1話 汝の望む物は
~「無限の魔力」って本当に「無限」でもらっちゃった私の話が今ここから始まる~
始まる。ハズ。
目を開いたら頭上の木々の葉。これが妙にクリアに見える事に驚く。
ランドセル背負ってた頃から眼鏡っ子だったので葉の一枚の輪郭までくっきり見えるなど記憶に無い。
そして覆い被さって一心不乱に私を舐めまわしてる女の頭。髪の毛が一本単位で見えるのも今までに無い話。
次にその一糸纏わぬ女性の肩から下・・・のあたりで気付く。
この女は誰だ。
木が見えるという事は屋外だ、なんで一糸纏わぬ女に組み敷かれている?
昨日は駅前で飲ん、で無い。
いや記憶が飛ぶ様な事は今まで一度も無いし、そもそも昨日は飲んでない。
というか思い出した。昨日はアレだ、「神と呼ぶべき存在」に会い、この世界に来たのだ。
◇◇
昨日、私は転生したのだった。
氷河期と呼ばれる世代で平等に苦労し、どうにか入った企業は仕事に慣れる頃に倒産し、
生活の為に再び就職し、条件面で苦労して転職、と職をいくつか点々として、
定年までの予定勤続年数も少なく生涯年収の低い「典型的な氷河期世代」が出来上がっていた。
婚活も、倒産するような中小サラリーマンの年収では相手にされず、それなりの大手に入った頃には結婚適齢期も過ぎ、当然苦労し、諦めた
そして事故だ。
事故に会い、その後「ソレ」に出会った。
存在は感じる
「ソレ」は確かにソコに在った。
声・・・ではなく文字が頭に浮かぶ。
「汝、転生において何を欲する?」
テンプレだ
どこまでもテンプレな文言にテンションも上がろうものだ。
テンション爆上げで声を上げ・・・ようとして声が出ないことに気付く、
いやそもそも気配はあるが目も見えてないし手足も感じない。
慌てたのを感じたのか「存在」が続ける
「汝の先達に声をかけた時、その魂は燃え尽きてな、こういう手段となった」
言葉は様々な情報が混じる、感情や呼吸も混じる。
高次元な存在のソレは低次元の存在にとって処理出来ない過剰な情報だろう。
それは負荷も大きい。
次元と言うなら低次元に定義される文字を介する筆談ならフィルターになるんだろう。
手書きかキーボードによる入力か、言葉で表現するのは難しいが、試行錯誤の後、筆談は成立した。
当然、異世界、剣と魔法の世界なら望みはコレだ
「魔力を、何者にも負けない無限の魔力を望む」
まさにテンプレな異世界転生である。
いくつかの祝福も同時にサービスされているらしい。
ソレが昨日。
チュートリアルイベントくらいあるだろうと、この世界に一歩を踏み出したのだが
数歩歩いた時、この世界の最初のエンカウントが起きた。
目の前に現れたのは
巨大な、電車の車両の様なサイズの
ゴキブリ
どう見てもG、
よく動く触覚すら電線の様なレベル、ソレが動く。
触覚すら当たればただで済まない存在感の
ゴキブリ
こちらに気付いて、というよりこちらを目的に近寄って来たのであろう巨大なGを前に、だが私は慌てない。
まずチュートリアルの相手がこの虫なんだと、余裕を持って右手を向け、落ち着き、声を上げる。
「炎よ」
何も起きない
何かが違う。嫌な感じがする。
「ファイアボール」
違うらしい。
「フレイム」
「燃えろ」
何か詠唱が必要なのか?
「臨兵闘者皆陣列在前」
「黄昏よりも昏きもの」
「体は剣で出来ている」
「テクマクマヤコン」
右手を向けたまま声を上げる、
何も起きない
魔力は?無限の魔力は?
パニックになりつつとにかくもはや意味不明な叫びを続ける
気付いたら目の前にG
体に比較して小さめの頭にある口、ソレが動くのが見えた
衝撃
再び事故に会った様な気分だ、しかも今度は電車サイズのG
とにかくのしかかっているGの下から逃げようともがき押しのけようとして、右腕の肘から先が無い事に気付く。
前を見るとGの頭が目の前で赤くなった口を動かしている。
「喰われた」
パニックになっているのは分かる、痛みを感じる余裕すら無い。
だが動けない、電車程のGが押さえつけているのだ。
どこかの大事な骨が折れているのだろう、力も入らない。
目の前が真っ赤からどんどん暗くなっていく。
コレはマズい奴だ、事故でまさに昨日感じたのと同じだ。
そして私の意識は再び途絶えた。
ソレが昨日のハズだ。
で、この流れで女はどこで現れた?
拙い文章ですがお付き合いいただきありがとうございます。




