~ 第五話 孤立無援 ~
戦闘シーンはやはり難しい! 上手く描けていることを祈ります。
では、どうぞっ!
ふんふんふーん……おっ! あの木の実、サリーちゃんが好きなやつじゃん!? ゲットゲット!
朝っぱらから幸先がいいじゃないか。今日の俺の運勢ランキング、一位っぽいぞ? 今日一番ラッキーなのはブタ座の貴方! って感じだな。
サリーちゃん、どっちかっていうとアウトドア女子だからなぁ。採集とか、浅い場所での狩りに連れて行ってあげると、いつも目がキラキラしてたからな。
危ないとはいえ、ずっと集落に居てもらって、ストレスを溜めるのもよくないだろ? せめて食べ物くらいは充実させてあげたいんだよね。
というわけで、今日の狙いは熊だ! 森の熊さんは食べごたえがあるうえに美味い。ジビエ料理……最高だぜ?
そんな感じで森を奥に進んでいく。
……ん? なんか、足音が聞こえるな? それもヘタクソな忍び足だ。匂いは……ゴブリンの匂いが強いか? でもこの辺りはゴブリンの活動圏内だしな。
人間か?
いや、こんな深いところに来る人間なんかいないよな? それとも超強い奴がワザワザ来たのか? ……だったらこんな不用心な足音は立てないか。
……これ、近づいて来てるよな? しかも多くないか? 何人かの足音って感じじゃないだろ?
『ぶぎゃ!?』 (あぶねっ!?)
なんだ!? 石!? 急に顔に向かって飛んできたぞ!? 誰だよ!?
そんな俺の疑問はすぐに解消される。
『……ぷぎゅ』 (……マジかよ)
茂みから出てきたのはゴブリン。それも数えきれないレベルの団体さん。そいつらが、明らかに友好的では無い感じでこっちを見ている。
『ゴブゴゴブ……ゴゴブフゴブ!』 (お前がいなくなれば……全部上手くいくんだ!)
先頭のゴブリンの叫び声に、後ろのゴブリン達が絶叫で応える。
全員が石やら木の棒やらを持っていて、完全にやる気モードだ。背の丈が俺の腰くらいまでしかない奴らだとはいえ、これだけ数がいると迫力に押されちまう。
『ぶぎゃふぎゃ! ふぎょぶぎゃ……』 (ちょっと待て! 話し合えば……)
『ゴブゴブッ! ゴガァァッ!』 (うるせぇっ! 死ねぇぇぇっ!)
一斉に飛んでくる、大量の石。的は巨大だ、避けられるはずもなく、嫌というほどに当たる。ケガすることはないけど、地味に痛い。なんとか顔だけは腕で守ってるけど、首やら股間やらにも数発もらう。
……はうっ! 一個、チ○コに当たった!? よかった! 腰巻付けといて! 全裸だったらヤバかったかもしれない。
気付くとゴブリン達は、俺を囲むような態勢へと移動している。石を投げて俺の動きを牽制しながら、徐々に距離を詰めてきている。
『ぶぎょぶぎゃぶが! ぶぎゃぶ、ふがぶぎゃ!』 (止めろって! とりあえず、ちゃんと話そうぜってば!)
少なくとも、お前らは言葉が通じるだろ? 殺し合う必要なんかないじゃねぇか!
そんな俺の訴えも、頭に血が上りきった様子のゴブリンに届くことはなかった。距離が縮まるにつれて、投げつけられる石の威力も強くなってくる。
……余裕が無い。
ゴブリン一人一人は弱いから、すぐに殺されることはないはずだ。
ただ、ここまで数が多いといつかはやられる。いくらオークが丈夫だからって、限度ってもんがある。
どうする?
皆殺しにするつもりで暴れたら、生き延びられるかもしれねぇけど、そんなことしたらオークとゴブリンの関係が決定的に悪くなっちまう。言葉は悪いけど、半殺しで止められる自信がない。
『ゴギャァァァァッ!』 (殺せぇぇっ!)
俺の前に陣取っていたゴブリン達が、とうとう俺に突撃を掛けてくる。他のゴブリンは、周りからドンドン石を投げてきている。
『ぶぎゃぁっ!』 (グッ……ちくしょうっ!)
殺せないっ!
今ですら、話し合いに持ち込むなんてほとんど不可能な状況だ。それこそ一人でも殺してしまえば、こいつらは絶対引いてくれなくなる。
そうなっちまえば、あとはどちらかが力尽きるまで終わらない。
クッソ! こっちを殺しに来てる相手を、死なせないように無力化するなんて、厳しすぎんだろ! せめてゴブリンがもうちょっと丈夫ならなんとかなるのに。
『ぶぎゃぷぎゃぁぁ!』 (止めろってばっ!)
『グギャァッ!?』
手加減したつもりの張り手が、ゴブリンを吹き飛ばす。そのゴブリンは木にぶつかりぐったりとしている。思ってた以上に軽い。
『ゴギャァ!』 (てめぇっ!)
吹き飛ばされたゴブリンを見て、ゴブリン達はさらに激高する。マズい……マズすぎる!
『ぷぎゃぁっ!』 (いってぇっ!)
至近距離から投げつけられる石が、目の下に当たって思わず怯む。急所に当たるとさすがに辛い。とにかく近くまで来た奴は無力化するしかない。死んでくれるなよ!?
そんなことを考えていた俺の太ももに、鋭い痛みが走った。
『ぶぎゅううっっ!』
言葉にならない、悲鳴のような声が口から漏れる。
なんだ? 何をされた?
慌てて太ももを確認する。そこには、オークにとっては小さいはずのナイフが突き刺さっていた。
想定外だっ!
このサイズでも、ナイフで刺されたら結構痛い。
あれか? 人間で言えば、カッターナイフで刺したようなもんか。
即座に俺は太ももからナイフを抜く。分厚い皮膚に阻まれて深くは刺さって無かったらしい。重傷ではないけれど、思っていた以上の痛みに思わず怯む。
もしもこのナイフが目に刺さったら?
途端に怖くなる。さっきまでは遠くに感じていた死神が、近づいてきたような気になる。
『ぶがぁぁぁぁっ!』
雄たけびと共に、周りで俺に殴り掛かっていたゴブリン達を吹き飛ばす。死んではいないはずだ。まだ手加減は出来ているはずだ。
一瞬、皆殺しをいう言葉が頭をよぎった。自分が死ぬかもしれないと思った瞬間にだ。
情けねぇ。
こんな自分勝手なクソ野郎が、何が『仲良くしたい』だ。ふざけてんじゃねぇよ! 激情のままに、俺は背中に背負っていた斧を投げ捨てる。
まだ、誰も死んじゃいねぇはずだ。まだ、話し合えるはずだ。
『ゴギャァァァッ!』
横っ腹から一人のゴブリンが突っ込んでくる。手には……ナイフだ!
上等だよっ!
俺はお前らには殺されない。だけどお前らを殺すこともしない。死ぬ気でこの場を切り抜けて、もっかいお前らと話し合ってやるよ!
『グギャッ!?』
『……ぶごっ?』 (……はっ?)
そんな俺の決意は、一瞬にして崩れ去ることになった。
俺に目掛けて突っ込んできたゴブリン。その額にはいつの間にかナイフが刺さっていた。ゴブリンが持っている物よりも立派なナイフだ。
目の前で、ゴブリンが崩れ落ちる。その死に顔は、自分の身に何が起きたのかすら理解出来ていないようだった。
「アルトっ! 大丈夫かっ!?」
サリーちゃんの、よく通る大きな声が森に響く。
仲間が殺されたうえに、狙っていた人間の女が現れた。しかもその女が、仲間のゴブリンを殺したらしい。
そんな状況に、ゴブリンの興奮は最高潮に達した。俺の意思に反して、戦いは次の局面へと移りつつあった。




