもよろしくお願いします!!




