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誠実という名の鎖に繋がれた国母は、微笑みながら毒を飲む  作者: 蒼宙 つむぎ


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60.フランクリンside

 視線が、右に左にと忙しく動く。

 離宮の中に入るのは、本当に久しぶりだったから、新鮮だった。

 調度品は華美なものではないが品があった。

 通された応接室に入ると、王妃である母上がすでに待っていた。


「母上!」

 俺は、母上に駆け寄った。


「どうして俺が離宮に入れなかったのですか」

 少し、言葉尻が強くなってしまった。でも、仕方ないよね。俺をのけ者にしようとしたんだから。


「貴方はアイシャ嬢と王城の1室を与えられたでしょう」

 確かに、アイシャと1室を貰った。でも、1室だけだ。


「あそこは狭いじゃないですか!離宮ならまだ部屋はあるでしょう。俺が来てもいいでしょう?」

 公国として独立してから建てた離宮は、先代公国王が母上のために建てたと聞く。お爺様は母上を大切にしていたということが嫌でもわかるくらいの荘厳な屋敷だ。


「それは……、できません。貴方に話しをするために今日は招きました。ですが、今後は――」

 え?話しをするから入れてくれた?それ以降は駄目だというのか?


「どうして!エリザベートと俺は夫婦なんだ。なんで離れて暮らす必要があるんだ」

 そう!エリザベートと俺は夫婦なんだ!昨日の姿がきれいだったから、妃として認めてやろうと思ったのに!


「それは……。それより、アイシャ嬢は?一緒じゃないの?」

 あ……。アイシャのことを聞かれてしまった。


「……」

 言いたくないな……。


「フランクリン、アイシャ嬢はどこにいるんだ?」

 クソ!フィリクスめ!


「フィリクス!お前に呼び捨てにされたくないな。不敬だぞ!……アイシャは、どこかへ行った。何かよくわからないことを言いながら」

 指さして、しっかりと言ってやった!王子らしいだろ?エリザベート。仕方ないから惚れても許してやる。


「あ~。それは俺の言葉だ。お前、不敬だぞ。王子に対して」

 は?お前が王子?頭おかしくなったのか?


「前からお前が気に食わなかったんだ。不敬で牢屋に入れてやる!」

 護衛騎士に指示を出そうと部屋を見渡した。それらしき男がいた!


「おい!お前!この男を拘束しろ!」

 言ってやった。ずっと言いたかった言葉を、とうとう言ってやったんだ!


「……は?やらねえよ。俺は護衛じゃない」

 え?護衛じゃない?あ、この男はいつもエリザベートの側にいる奴じゃないか。だったら護衛だろう?


「嘘つけ!エリザベートの側にいつもいるじゃないか。護衛に決まってる」

 そうだろ?エリザベート。


「フランクリン様、彼は護衛じゃありませんわ。わたくしの“友人枠”ですわ」

 ん?“友人枠”ってなに?


「あ……。彼は大国のご子息ですわ。言葉使いには気を付けてくださいな。不敬で訴えられると困ります」

 は!?大国の?子息?なんでこんなところで、護衛みたいなことしてるんだよ!


「あ、いや。王族籍は抜いてもらうから、言葉使いはいい」

 ん?なんで大国の王族から抜けようとするんだ?


「あら、そうなの?だったら、公国の民になりなさいな。フィー、ミヒャエルを騎士にしてもらっても?多少の爵位もつけてあげてくださいね」


「ミヒャエルなら、大歓迎だな。爵位は何がいい?」


「爵位なんていらん。エリザベート嬢を守れるならそれでいい」


「リズの側にいるなら、貴族籍は必要だぞ。一旦騎士爵にして、その後は追々ってところにするか」


「……面倒だが、お前に任せる」


 ん?なんだろう。俺、存在悪れられてないか?

「ん“ん”!そう言うことは、俺に言え。俺が王子なんだから」

 少しムカついたから、会話に割って入ってやった。


「……。誰が言う?」

「わたくしは、ちょっと……」

「あら、私も気が引けるわ……。一応、付き合いも長いし」

「え……。俺しか残ってないじゃないか」

「フィーなら、大丈夫ですわ!」

「そうよ!貴方なら、うまく伝えられるわ!」


 ――はあ……。

 何だろうね。この疎外感。

 ものすごく、ものすごーく嫌な雰囲気だ。

「いったい何が言いたいんだ!さっさと言えよ!」

 仲間外れに、するな!


「あ、いいんだ。じゃあ、ご希望通り、言ってやるよ」

 俺は、ゴクリと唾を飲んだ。

 どんなことでも、受けてやる!


「フランクリン。お前、公国の王族の血を受け継いでいないんだ」


「――え?」


「だから、お前は、リヒシュタッド家の血が流れていないんだ」


「そ、そんなわけ、ないだろう。洗礼式も受けたと、聞いているぞ」


「それは、俺。洗礼式を受けた後で、取り換えられたんだ」


「取り換え、られた?」


「ああ、乳母にね。でも、パメーラが脅してしたことだ。本人はリヒタイン家の下女として働いていたが、今では修道院で働いている」


「乳母が?何のために、パメーラ様が?そんなことする必要、あるか?」


「それはね、パメーラが私のことを恨んでいたから。王妃になりたかったらしいのよ、彼女は」


「パメーラ様が?えっと……よくわからないな」


「簡潔に言う。パメーラとオリヴァー公国王は男女の仲だ。パメーラはお前を産んで、自分の子供を王子にしたかったんだよ」


「は!パメーラ様が俺の母親か!あの華やかな女性が俺の……。父上と恋仲だったら、リヒシュタッド家の血を継いでいるじゃないか!俺は王子だ!」


「フランクリン……。それがそうではないんだ。オリヴァー公国王に、子種はない。王妃が、子種を殺した。俺より半年も後に産まれたお前は、パメーラと誰か知らない男との子供なんだ」



 いったいこいつは何を言っているんだ?

 パメーラ様が父上と恋仲なら、俺が公国の王子でいいじゃないか。

 パメーラ様と誰か知らない男との子供な訳ないだろう。


 だって、エリザベートと婚姻を結べたんだから。



「フランクリン。お前はエリザベートと婚姻が結べたから、王子だと言いたいのだろう?……リズは、俺と婚姻を結んだんだ。宣誓書には、俺の名前が書いているし、インクには俺の血が混ざっている」



「嘘、だ……。

 だって、俺と婚姻を結ぶって、みんな言ってたじゃないか。なんでお前が勝手に書いたんだよ!」


「それは、俺がリヒシュタッド家の血を受け継いでいるからだ」


「え……?母上……、王妃と父上の子供が、お前なのか?それなら、父上には子種がないなんてことは、ないだろう」


「……俺は、王妃と前公国王のレオポルト様との間の子だ――」



 目の前が、くらくらする。

 頭もいたい。

 普通に座っているのもきついくらい吐き気もする。



 ああ……。

 俺は、きっと悪夢を見ているんだ。

 アイシャもどこかに行ってしまったし。

 なんて、質の悪い悪夢だ――。


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