母親と言う恋人【15】
「……まぁ、良い。ともかく、今の俺はヤクザな金額しか残ってねーんだ……このままだと飯代すら危うい。ひもじい思いをするのは御免だしな? 賞金稼ぎ組合は、昔……いや、未来と同じ場所にあるんだろう?」
『実は変わってないね? ある意味、今も昔も全く変わってないよ?……色々と』
「? 色々と? どう言う意味だよ?」
『ま、そこは行ってみれば分かるんじゃない?』
小人ウルズは温和な笑みのまま答えた。
……なんか意味慎重な言葉だな?
まぁ……別に良いんだけど。
どうしてそんな事を言って来るのか分からないが……特段、問題があるとは思えない。
強いて言えば、ランクが最下級と言う事になるから、まともな仕事にありつけるかどうか……そっちの方が心配だったりもするんだけどなぁ……?
この様な事を考えつつも、俺は近所にある賞金稼ぎ組合へと足を向けた。
「……なるほど、変わってねーな」
『でしょう?』
賞金稼ぎ組合に向かって間もなく……俺は独りごちる形で声を吐き出した。
間もなく小人ウルズが相づちを打つ。
場所も去る事ながら、建物も変わっていない。
強いて言うのなら、少しだけ新しい……かな? って言うレベルだ。
それだって、心成し程度だな?
ここが三十年前と言う、固定観念と言うかなんて言うか……そう言うのがあるから、少しだけ新しく感じると言うだけの代物に過ぎない。
……つか、マジで変わらな過ぎじゃね?
「まぁ、勝手知ったる職場……って事にして置こうか」
『うんうん、良いね? 良いね! そう言う、前向きな考えは大事!』
……お前に言われたくねーんだが?
小人ウルズの、無駄に褒める感じの台詞を軽く聞き流しつつ……俺は賞金稼ぎ協会のドアを開けた。
中を開けると……これまた見知った部屋の中に出た。
「昔からある場所だとは思っていたけど……本当に、三十年前から変わらないのな……?」
なるほど、小人ウルズの言いたい事がなんとなく分かった気がする。
強いて言えば、流石に賞金稼ぎの顔触れだけは違っていたが……俺が知る賞金稼ぎ組合の建物が、まんまそのままドンッ! と構えている……そんな感じだ。
思えば、俺がまだ若造だった頃に、初めてここの組合に行った時から十年以上が経つと言うのに、その間取りは一切変わってはいなかった。
……そう言う伝統でもあるのか?
いや、まぁ……そんな事はどうでも良い。
「えぇと、すんません……賞金稼ぎ組合に加入したくて来たのですが?」
俺は入って直ぐの所にある受付に足を向けると、少しばかり丁寧な言葉で、受付のおねーさんへと声を掛けた。
しかし、この受付嬢も見た事がある様な気がするんだよなぁ……?
なんとなく、俺の時代では事務とかやってるバーさんに似ていると言うか、面影があると言うか……?
う〜ん……だけど、あのバーさんが、
「あら、加入の申し込みね? 分かったわ? ふふ……ようこそ、賞金稼ぎ組合へ」
ほんわかしちゃいそうなニッコリ笑顔を、優しくやって来る様な事をして来る様なヤツには見えないんだよなぁ……。
俺の言葉に、受付のおねーさんは朗らかに笑いながらも、愛想良く返答して来た。
少なからず、事務をやってるあのバーさんには、似ても似つかない。
主に、性格が!
『あれ? イリは、この人と会った事がなかった? イリの時代でも事務で仕事してるゴトーさんだよ?』
やっぱりゴトーさんかぁぁぁぁぁっっ!
程なくして、不思議そうな顔になって俺へと耳打ちする小人ウルズの言葉を耳にして、その場で四つん這いになってしまいそうな心境に陥ってしまう!
ゴトーさんと言うのは……さっきも言ったかも知れないが、俺の時代では事務を担当しているクッソババアだ!
もう、性格もクソ!
顔は、ババア!
まさに、文字通りのクッソババアだ!
「……時間ってのは残酷なんだな……」
俺は、三十年前のゴトーさんに会いたかったぜ……。
この時代では現在に当たるんだろう、現在のゴトーさんは今の俺と同じ程度の年齢に見えた。
実際の年齢は、三十年前であるこの時代であったとしても、それでもゴトーさんの方が年上だったとは思うんだが……なんつーか、童顔の若造って感じの容貌だった。
普通に二十代前半程度にしか見えねぇ……そして、柔らかな物腰を自然と見せている。
こんな、殺伐とした賞金稼ぎ供しか居ない場所で、だ!
これは、もはや……賞金稼ぎと言う名の砂漠に存在する、オアシスの様な存在なんじゃないのだろうか?
俺の時代にいる受付嬢も、見てくれは可愛くはあるんだが……いかんせん、スペシャルやさぐれていた。
まぁ……賞金稼ぎの受付嬢だからなぁ……多少は気が強くないと仕事にならないんだろう。
そう思っていたけど……それなら、今のゴトーさんは?
やっぱり優しい受付嬢でも、普通にやって行けるじゃねーか!
俺の時代のゴトーさんは、ただのクッソババアだけどなっっ!




