第5話
届いた手紙
親愛なる主 シャルロッテ様
定期報告でございます。
先日、テレーゼ様がフォルクマン公爵家嫡男夫人として、初めての領地視察を行いました。
対応にあたった者も、テレーゼ様の穏やかで誠実なお人柄を感じ取り、変わらぬ取引を願っておりました。
大きな問題は起こらず、視察後の買い物の時間にはとてもリラックスされていたように感じます。
同封いたしました贈り物は、シャルロッテ様の好物であるクッキーの大箱でございます。
テレーゼ様のお手紙も添えておりますので、そちらを先に読まれていれば、あの方のお気持ちは伝わっているかと存じます。
奥様を担われる方は、繊細でとてもお優しく、貴族も平民もそれぞれに真摯に向き合おうとされる方です。
現在のお立場に対して不満を漏らすことなく、ご自身が出来る範囲で学びを深め、身につけておられます。
我々使用人は遠くからお支えすることしか出来ませんので、いつか心が折れてしまうのではないかと危惧いたしました。
年末の暇をいただきましたので、復帰と共に、改めて新年のご挨拶を贈らせていただきます。
追記:テレーゼ様より私と専属侍女二人にガラスを使ったブローチを賜りました。
深い茶色の髪をイメージさせるブロンズ製で、穏やかな深緑の瞳を思わせるガラスがはめ込まれたものになります。
レーナとレーネには同じ意匠のイヤリングを、男性陣には万年筆を購入されましたよ。
ビアンカ
親愛なる シャルロッテ様
先日のテレーゼ様の初めての領地視察に関して、ビアンカより報告が届いていると存じます。
またテレーゼ様より冬の祭りの贈り物も同封してございます。
私からは、マクシミリアン様についてのご報告を。
婚姻の書類への拒否があった日以降、テレーゼ様との接触はございません。
時折、私が書状をお運びするときには、依然と変わらぬ様子が見られます。
居室のある二階よりお出になることはないものの、付き添う使用人たちからは食事や入浴など普段通りの生活を送られているとのこと。
ローザリンデさんの夢をご覧になっているのか、時折魘されているようですが、薬などは希望されていないようです。
領地の管理や社交界のお話は興味がないようで、話題には上らないため、旦那様のご意向通り、こちらからの情報提供は行っておりません。
テレーゼ様におかれましては、今しばらくは勉強を続けられたいとのご意向がありますので、歯がゆいばかりではありますが、使用人一同お支えしていく所存でございます。
雪の季節が続きます。
どうかご自愛くださいませ。
叶いますならば、ご友人としてテレーゼ様をお導きいただけますよう。
追記:テレーゼ様の初視察の際、万年筆を賜りました。
書き心地がよく、つい様々な所で使ってしまいますね。
ニクラス
シャルロッテ 『何が定期報告よっ!贈り物の自慢がしたくて手紙を書いただけじゃない!』
その日、一日でクッキーの大箱を食べ尽くしたシャルロッテに、仕事を終えた第二王子はフォルクマン公爵家へ抗議の書状を送ったとの噂が立った。
――もしクッキーを贈るとしたら、他の店のものにして欲しい。健康が心配だ。
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