第65話「迫り来る絶望。Sランクモンスター『ドラゴン』」
バサッ!!バサッ!!バサッ!!ドォン!!!
ここから100メートル先にドラゴンが降り立つ。ゴールドは実際には見たことはないしパーティーメンバーも勿論見たことはない。
「皆さん。お静かに。僕が惹き付けますから皆さんは魔道都市まで撤退して下さい。」
的確に指示を出す。ゲームにはお決まりの強敵ドラゴン。
生の迫力は凄かったが100メートル先でこちらには気づいていない。だからこそゴールドは冷静だった。クラーケンもみたしワイバーンだって倒したしね。
「運が良かった。まだ見つかってねぇみたいだな。撤退には賛成だ。だが何故お前が残るんだ?言っとくがサイクロプスを仕留めたマグナムートでも絶対に仕留められねぇしさっきの魔剣技でも怪しいぞ?」
マークナーは至って冷静だ。流石にAランクパーティーのリーダーだ。
「闘神を一撃で仕留めた奥義があります。サイレスを使って不意打ちをします。倒せないなら撤退しますので。」
メンバーは驚愕を隠せない。だが悩んでいる時間はない。首もとに死神の鎌が迫っているのだから。
「、、、お前ら。行くぞ。拒否権はねぇぞ。揉めれば全滅しかない。」
パーティーはそれぞれ思うことがあれど反論はしない。
約5分。パーティーはゴールドを除いて撤退した。パーティーとゴールドにミトとゴールドでサイレスを掛けるのを忘れない。死地であるからこそ慎重でなければならない。
「さーてドラゴン。チートの餌食になってもらおうか?」
今のゴールドはそこそこピンチだ。魔力切れも近い。チート無しでは絶対に勝てない。そもそも新必殺も飛ばれては当たらないし。
「まずはどこまで近づけるかが肝になるな、、、」
ゆっくりと近づく。今ならサイレスで枝を踏んでも大丈夫だ。漫画のあのオチはない。
とりあえず50メートルまで近づく。まだ気付かれていない。ドラゴンは警戒していないようだ。まぁする必要が無いとも言えるが。
ただこれ以上は近づけない。広場のような所に着陸しているし、隠れる茂みも無い。これ以上近づこうものならブレスを喰らって灰になる。
だがそれでいい。今チートを使えるか、、、そう。わからないのだ。使えないなら撤退する。倒せなくても撤退する。決定事項なのだ。
(力を寄こせ!!!!)
沸き上がる力。これ以上に無い程勝ちが見えてくる。
「イマジネイションデストロイナックル!!!!」
飛び出したゴールドは人ならざる一撃を放つ。ドラゴンは約10メートル吹き飛ぶ。
だが倒せない、、、いや。ゴールドは倒せるとは思っていたが、、、
(撤退だな、、、)
茂みで息を殺すゴールドは土煙にまみれるドラゴンを後に撤退する。
どうせこのあと咆哮からのブレスだ。パターンだね。だからこそ火属性の耐性持ちのローブを装備し、超高級耳栓を買ってきていた。耳栓はキングウルフ対策だったが。
ドラゴンは起き上がる。だがゴールドはドラゴンの真横に激しく音を鳴らすマジックアイテムを投げ込んだ。
この世界で言う目覚ましのような物だ。
「ジリリリリリリリリリリィィィィ!!!!!!」
轟音が鳴り響く。
「ゴギャャャャャャャアアアア!!!!!!!」
予想通り咆哮だ。後のそのマジックアイテムにブレスをぶちかます。一瞬で火の海が出来上がる。
ゴールドは町を目指すべく森を抜ける、サイレスと囮を使って。
ドラゴンはまだ森で暴れている。
こうしてドラゴンから命からがら逃げ切るゴールドであった。




