58.
宴会が無くなり、わたくしはあてがわれた部屋へと向かいました。
王妃様と同じ離宮の南向きのお部屋をいただきました。
「フランクリン王子は、どうされるのかしら」
二人掛けのソファーに座り、フィーに問いかけます。
「フランクリンはここには来れないよ。安心して」
そうなのね。よかったわ。
「今後は、どういたしますの?わたくしはフィーと婚姻を結んだ、のよね?」
ほんの少し、上目遣いで聞いてみました。
「ああ。俺たちが婚姻を結んだんだ。フランクリンは血を受け継いでいないからね。入れ替えをすることになる」
「入れ替え?」
「ああ……。表向きは俺が“フランクリン”となる。嫌だけど、これが一番平和に解決するんだ」
「平和に……」
確かに、フランクリン王子が世継ぎであると皆が認識してしまっています。そして、それが間違いでしたと言うと、公国として独立させることが間違いだったのでは……と言われかねません。せっかく、ここまで公国として整えてきたのです。皆の努力をなかったことにはできません。
それに、元の国へ戻された際、公国民だった民衆は地位を下に見られ、働き口が無くなることもあるでしょう。貧民が増え、女性は花を売るものが増えてしまいます。そんなこと、したくもない人が生きるためにしなくてはならないなんて、悲しすぎます。
平和に落としどころを見つけるとしたら、フィーとフランクリン様が入れ替わるしかないのでしょう。
「そう、ですわね。この公国王の血は受け継ぐことが必須ですものね」
「ああ。この血が無いと、霊廟が開かない。守れないからね」
「言っておりましたわね。霊廟を守るのだと。婚姻式の儀式は何をしたのでしょう?」
「今日のはね、短刀に俺の伴侶だという証を付けたんだ。俺のサインには、俺の血が含まれたインクで書いておいた。そして、サインをした人間が短刀を持つことで儀式の土台が出来上がった。そして、リズのサインもそうだよ。今朝、インクに血を落としたでしょう。それで書いたから短刀に俺とリズのことが刻まれた。これからはずっとこの短刀を持ち歩いてね。」
婚姻式が本当に重要な儀式でしたのね。これは、魔法だと言ってもいいのではないでしょうか。魔法を見るのは初めてでしたから、びっくり致しましたけど。
「魔法があるとは思いませんでしたわ」
「あ~。本来は使えないよ。リヒシュタッドの血が特別。俺たちも、霊廟を守るということくらいしか使えないよ」
「そうでしたのね。ふふふ。特別な魔法で得られた短刀を大切にいたしますわ」
「リズ、短刀も大事だけど。俺のことも大切だと思ってくれないかな?」
フィーの声が、甘く感じたのは気のせいかしら。
「も、勿論、大切ですわ」
わたくしの頭や頬を撫でるので、恥ずかしくなってしまいます。
「本当に?俺のこと、諦めようとしたのに?」
フィーが、耳元でささやく声が、やはり甘いですわ。
「それは、頑張りましたのよ。でも、なかなかうまくいかなかったの……」
「そうだね、知ってるよ。でも、俺も傷ついたんだ。だから、もう離れないで」
ギューッと抱きしめられます。フィーの声が、切なそうです。わたしくしもなぜかしら。切ない、ですわ……。
「リズ、宴会もなくなった。もう、リズを貰っていいよね」
甘い甘い囁きは、色気が溢れていて、わたくしの頭がしびれてしまいます。
「ええ……。優しく、してくださいませ」
小さな声で、なんとか答えました。
わたくし達の初夜は、まだ日が落ちる前から始まってしまいました。
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隣ですやすやと眠っているリズ。
本当にかわいい――。
やっと手に入れたんだ。
想いをつなげられた喜びに、少しやらかした。
最初は優しく丁寧に閨を進めたんだけど、途中からタガが外れて抱きつぶしてしまった。
夕餉も食べず、陽が落ち、空が白みかけるまでずっと――。
途中、気を失っていそうだったけど、それでもやめられなかった。
白い肌には赤い花をいくつもつけ、所有の証を刻んだ。
誰にも渡すつもりもないし、離さない。
「リズ、早く子を宿して。俺たちの家族をたくさん増やそう」
顔に張り付いた毛を優しく剥がし、優しく頭を撫でる。
愛しい愛しいリズ。
フランクリンなんかに、渡さない。




