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誠実という名の鎖に繋がれた国母は、微笑みながら毒を飲む  作者: 蒼宙 つむぎ


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70.

 王城の執務室。

 大きい執務机3つが1つに固まっております。


「……」

 わたくしは一番手前の自席に腰を下ろし、ため息をつきました。


 この日まで、わたくし達3人は良い関係を築けていたと思います。

 フランクリン様は王子として教育されてきたものをフィーに伝授し、フィーもしっかりと受け継ぐために耳を傾けておりました。

 わたくしは王妃様から教わった執務を中心に熟し、お2人はユーリウス様から公国王としての執務を教授いただきつつ、フランクリン様がこれまで行ってきた執務をすると言う毎日でございました。

 休憩時間も3人一緒に。これからの公国について話しながら薬草茶を飲んでおりました。

 フランクリン様は、初めて薬草茶を飲んだ際、とても険しいお顔をしておりました。


「……どうして――」

 言葉が漏れました。


 これからでした。

 フランクリン様も積極的に公国の未来をお考えくださっておりましたのに……。


「……うっ――」

 悔しくて、もどかしくて、やるせなくて。

 様々な感情が混じりすぎてよくわかりませんが、涙が溢れてきます。

 感情が高ぶりすぎて、我慢しても声が漏れてしまいます。


 目の前に、いつもならいる2人の姿がありません。




 ******


 四半刻ほど経ったでしょうか。

 1人きりになれたことで少し落ち着くことが出来たと思います。


「ヤスミン、お茶をお願いしても?」

 扉の前で待機しているであろう、信頼のおける侍女に話しかけます。


「っ!すぐにお持ちします!」

 どうやら鼻をすすっていたようです。

 声が揺れております。


「クラリス、ユーリウス様から文官を数人お借りしたいとお伝えして。そして、オーエンツォ家とリヒタイン家に使いを。襲撃される可能性がありますので、すぐに王城に避難するようにと。あ、ついでにフラウ・ジェシカにもこのことを伝えてくれるかしら」

 扉の向こうにいるもう1人の大事な侍女に声を掛けます。


「かしこまりました!すぐに!」

 気合の入った声が聞こえてきました。


「ダーニエル、貴方はわたくしを守って。お願い」

 口数少ないけれども、いつも側で守ってくれている護衛に願いました。


「……了!」

 やはり、口数が少ないですね。

 安心です。


 わたくしは、恵まれております。

 心から信頼を置ける侍女と護衛がおりますもの。



「エリザベート様、薬草茶です」

 ヤスミンがいつものお茶を入れてきました。


「エリザベート様、書類をお持ちしました。あと、僕たちが補佐をさせていただきます」

 文官たちが書類と、机と椅子を持ち込んでまいりました。


「ありがとう!皆様、この公国を一緒に守りましょう」

 立ち上がり、集まった者たちに声を掛けます。


「「「「はい!」」」

 よい返事が返ってきました。

 皆、気を引き締めたお顔をしておりますわ。



 わたくしは背筋を伸ばし、空席の机に向きなおります。

 お2人が戻ってくるまで、わたくしがこの公国を守ります。




 ******


 執務をこなしておりますと、急に扉の向こう側があわただしくなりました。

「どうしたのかしら?」

 ヤスミンに声を掛けます。


「見てきます」

 すぐに扉を少し開けて隙間から出ていきました。


 少し集中が切れ、ペンを置きました。

 目の前に積まれた書類の山が1つ片付いたのを見て1つ頷き、控えている山が3つあるのを確認し大きくため息をつきました。

 わたくしの手が、増えないかしら。

 そんなふざけたことを考えているときでした。


「姉様!僕たちも手伝うよ!」

 ルーイス達が無事に王城についたようですわ。


「あら、極秘書類ですから無理ですわよ。それよりも、みんな無事なのね。安心しましたわ」

 視界の端に、おろおろとした両親を見つけ、何故だか安心してしまいました。


「極秘かあ……。だったら、エントランスで手伝ってくるよ」

 残念そうに言いながらも、できることを率先して考えてくれる弟に感謝ですわ。


「無理のない範囲でね。お願いしますわ」

 まだ、火傷も関知しておりませんので、同じ怪我人です。

 無理してほしくありません。


「勿論。足手まといだと思ったらやめるよ」

 そう言って、家族は出ていきました。

 何故でしょう。

 少し元気が出てきましたわ。


 目の前に書類の山が3つ残っております。

 2人の怪我の具合が気になりますが、今は仕事があることに感謝です。

 気が紛れますもの。


 深呼吸を1つ。

 書類を1束手に取ります。


「……」

 タイトルを見て、手が止まりました。


 “関税見直しの依頼について”


 諸外国との取引において、関税は国交の要です。

 その見直しというのは、簡単にできるものではありません。


 書類を読んでいきます。

 依頼をしてきた国は……。


「パメーラ様のご出身の……、南国、ですわ――」


 このタイミングで、関税の見直しを依頼、です。

 これは、調べる必要がありそうです。


「ツェルナー伯爵を呼びして。今すぐに」

 わたくしは、カトリーン様の茶会で流通を担っていると伺った家門を召喚することにいたしました。


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