母親と言う恋人【19】
「簡単に言うとね? これはアフターケアに値する事だよ? イリだって……まさか、この時代にあと一年も居たくはないでしょう?……つまり、先取りして、これから起こる危険の芽を摘み取るのが「今回の予定調和」と言う訳だよ』
「……そう来たか」
やれやれ。
俺が居なくなった以降の事ぐらい、自分でどうにかしろよ……。
こんな事を考えてしまう俺がいたのだが……ここで、小人ウルズの言う『アフターケア』とやらを怠ったのなら……今まで俺がして来た事は、全くの無意味に終わってしまうのだろう。
……ったく。
これも乗り掛かった船だ。
「仕方ねぇなぁ……」
『ちなみに、報酬は一億マール。即金で出るよ? 今回に関しては諸経費が前金として用意されるから……実質、三食昼寝付きだね?』
……マジかっ⁉︎
かなり待遇が良いじゃねーかっ!
場所は、小人ウルズが知っているんだろうしな!
「よし! 早速、この仕事を受けてやる!……諸経費は、直接経理から現金で貰っても良いか?」
領収書と引き換えとかだと困るぞ?
所持金がヤクザだからな!
「……ああ、諸経費なら、ワシのポケットマネーから出すから、経理は通さんで良いぞ〜?」
答えたジーさんは……うぉ。
机から現ナマを取り出して来た!
しかも、束だ!
現役の賞金稼ぎをしていた頃の俺であるのなら、特段驚く様な代物ではなかったかも知れないが……ヤクザな全財産しか無かった現状の俺からして見れば、輝いて見えるレベルだぞっ!
「……ほれ、これだけあれば足りるじゃろ?」
そうと答えたジーさんは、まるでボールでも投げるかの様な勢いで札束を俺に投げて来た。
相変わらず……金銭感覚がおかしい業界だぜ。
思えば、クロノスも同じ様な事をしていた。
つまり、百万マールなんざ、片手で軽くぽぉ〜んと放り投げる感覚の組織だった。
自分の命を代償にして大金を稼いでいるとは言え……この金銭感覚と言うか、金に対する態度は、もう少し考えた方が良いと思うぞ………ま、受け取るがな!
「ああ、そうそう。罪状は人身売買、麻薬取締、贈賄及び収賄、殺人……ま、他にもあるがの? 好きな資料を持ってけ」
ついでに、アルフェドが賞金首になってしまった資料も渡して来た。
……って、そこはちゃんと説明しとけよ! どんだけ面倒臭がり屋なんだよっ⁉︎
ある意味、俺は組合長がクロノスで良かったのかも知れないと言う結論に至った。
クロノスの様にクドクドやられるのも勘弁して欲しい所があるが……このジジイは、色々と端折り過ぎだ!
ったく! その間ぐらいが丁度いいって言うのに!
『まぁまぁ……一応、色々なナビは私がするから、そこまで苦労はしないと思うよ? ともかく行ってみよ〜!』
心の中でブチブチとぼやく俺がいる中、やたらめったら明るい小人ウルズの声が聞こえる。
確かに、小人ウルズがいれば、特にそこまで困る事はないだろう。
……冷静に考えれば、ジジイに色々と聞くより手っ取り早くはあるか……って事にして置いた。
そう考えないと、俺の中にあるフラストレーションが無尽蔵に膨れ上がって行きそうだったからなっっ!
どちらにせよ……仕事の内容としては、破格の内容と言える。
少なからず、今日やって来たばかりの新人に与えられる様な仕事ではなかった。
ここに関して言えば……小人ウルズに助けたれたと解釈しても良いのかも知れない。
だけど、お礼は言わないぞ?
この時代で、俺がひたすら苦労する要因を作ったのは、間違いなくコイツだからな!
……まぁ、俺がこの時代に来ないと、その未来にある現代の俺には続かないから、こんな事をやらせているのかも知れないけど……しかし、それでもお礼を言うのはおかしいと思うから言わんっ!
……ともかく、チャッチャと仕事を終わらせてやるか!
一億もあれば、しばらく生活には困らんだろうし、最短二日と言う条件が多少伸びても、さしたる問題も起こらないだろう。
思った俺は、早速行動に移った。
「……良し、分かった。それじゃ賞金を用意しておいてくれよな? ソッコーで片付けて来る」
こうして、俺はニイガ第二の都市・ナガオへと向かった。
□イリ□
……二日後の夜。
なんやかんやで時間が掛かってしまったが……無事、仕事は終了した。
ったくよ……。
実際に、容疑が掛かっている物だと思って、罪状を確認したら……端っこの方に小さい文字で『予定』と書いてやがった!
いや、予定って何だよ!
それ、今はまだやってないって事になるじゃねーかっ!
結果的に、あのジーさんがくれた罪状は、クソの役にも立たなかった!
イリが、ナガオで仕事をしたお話は、編末のオマケで書く予定です。
……まぁ、飽くまでも予定なので、書かなかったらすいませんとだけ述べて置きます。




