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誠実という名の鎖に繋がれた国母は、微笑みながら毒を飲む  作者: 蒼宙 つむぎ


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62.

 意気消沈となっているフランクリン様とわたくしたちは、今後のことをどうしようかと話しておりました。

 話しをしている間も、何故だか落ち着かなく、話し合いの内容もあまり頭に入ってきません。



 そんな中、外が騒がしくなってきました。バタバタとこちらに走ってくる足音が、尋常ではない何かを連れてきたことをなんとなく察知してしまい立ち上がりました。


「ご歓談中、申し訳ございません。火急な要件の為、失礼いたします」

 王城の伝令が真っ青な顔をして入ってきました。


「どうしました。大事な話し合いなのだけど」

 カトリーン様は少し苛立っております。


「申し訳ございません!ですが、アイシャ様が、オーエンツォ家に乗り込み……ルーイス様に暴行をされたと報告が」



 ルーイスが、何をされたの?

 アイシャ様が、何故オーエンツォ家に?

 何故?

 ルーイスの怪我はどのような?


 頭が混乱しております。

 息が、苦しい……。

 どうしたらいいのか、考えが付きません。

 考えようとしても、考えられません。

 視線が、方々に動き、焦点が合いません。


「どうしたらいいの?ルーイスは、どこ?弟は、怪我は……」


「リズ!落ち着いて。過呼吸をおこしてる。ゆっくりと息を吐いて。――駄目だ!誰か布巾を!」


「エリザベート。ああ……。なんてこと!オーエンツォ家に誰か向かわせたのでしょうね!医師をすぐに向かわせなさい!」


「母上……。アイシャはいったい……。もう、おしまいだ……」


「フランクリン!お前もしっかりしろ!お前の大切な人じゃないのか」


「アイシャは……、俺といたくないって出ていったんだ。俺のことを利用しただけだと……。俺は、捨てられたんだよ」


「っ!!なぜ誰も止められなかったんだ!」


 わたくしが朦朧としている中、会話が飛び交っております。

 息苦しいですが、動かなくては。

 大切な家族を、助けに行かなくては。


 口元を布巾で抑え、呼吸を整えるよう促すフィーを押しのけ、扉の向こうへと足を運ぼうとします。

 ですが、体が思うように動きません。

 すぐに崩れ落ち、さらに呼吸が荒くなります。


「リズ!お願いだ。ゆっくりと息を吐くんだ。ルーイスを助けに行くためにも、まずは落ち着け。……ほら、ゆっくりと」

 フィーが、背中を丁寧に撫でおろします。


「ふ……。フィー……。お願い。助けて――」

 なんとか、言葉にいたしました。

 助けて欲しいと。

 これが、わたくしが今できる精一杯です。

 情けなくて、涙が流れます。


「リズ。勿論、助ける。……ダーニエル、クラリス。アイシャは殺すな。ルーイスを離宮で治療する。急げ!」


 フィーが2人に声を掛けます。

 2人は、礼をしてすぐに、駆け出しました。



 ******


 暫くした後、アイシャ様が縄で縛りあげられ、ダーニエルに連れて来られました。

 顔は、腫れております。

 彼女は、痛みで泣きはらしております。


 ルーイスは、リネンに包まれた状態でクラリスが抱えてきてくれました。

 顔に布が巻かれております。

 ルーイスは目を瞑っているように見えます。

 意識はあるのかしら……。


「クラリス、ルーイスの状態は」

 フィーが問いかけます。


「……顔に火傷を。氷室の氷で冷やしておりますが――。跡が、残るかと……。今は気を失っておられます」

 顔に火傷を、負ったというの――。

 クラリス、どうしてそんな顔をしているの?

 跡が、残るって……。


「医師は?」


「すぐに来ます。……その、箝口令を敷かれた方が、いいかと」

 クラリス、箝口令って、どうして?


「……リズ。ルーイスの状態を俺が見てくる。待ってて」

 フィー、どうしてわたくしを置いていくの?

 わたくしが、見てはいけないの?


「エリザベート、フィリクスの言うとおりにしましょう」

 カトリーン様まで、どうして?



 フィーは、わたくしのことをカトリーン様に委ね、ルーイスの側へ向かいました。

 クラリスがそっと顔の布を浮かせ、フィーに見せております。

 ねえ、火傷の具合はどうなっているの?


「っ!!!」

 フィーが、言葉を失いました。

 そして、ゲストルームへ連れて行って、治療させるように指示を出しております。


「……母上、すぐに皆に箝口令を」


「フィリクス……。そこまで、酷いの?」


「……ああ。傷は、一部だが、跡は残る」


「小さいのなら、そこまでしなくても……」


 フィーとカトリーン様の話を黙って聞いておりました。

 言葉にキレがないと言いますか、濁しているという感じです。

 そうしましたら、意外な人が会話に割り込んできました。


「ははは!ざまーみろ!!ルーイス君は、私のものよ!」

 アイシャ様が先ほどまで痛みに泣いておりましたのに、急に笑い出し叫びます。


「うるさい!お前、なんてことしたんだ!」

 フィーが怒鳴ります。


「いいじゃない!私は何も手に入らないんだから。ルーイス君だけちょうだいよ。奴隷としてね!!」



 奴隷、ですって?

 何を言ってますの、この人。


「クソ!!!」

 フィーの顔が怒りで歪んでおります。


 ……まさか、そんなこと、ないですわよね?


「はは!あの可愛い顔に、奴隷印を焼きつけてやったわ!!」



 わたくしの耳は、おかしくなったのかしら。

 奴隷印って言いました?この女。


 顔を殴られている女に視線を向けました。

 女はわたくしの顔を見て愉悦の笑みを浮かべております。


 次の瞬間、

 目の前が、赤く染まった。

 気が付いたら、

 女に飛び掛かり、

 力の限り殴りつけていました――。


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