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ビューティー・オーク  ~ オークになった美容外科医、世界を変える ~  作者: 香坂 蓮
ホームステイ、再びっ! 犬のお兄さんは大人気の巻
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~ 第三話  熊を背負った豚は、人から見ると怖かったりする。

感想頂いた方、ありがとうございます!



 偉い人に会う……それなのに、俺は腰巻一丁。


 まぁ、スーツやタキシードを用意しろってほうが無理な話だよな。オークのオーダーメイドを受け付けてくれる服屋さん、募集中です。


 てなわけで、俺はリリーちゃんとそのパパに会うために森の中を進んでいる。


 今日のお付きはグレゴール。デカくて力が強いので、熊を運んでもらっている。ちなみに彼も、腰巻一丁だ。


 いやぁ……熊、狩れたよ! 斧で倒しちゃうと傷がついてボロボロになっちゃうからさ、ボクシングスタイルで勝負しちゃったぜ。


 割と早い段階で熊がフェアプレーを放棄して噛みつき攻撃をしてきた時には焦ったね。全く、ルールを破るなんてひどい奴だな!


 多少噛まれたり引っ搔かれたりはしたけど、最終的には首を絞めて窒息させたから傷はほとんどない。やったねアルト君!


 ……えっ? ボクシングなのに首を絞めたのかって?


 先にルールを破ったのは熊だ! ゆえに俺は悪くない!


 不器用なりに血抜きもちゃんとしておいたし、食べてもそこまで鉄臭くはないはずだ。毛皮だって、人間なら俺たちよりも上手く使うだろ。


 さて、いつもはこの辺りでハリソンさんと合流するはずなんだけど……


「総員! 構えっ!」


『ぷぎゃぁっ!?』


 なんか高そうな感じの鎧着てる人がいっぱいいますけどっ!? それに、すごく殺気だってますけど?


「待て! あれがアルト殿だっ! もう一体も、グレゴール殿というオークで敵ではない!」


「しかし副長! 危険です! あんな巨大なオーク、見たことありません! それに、熊を背負ってるんですよ!?」


「なぜ彼らが熊を背負っているのかは分からんが、よく見ろ! 彼らから殺気を感じないだろう!」


 そう言われて、武器を下ろさないまでも少し殺気を収めてくれた鎧の人達。これはあれか? 貴族様が来ることになったから、警護が厳重になったパターンか? アメリカの大統領が着た時の東京みたいなもんか?


「申し訳ない、アルト殿。この者達は、辺境伯閣下の警護を担当する者なのです。オークと接触するのが初めてなため、少しピリピリしてしまっているのです」


 少しってか、めっちゃピリピリしてるけどね? マジで殺りあう五秒前、くらいだったぜ?


 とりあえず、場の空気を和ませるために俺はサムズアップをしておく。鎧の人達から小さなどよめきが起きた。


「ときにアルト殿。……グレゴール殿が背負っている熊は、いったい?」


 おずおずと、といった感じで聞いてくるハリソンさん。どうやら俺の渾身の手土産は、皆様を怖がらせてしまったらしい。……なぜだ? サリーちゃんなんか、喜んで食ってたぞ?


――おみやげ。


 しゃがみ込み、指で地面に字を書く俺。


 鎧の人達から再びのどよめきを頂きました。そこの、『バカな! オークが字を書く……だと!?』って言ってる人。芝居が大きいぜ? 舞台を目指すのかい?


「……なるほど。気を遣ってくださったんですな」


 ハリソンさんの顔が、心無しか引きつってる気がする。これは……外したか? でもさぁ、熊と言えば森で用意できる中で最高級の土産だぜー? 割と苦労したんだよー? ショックだわぁ……。


「ひとまず、いつも通り武器をお預かりしてもよろしいか?」


 咳払いを一つした後に、ハリソンさんが申し出てくる。俺とグレゴールは素直に斧を手渡した。


「感謝します。それでは、こちらへどうぞ。……いや、失礼。ひとまず熊はこちらに置いておいていただいてもよろしいか?」


 そう言って、案内しようとするハリソンさん。その後ろから、なんとかしてハリソンを止めようと言葉を探している鎧の人達。そして地面に横たえられる熊。


 あっ、ジョンさんが心配ないって説得してるな。……犬は受け入れるのに豚を受け入れないのはどうかと思うぜ? 豚だって人間のパートナーになれるってところを見せてやる。


 ってなわけで森を抜け、村へと入る。


 おっ、リリーちゃん! 久しぶりー。……その横にいる、マッチョでダンディな男性はもしかして?


「お初にお目にかかります、大賢者様。私、この森を領有しております、オルブライト辺境伯家が領主、イザーク=オルブライトと申します」


 ……貴族様、めっちゃ腰が低い件。


 なんで? てっきり俺が『ははぁ』って頭を下げるつもりで来たんだけど? これ、大丈夫なの?


「大賢者様には、娘のリリーの顔を治療していただき、誠に感謝しております。お礼に伺うのが遅くなってしまい、申し訳ありません」


 うん、それは全然いいんだ。リリーちゃん本人から何度もありがとうって言ってもらったし。


 まずはこの空気をどうにかして欲しい。貴族様の低姿勢っぷりに、お付きの方々の戸惑いが止まらないんですけど?


「……閣下。アルト殿が戸惑っておられます。それに彼は話せば分かる方なので、こちらの事情を打ち明けたほうがよろしいかと。あと、口調も普通でよいと思います」


 ハリソンさん、ナイス! そうだよー。偉い人にそんな口調で話されたら、かえって緊張するよー。


「うむ。……アルト殿、言葉を崩してもよろしいか? 相談したいこともあるのだ」


 よろしいですよ。……よろしいのか? まぁよろしいってことにしとくか。


 とにかく話を聞いてみないことには、何が何だか分からん。なによりもまず、『大賢者』って呼ばれるのはくすぐったいからすぐに止めてもらうことにしよう。


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