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母親と言う恋人【21】

 これは、自分に対して都合の良すぎる解釈かも知れないけど……小人ウルズのやった事は、俺の精神にかなり優しい内容だったんじゃないのだろうか?


 結局……この二日、俺は仕事の事だけを考えていれば良いだけだったからだ。

 余計な事は考える必要もなく……ただ、自分の受け持った賞金稼ぎの首を追い求めていれば良いだけだった。


 ……つまり、最高の暇潰しだった。


 ………。


 ……いや、考え過ぎか。


 コイツが、そこまで気の利く事をして来るとは到底思えない。


 それに、例えそれが真実であったとしても……今更『ありがとう』と言う言葉を口にしたくないんだよなぁ……気分的に。


 ……ま、俺もへそ曲がりと言う事だろう。

 そこもまた、今更だ。


 どの道、へりくだった態度を小人ウルズに取るつもりもない。

 

 ……ただ、せめて……心の中でぐらいは感謝して置こうか。


 キリの事を考えさせないだけの環境を作ってくれて……ありがとう、とな?


 ……よし!


 気持ちを切り替えて行くぞ!


 俺は気合を入れる形で顔を引き締めながらも性別を変えようとし、


『ちょっと待った!』


 何故か、小人ウルズに待ったを食らった。


「……? 今度はなんだ?」


『今の格好で女になる気? 服がブカブカになっちゃうよ?』


「そんなの知るかよ。今は急いでるんだろ?……それなら、女にならないと超高速で滑空魔法グリードを発動する事が出来ないんだから、性別を変えないと……」


『そこが問題なんでしょ?……良い? 今のイリは女に変わっても、性別に合わせた服のサイズに変わる、特殊な服を着ていないから、ブカブカになっちゃう……で? ブカブカの服を着たまま、超スピードでバビューン! っと飛ぼうとしている。そうでしょう?』


「そうだけど……それがどうかしたのか?」


『普通に走るだけで、脱げてしまうぐらいにブカブカな状態になるのに、超高速で空なんて飛んだら、スッポンポンになっちゃうよ?』


「………」


 俺は無言になった。

 

 あながち間違いでもないから困る。

 女になった俺が、全力で滑空魔法を使えば……そのスピードは超音速域にすら到達するだろう。

 ……まぁ、超音速域まで加速する程の距離はないので、そこまでの速度を出す事はないだろうが……それでも音速域付近までは加速して行く筈だ。


 つまり……割りと本気で服が脱げる。


 別に、俺としては、他人に自分の裸を見せる事に気恥ずかしさを持っているのかと言うと……実はそこまででもない。


 なんてか、基本的に男をしている時が多いからなぁ……。

 少なからず、胸は女の時ですら隠す気にならん。

 だからして、ここらに関しては特に問題として取り上げる様な代物ではない。


 ……が、だ?


 仮に助けに行った時、素っ裸だったとしよう?


 それ……すんごぉ〜く格好悪くないか?


 シチュエーションの一つとして、俺がみんなを救うヒーローの様な登場の仕方をしていたとしよう?

 颯爽と現れたヒーローが……真っ裸だったら……どう思う?

 少なくとも……俺は引くね!

 そりゃ、もう! ドン引きだね!


「……まぁ、お前の言い分は理解出来た……出来たが……男の時の俺は、マジで大した魔力がないぞ?」


 俺は、少し困った顔になって言う。


 ここは、本当に不思議な話しでさ?

 俺本人も、未だそれがどうしてそうなっているのか? 明確な答えを出す事が出来ないでいる。


 しかし、どう言う訳なのか?


 性別が男の時は、主に腕力が猛烈に強くなる代わりに、魔力が極端に低くなる。

 性別が女の時は、主に魔力が猛烈に強くなる代わりに、腕力が極端に低くなる。


 ……まぁ、最近は背中に秩序の翼を生やす事で、男の時よりも強靭なパワーを発揮する事が可能になっていた訳なのだが……背中に翼を生えないと言う条件で行くのなら、上記の内容がそのまま当てはまるんだ。


 二度言う様で恐縮だが……どうしてそうなってしまうのかは……俺本人も良く分かっていない。


 強いて言うのであれば、俺の先祖であるりんごに近い性質になると、魔力が上がる模様だ。


 ただ……分かっているのはこれだけだ。

 更に言うのなら……より、りんごに近い状態……つまり、背中に翼を生やすと魔力のみならず、腕力まで桁違いに上昇するんだから、もはや謎でしかないな?


 ただ、それで困る様な事はないし……先祖から貰った、ありがたい能力と言う事にして置こうか? 程度の考えしかない。

 ここに関して言うのなら、何らかの機会があった時でも良いんじゃないのかな? と、思っている。


 知らないからと言って不自由する事は、全くないからな。


 ……っと、話しが脱線してしまった。

 そろそろ、本題に戻ろうか?


「男の時だと……精々、百キロ程度で飛ぶのが精一杯だ……それだと、結構な時間が掛かると思うんだが?」


 俺は努めて真剣な顔になって答えた。

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