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太陽が昇らない国の物語(仮) 第三部  作者: 岸田龍庵
風と水の回顧録(かいころく)
33/34

嵐と津波と偉大なるドラゴン

海を守るために、風を守るために、ジェスとグレイス、ベルタとハイドは決断をします。

【夜 環礁(かんしょう) 砂浜】


(きり)が立ちこめる砂浜

車座にたき火を囲むジェス、グレイスそしてベルタ


ベルタ:「憎かったの・・・」

ジェス:「誰が憎かったんだ?あのすべての闇ってやつか?」

ベルタは、ゆっくりと首を横に振って否定した。

ベルタ:「私たち人間・・・」

押し黙るグレイスとジェス

ベルタ:「海を汚すことしか能がない私たち人間・・・」



◆回想シーン(第三部26部参照)

海に向かって吠えるベルタ

ベルタ(オフ):「私は海を人の手から遠ざけたかった」

潮だまりに浮かぶゴミ、白い腹を見せて死んでいる小魚たち

ベルタ(オフ):「汚れた人の手から。人の手が届かない所へ海を遠ざけたかった。

 青い海を守りたかった。私の意志が海に伝わり、人は海から遠ざけられるはずだった」

◆回想シーン終わり



グレイス:「そうすれば海とひとつになれると思ったわけ?」

頷くベルタ

ベルタ:「私の願い通りになった。濃い霧が晴れると、そこは人と海が関わりを持たない世界だった。人はひたすら海を恐れていた」

ジェス:「そんな世界にはならなかったぞ。俺たちはお前の船でここまで来られたわけだし」

ベルタ:「霧の向こうにあったのは私たちの世界の海じゃなかったのよ。そこは人ではない竜が海を司る世界」

グレイス:「ドラゴン?」

ジェス:「って、昔話に出てくるあのドラゴン?」



◆挿入映像

大海原をうねる巨大な体躯(たいく)の水竜

ベルタ(オフ):「そう。その世界では竜が海を司っていたの」

グレイス(オフ):「ねえベルタ。さっきから、その世界とか私たちの世界って言っているけど、私たちの世界の他にどんな世界があるの?」

◆挿入映像 終わり



ベルタ:「人が司る前、海は竜のものだった。竜が海を司る世界。私たち人の世の前の世界」

ジェス:「人の世の前の世界?」

ベルタ:「ハイドの声が教えてくれたの。ここは人の世が訪れる前の世界・・・」



立ち上がるベルタ

ベルタ:「戻らなきゃ」

グレイス:「戻るってどこへ?」

ベルタ:「私たちの世界よ。人の世の世界。霧の向こうに戻らなきゃ。海が守れなくなる」

ジェス:「海が?」

ベルタ:「私が守らなかったら、私がいなかったら、誰が海を守るの?私が守らなきゃ。戻らないと」



声:「そうだ、帰るぞベルタ」

ベリッシモ号の舳先からハイドの声がする

続いてバシャバシャと波音が近づいてくる

霧を背にしてハイドが近づいてくる

グレイス:「ハ、ハイド・・・」

ジェス:「お前・・・」

ハイドに近づくジェス

波音はやがて駆け足になる

ジェス:「テメー、今までどこに行ってやがった!」

ハイドに殴りかかるジェス

そのまま倒れ込むジェスとハイド



ハイド:「久しぶりにこれはキツイな」

ジェス:「お前、お前・・・」

ハイドの胸ぐらを掴むジェス

ジェス:「どんなに会いたかったか・・・」

怒りながら涙目になるジェス

グレイス:「ハイド、やっぱり生きていたのね」

ベルタ:「ハイド・・・」

ハイドの首に暑苦しく抱きつくベルタ

それ以上言葉が出ない再会



ハイド:「老けたなジェス」

やや呆れるジェス

ジェス:「久しぶりの第一声がそれか?そういうお前はなんで年を取ってないんだ?俺たちより5つは年上のハズだから、そうとうオッサンだぜ」

ハイド:「話は後だ。とにかく帰るぞ」

ジェス:「帰る?」

ハイド:「俺たちが出会った、あの砂浜さ」




【環礁入り口】

        

環礁を出るベリッシモ号

外海は大時化(おおしけ)で、上空には雷雲が立ちこめて、竜のごとく稲妻が走っている

時折雷光の中をペガサスらしいシルエットが見える

ベリッシモ号の会場近くに空から降ってきた何かが落ちる

巨大な水柱が甲板のベルタたちを洗う



ジェス:「何が起きてんだよ、ハイド!」

ハイド:「星の騎士団が戦っているんだ」

グレイス:「誰と?」

ハイド:「俺たちの前の司るものさ」

ジェス:「それでこんな騒ぎかよ!」



ベリッシモ号の舳先の海が小山のように盛り上がり、長大な体躯の竜をはき出す

幾重にもベリッシモ号の船体に巻き付く竜の体

ジェス:「なんだこりゃ?」

ハイド:「俺たちの前の司る者」

ベルタ:「そうドラゴン」



ドラゴンが首をもたげ、ジェス達に話し出す

ドラゴン:「()()()()()()()たちよ。世代が変わるのは宿命として受け入れよう。だが、司る者になる力があるか、試させてもらおう」


ドラゴンが一喝(いっかつ)すると、猛烈な突風がベリッシモ号に襲いかかる

ジェス:「おもしれえ!」

例の構えを取るジェス

グレイスも同じように例の構えを取る

ジェス:「試せるものなら、試してみろ」

夫婦で突風を巻き起こすジェス

ドラゴンが巻き起こす突風と、風の夫婦が作り出す突風が正面でぶつかり、きっ抗している



走り出すベルタとハイド

そのまま荒れ狂う海の中へつっこむ

波にもまれるベルタとハイド

天地左右すべてが青い世界の中で、人が排出したものが汚点のように漂っている

ハイド:「確かに、人は海を汚し放題に汚してきた」

ベルタとハイドの周りに、汚点が集まる

ベルタ:「人の過ちを正すことができるのは、人しかいない」

ドラゴン(オフ):「お前達、命が定まった者達に、人の過ちを正すことができるのか?

 一瞬の命しか持たないお前達人間に、永遠の時を持つ海を守る事ができるのか?」

ベルタ:「できる!」

波の中で波にもまれて歌うベルタ

ベルタ:「私たち人間は、次のそのまた次の世代まで、青い海を伝え続ける」

読了ありがとうございました。


今後もごひいきによろしくお願いします。

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