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母親と言う恋人【20】

 結果……俺の仕事は難航した!

 もう、笑ってしまうまでに、遠回りをする羽目になったぞ!


 本来であれば……つまり、罪状が固まっている状態であったのなら、半日もあれば終わる様な仕事だった筈だと言うのに……結局、終わって見れば約二日は掛かっちまったぞ!


 ……挙句、


『いやぁ、お疲れイリ! やっぱり本職だけあって見事だったね!……って言う所で、言うのも恐縮だけど……早くも最後の予定調和が待ってるよ? しかも時間がないんだよね〜? 早速、ニイガ城に戻って欲しいんだわ?……あ、ちなみにラスダットとの最終決戦が待ってるから、そこの所よろしくぅ!』


「よろしくじゃねぇぇぇぇっっっ!」


 早くも、次にやらないと行けない話しが、慌ただしく……かつ、無責任に発生していた!


 つか、ラスダットとの最終決戦?

 そんな話しになってるのかよっ⁉︎


 確かに、あの化物が、ルシェンド王を再び狙うと言う事は、俺なりに予測はしていたし……今更って所もあったんだけど、


「……俺、今……ナガオにいるんだが?」


『大丈夫! イリがその気になれば、滑空魔法グリードで十分かからないでしょ? ラクショーでしょ!』 


 お前……他人事だと思って、軽く言ってないか?


「……はぁ」


 本当に……次から次へと……。


 正直、ここで『やってられるかぁぁぁっっ!』って感じの発狂めいた怒鳴り声を、けたたましく喉から叫ぶ事が出来たのなら、これ程楽な事はない!


 しかし、ここまで来たら、もはや選択肢なんぞないに等しいだろう!

 つか、無駄に色々と苦労したんだ。

 こうなったら、最後の最後まで踏ん張ってやろうじゃねーかっっ!


「……分かった……次はニイガ城だな?」


 微妙に疲れた顔になっていた俺は、小人ウルズへと声を吐き出すと、


『その通り! じゃあ、レッツゴー!……と、その前に』


 小人ウルズは、俺の癪に触りそうな勢いで陽気な声を上げた後、


 ポゥゥゥ……


 右手に淡い光を生み出すと、その光を俺の方に向けた。


 ……一体、何を?


 全く以て、良く分からない。


 分かった事は、俺の方に光を向け……そして、淡い光が俺の身体の中へと入って行ったと言う事だけだ。


「……何をしたんだ?」


 俺は、地味に怪しい顔になって言う。


 ハッキリ言って、怪しさが群を抜いていた!

 確実に分かる事は、何らかの魔法を俺に発動させていたと言う事。


 しかし、発動した魔法に、どんな効果があったのかは……密かに何も分からなかった。

 

 実際、身体の中に淡い光の様な物が入って行った……と言う所を、実際に自分の目で確かめては居たのだが……それで、俺の身体にどの様な変化があったのかと言うと? これが、全くと言って良いまでに何も変化がないんだ。


「マジな話し……お前、何がしたかったんだ?」


『それは、本番になってからの話し……それより、急がないと……本気で遅刻しちゃうよ?』

 

 怪訝な顔になって問う俺の言葉に、小人ウルズは少しいたずらっ子の様な視線を向けてから返答して来た。


 ……これは、絶対に人の神経を逆撫でする何かを隠しているだろう……。

 コイツは、俺に恨みでもあるのかね?


 明らかに面倒臭い何かだろう……ったく!


 一体、何をして来たのかは知らないが……今の所、なんの変化もないし、ゆっくりしている暇もなさそうだ。


 思えば、こんな仕事をしてなかったのなら、ここまで時間に余裕を失う事もなく、切羽詰まる感じの状況になんぞならなかったのだが……。


 けれど、これもまた、必要な予定調和なのだろう。

 アルフェドとか言う公爵様は……密かにかなり危険な人物だった。

 もうな? ああ言うのを狂ったドキュンと言うんじゃないのかな? と、マジで思えるまでにおかしな人間だった。


 同時に可哀想な人間でもあったよ……っと、その話しは別の機会にでも話す事にしようか?


 ともかく、今後のニイガ王家を考えるのであれば、確かに潰して置かなければならない危険分子であった事は、俺も認めるよ。


 ……お陰で、二日も余裕があった筈だと言うのに……むしろ、時間が足りなくなっちまったぜ。


 けれど……そうな?


 もしかしたら、これはこれで良いのかも知れない。


 結局、もう……オーナガ武器店に戻る事は出来なかったし。


 仮に金があったとしても、ただのんべんくだりんと宿屋の中でボケーっとしていたら……頭の中で余計な事とか、考えていたかも知れない。


 例えば……そう、キリの事とか。


「………よし、ニイガに行くぞ!」


 そこまで考えた時、俺は自分に言い聞かせる形で口を動かした。

 別に、わざわざ口に出して言う様なレベルではなかったんだが……なんか、不意に口から言葉が出た。


 きっと、自分でも無意識の内に断ち切りたかったのだろう。


 キリの事を考える自分と言う存在と……だ。

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