聖女と聖者の別れ
4人は、初めて出会った砂浜へ戻ります
しかし、何もかもが昔と同じというわけにはいきません。
太陽が昇らない国の物語(仮) 第三部の最終投稿になります
【夜 海上】
大理石のような夜の海を走るベリッシモ号
◆回想シーン
南海の孤島(第一部27、28部より)
破壊される蒸気船のドック
帰路につくベリッシモ号が海に呑まれていく
ハイド(オフ):「あの時、オレは死んだ。いや、海に飲まれたんだ」
ベルタ(オフ):「飲まれた?」
ハイド(オフ):「俺たちは火の力で動く船を片っ端から叩きまくった。それは火の力を弱めて、水と風の力を増やすことになったんだ」
グレイス(オフ):「火の力と水と風!」
ジェス:「俺たちは海と風を守るために、火を吹き消してバランスを崩したってことか」
ハイド:「そう。海は水の力を減らすためにオレを取り込んだ。バランスを戻すために」
グレイス:「そして今は火の力が大きくなった。だからあなたが呼び出されてミランに手を貸したってこと?」
ハイド:「そうだ。あいつらの火消しを手伝ってやった」
霧の中に消えるベリッシモ号
【夜明け前 砂浜】
夜明け前の灰色の空に映えるベリッシモ号の影
浜に降りる4人
4人が初めて出会った砂浜
波が素足を洗う
ハイド:「何も変わってねえな、ここは」
ベルタ:「変わったわよ。あなたがいた頃より水位が上がったわ」
灰色の空間が割れて朝日が顔を出す
海が青く染まり、朝焼けの中に4人のシルエットが映し出される
ハイド:「海の色だけは変わらないな」
ベルタ:「青い海よ。あなたが愛した青い海よ」
海を見つめたまま答えないハイド
ベルタ:「ハイド・・・・」
ハイド:「そろそろ、行かなきゃならねえんだ」
向き合うハイドとベルタ
ハイド:「流水の聖女と聖者は同じ世界にはいられないんだ」
ベルタ:「うん、わかってる」
こづくように波と戯れるハイド
ハイド:「お前を船に乗せたのはオレの間違いだったかもな」
ベルタ:「どうして?」
ハイド:「海を、青い海を守るなんて使命を背負わせなくて済んだのにな」
ハイドと同じように波と遊ぶベルタ
ベルタ:「今思うと、私は海を、青い海を守っていたんじゃないと思うの」
答えないハイド
ベルタ:「私はあなたとの思い出を守っていたの。
どこまでも何をしても自由だったあの日の思い出。
あなたがくれた大切な思い出。
私たち人間は年を取り変わっていくわ。だけど海は変わらない。
海が色あせない限り、私たちの思い出も変わらない。私は思い出を守っていたんだと思うの」
ハイド:「そうか・・・」
ハイドに向き直るベルタ
ベルタ:「あなたなんか、あんたなんか、おじいちゃんになっていくあなたなんかいなくても、私は生きていけるわ。海よりも深い絆があれば・・・」
ハイド:「ベルタ・・・」
吸い寄せられるように抱き合う2人
朝日の中で抱き合う2人のシルエットが美しいオブジェのように映えている
ベリッシモ号の船尾に立つハイド
ジェスとグレイスに向き合うハイド
ハイド:「今度会うときまでに、泳げるようになっておけよ!カナヅチ族長」
ジェス:「おう、今度会うときは見とけよ。ポンコツ船長!」
船の中に消えたハイド
ゆっくりと動き出し、波の中に消えていくベリッシモ号
やがて船影が消えて、朝日と青い海だけが残った
今は消えてしまった船影を見つめるベルタ
その横顔は朝日を受けて限りなく美しかった
ベルタ:「私は、本当は流水の聖女なんかになりたくなかった」
グレイス:「ベルタ・・・」
ベルタ:「やめてしまおうと何度も思った。
私が流水の聖女でなくなれば、あの人が帰ってきてくれる、そんな事を何度も何度も考えたわ。
私はずっとずっとハイドの隣にいたかった。
水の民とか風の民とかじゃなくて、女の子としてハイドの隣にいたかった。私は水を司る者なんかになりたくなかった」
ベルタの頬を静かに涙が落ちる
ベルタ:「つらかった。苦しかった。
あの人がいない海を走るのが。
どうして私は1人なんだろう。
どうしてハイドがいない船なんかに乗っているのだろう。いつもそんなことばかり考えていた。
でももうつらくない。あの人は海なんだ。どこまでも青い海なんだ。海が青い限り、ハイドはいつも一緒にいる。
私はこの青い海を守っていく」
グレイス:「あなただけじゃないわベルタ」
ベルタ:「姉さん」
ジェス:「俺たちで守っていくのさ。海も風も、な」
太陽が昇り、新しい青い海が生まれる
ベルタ:「そうね」
もうベルタの頬に涙はなかった
【風と水の回顧録】終わり
読了ありがとうございました。
個人的な感想で申し訳ありませんが、この章(風と水の回顧録)が一番ストレスなく話を転がせたような気がします。
第一部の時に結構その場の雰囲気で決めた設定が行かせた章になりました。
近日中に最終になります第四部の投稿をしたいと思います。
読んでくださった皆様、ありがとうございました。




