43.
翌朝、いつもの通り日が昇る頃に目が覚めました。
いつものように、鏡台の前に座り、自分の顔を見ます。
目と鼻と口が見えます。
今のわたくしはただ生きていくだけ。
そこに感情はいりません。
化粧をしようと手を伸ばします。
いつもと同じメイク。
紅も1つだけ。
何も考える必要がありません。
鏡に映る自分の顔は、目と鼻と口がある。
化粧をし、赤い紅をさしています。
ただ、それだけ。
これを、これから何十年と続けていきます。
わたくしには、感情は必要ありません。
扉がノックされました。
昨日より大きめです。
ノブを回し、人が入ってきます。
「お嬢様!私が帰ってきました!もう大丈夫です!」
ヤスミンです。
長い貴族としての勉強から、戻ってきました。
「ヤ、スミン……」
久しぶりに発した声は、少し掠れました。
「はい!私が、お嬢様の分まで怒ってあげます。私は、ずっと傍にいます」
ああ……、ヤスミンですわ。
あの元気な声ですわ。
「わたくしのかわりに?怒ってくれる、の?」
声が、勝手に震えてしまいます。
「勿論です。お嬢様が気持ちを出すことが出来ないなら、私がお嬢様の気持ちをいっぱい伝えます」
ヤスミン。
本当に、ヤスミンです。
「うう……」
わたくしは、目から涙が溢れ、声が漏れてしまいます。
止められません。
ヤスミンは駆け寄って来ると、ギュッと抱きしめてくれました。
「お嬢様は、辛くても悲しくてもなかなか表に出せない優しい方です。でももう、大丈夫ですよ。傍にいます」
ありがとう。
貴方のその言葉が、欲しかったのかもしれません。
わたくしは、ギュッとヤスミンを抱きしめ返します。
そして、大声で泣きました。




