74.
戴冠式当日、近隣諸外国から多くの重鎮が公国を訪れます。
離れた国の方々は前日より王城に身を寄せていただいております。
勿論、もてなすのはわたくしの仕事でございます。
「エリザベート王子妃、いや、もう王妃様ですね。このように手厚いもてなしを嬉しく思う、ます」
ふふ。少し離れた外国の王女様が母国語以外の言語である公国と大国が使っている言語で話をしてくれております。
「ありがとうございます、王女様。晩餐はお口に会いましたでしょうか」
晩餐のメニューは、王女様の母国の風土と公国の好まれる味を寄せたものになります。
「ええ!このスパイスは我が国の特産品です。公国の料理に使っています。とても合っていると思う、ます」
王女様も公国のことを調べてくれていたようでうれしくなりました。
『わたくしもこちらのスパイスが好きなのです。公国と貴国はこのように相性がよいのだと思っております』
王女様の母国語で返事をいたしました。
『まあ!貴方は我が国の言葉を流暢にお使いになるのね!素晴らしいわ!私はエリザベート様のような素敵な方と仲良くなりたくて……、帰国の言語を学んだのですが、まだ上手く使えません……』
あらあら、とても上手にお話しくださっておりましたのに。落ち込まないでくださいませ。
『わたくしは幼少の頃よりずっと貴国の言語でも話をしておりましたのですよ。王女様は学ばれてからそれ程経っていないと伺っております。それなのに、ここまでお話されています。貴方様はとても優秀な方ですわ。それに、こんなにも可愛らしく、お肌も髪もとても美しいですわ』
そう言って、わたくしは王女様の頬をそっと撫でました。こちらの国では、皇族の肌に触れるのはタブーとされております。さて、どう出てくるでしょう……。
『王子妃!王女様のお顔に触れるなど!』
王女の護衛が腰に携えている剣に手をかけます。
『よしなさい!こちらの王子妃は私を褒めてくださっているのよ!とても栄誉なことなのよ!私のことを思うなら控えなさい!』
王女様は護衛を窘めました。
そう、彼女はわたくしを好いてくれています。
『あら、申し訳ございません。つい王女様が素敵なもので……』
眉尻を下げて、少し瞳を潤ませ謝罪の言葉を述べます。
『エリザベート王子妃、よいのです。私も貴方様と仲良くなりたいと思っているのです』
ふふ……。頬を赤らめ、わたくしの手を取り、仲良くなりたいと言ってくれておりますわ。
『ありがとうございます!わたくしも王女様とずっと仲良くしていただきたくて、本日このようにお側に侍ることが出来て嬉しくて仕方ありませんの』
わたくしの手を取っていた王女の手を、今度はわたくしが握りしめ、わたくしの胸に持っていきます。
『はぅ!!エリザベートしゃま!私も嬉しいです!!』
ふふふ。落ちましたわね。
南国の王女様、しっかりとわたくしの味方になってくださいませ。
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エリザベートは南国の王女の側で何か話しているのが見えた。
お!護衛が帯刀に手をかけやがった!
と思ったら王女が窘めて……。
ん?
南国の王女、顔を赤らめて、カミカミで叫んだし!
リズ~。
あれは、人たらしなことをしたな……。
俺にもしてくれないかな――。
『王子、いろいろなことが一気に起こり、大変でしたな』
おっと、南国の王から話しかけられてしまった。
『ええ、父も母も儚くなり、悲しむ間もなく戴冠を迎えることとなりました』
少しだけ、顔を曇らせて話した。
『慰めは多い方がよいのではないだろうか?我が娘も、いかがかね。ほら、エリザベート妃とも仲良さそうではないか』
チッ!!!何を言い出す!この色ボケが!!
俺は生涯ただ1人、リズだけでいいんだ!
『まだ新婚なので、そのようなことは考えられませんね。ですが、妃が、我が妻がとても嬉しそうな顔をしています。今後とも仲良くしていただきたい』
リズと王女だけで仲良くな。
『ああ!新婚だものな。飽きたら娘も侍らせればよい』
「……」
色ボケジジイ……。黙ってくれ。殴りたくなる。
殴りたくはなるが、南国とも悪くない関係を築けられた。
だから、少し踏み込んでみた。
『ところで、帰国の商団が隣の大国で何か騒動を起こされたとか……』
俺は知っている。知っているどころか、命を狙われたんだ。
『ああ……。貴国にも迷惑をかけているかと思う。申し訳ない。我が国の高位貴族が何やら変な動きをしておってな。なんでも、“娘のために”とかなんとか言っていたらしい。ああ、なに。その貴族は処分済じゃ』
がはは!!と大きな声で笑っていやがる。
とは言え、いい話を聞いたな。
パメーラの実の父親は粛清された。
『では、その娘とやらがもし我が公国いて、問題を起こしたなら……』
『ああ、好きにするがいい。我は関知せん。何なら少し声を掛けるかの』
はあ……。まじかよ。
簡単に言ってのける。
だが、それだけの手腕がこのジジイにはあるということか。
『では、……お願いしたい』
俺は、声を低くし、言葉を紡いだ。
『よかろう。関税をほんの少し優遇してくれたらな』
関税ね。ほんの少しってどれくらいだよ。
まあ、期限付きで優遇することであの女を何とかできるならいいか。
リズを守るためなら、安いものだ。




