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母親と言う恋人【13】

 ……その時だった。


『よぉ〜し! これで「予定調和達成!」おめでとぉ〜!』


 これまで、うんともすんとも言わない状態で、完全に姿を消していた小人ウルズが突発的に現れては、


 スパァ〜ンッ!


 クラッカーを鳴らして来た。


 ……一体、何がしたいと言うのか?


 良く分からない事をしている事だけは分かった。


 序でに言うのなら、今はマグネが眼前にいたので……取り敢えず見なかった事にした。


「じゃあな? 親父。もう会う事もねーだろーけど? 達者でな?」


「……そ、それは、どう言う事かな? ちょっ……待ちたまえ!」


 足早に立ち去ろうとしたイリがいた直後、ハッとした顔になったマグネは素早くイリを呼び止める。

 しかし、恐怖で足がすくんでしまったせいか? 上手に前へと足を動かす事が出来ないでいた。


 結果……声を上げる事しか出来ないと言う、地味に情けない状態に陥っていた。


 ……そんな中、イリは思い出したかの様な顔になって、補足する感じの台詞をマグネに答えた。


「ああ、そうそう。俺がキリの恋人になれない理由は、もう一つある……自分の母親だからだ」


「……な、なんだって⁉︎」


「ま、そう言う事……じゃ、今度こそ達者でな!」


「待つんだ、イリ君! もっと詳しく聞かせてくれ! 今度は疑ったりしない!」


 必死の形相で叫ぶマグネであったが……今度は待つ事なく、街中の通りへと消えてしまった。


「………」


 マグネは無言である。


 ついさっき……本当にさっきまで、単なる与太話だとばかり思っていた。


 だが、今のマグネは違った。


 これでも、マグネは元・王宮の騎士団に所属していたエリート騎士だ。

 戦闘に関して言うのなら、そこらに居る戦士よりも何倍も優れた実力を誇示している。


 もっと言うのなら……現状であっても、トップクラスの実力を持つ騎士と、同等の能力を持っていると自信を持って言う事が出来た。


 最近は、オーナガ武器店の店員として働いていた為、ちょっとばかり騎士としてのトレーニングを怠っている部分もあるが……それだって、まだまだブランクと言える程の時間は経過していない。


 簡素に言うのなら、ニイガで最強クラスの騎士と表現しても、決して過言ではなかったのだ。


 そんなマグネを、たったのひと睨みでアッサリ沈黙させてしまった。

 完全なる格の違いを……戦わずして思い知らされてしまった!


 マグネ自身が自分で言うのも変な話しではあるのだが……こんな事をそこらの凡人が出来るとは、到底思えない。


 むしろ、ニイガ王家の存続を達成させる為、秘密裏に動いている特殊部隊の工作員と言われた方がしっくり来るレベルだ。


 ただ……未来からやって来たと言う部分に関して言うのなら、ちょっとばかり胡散臭い物を感じて仕方なかったのだが。


 しかし、どちらにせよ、ニイガを救うと言う目的があったと言う部分は頷ける。


 実際に、没落寸前の状態まで傾いたニイガ王家を救っていた。

 ……仮にイリが介入した事で、今の様な大どんでん返しが発生していたとするのなら……もはや、それは驚くべき手腕としか、他に表現する事が出来ない。


 まさに、未来人だからこそ可能にした、驚異的な逆転劇……そうと考える事だって出来る!


 故に、マグネはイリの話を『しっかりと耳に入れよう』としていたのだが、


「……もしかしたら、自分は……取り返しの付かない事をしてしまったのかも知れない」


 当の本人は……既に、その場には居なかった。


 イリはもう……オーナガ武器店には戻らないだろう。

 口振りからしても、間違いないとマグネは確信した。


 そんなマグネの確信通り……以後、イリがオーナガ武器店に戻る事は、二度となかった。


「……自分を父と言っていたな」


 マグネは、誰に言う訳でもなく呟く。

 そして、イリはこうとも言っていた。


 母親は、キリである……と。


「はは……それはどんな冗談かな? 僕の彼女はトミィさんだと言うのに」


 マグネは少し失笑する形で独りごちた。


 この失笑が、密かに笑える冗談などではないと言う事実を知る事になるのは、まだ少し先のお話である。




           □イリ□




『もーっ! 無視しないでよ〜っ! さっきから、何回も話し掛けてるでしょう?』


 ……クッソ腹立たしい声がする。


 このクソ女神のせいで、俺の生活はメチャクチャだって言うのに!


 俺は街中の通りを、ゆっくりと歩いていた。


 ……アテはない。


 ……つか、金も少ししかねーし。


 ………。


 日雇いではなかったんだが、こないだヨーコさんが『一緒にデートをしてくれたお礼』とやらで、小遣い程度の金を俺に渡していた。


 まぁ、お陰で全くの無一文って訳ではないが……ハッキリ言って、生活可能な金額ではないんだよな、マジな話し。 

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