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誠実という名の鎖に繋がれた国母は、微笑みながら毒を飲む  作者: 蒼宙 つむぎ


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34.

 クラーラ様の茶会は、その後は終始和やかでした。

 そして皆様より、カトリーン様同様にご支持いただけると言っていただきました。


 帰宅しようとしたところ、ミヒャエルが無言で何かを訴えてきています。


「ミヒャエル、貴方の素性をばらしてごめんなさい。あの女がやたらと「平民ふぜいが」なんていうものですから腹が立ちましたの」


「……」


「帝国とのつながりを嫌っているのもわかりますが……、貴方はわたくしの友人として公国での滞在間認められてますのよ。本当のことしか言っていませんわ」


「……ああ」


「貴方のことも、カトリーン様にお願いしてみます。輿入れについてきてくださるでしょう?」


 ミヒャエルは頷き気持ちを伝えてきました。

 その眼には揺らぎが見えます。


「ミヒャエル、貴方のことをわたくしは見捨てません。貴方がかの国でどのような扱いだったか……。わたくし、嘘はつきませんことよ」


 ミヒャエルの手を借りて馬車に乗り込もうとしましたら、近衛騎士様に呼び止められました。


「エリザベート様、あの……、パメーラ様はどうしたらよろしいでしょうか?」

 あら、忘れておりましたわ。


「そうね……。本日はどこぞの牢屋にでも入れておいてくださいまし。カトリーン様と相談しますので」


「牢屋に、ですか?」


「ええ。あ、それから見張りは女性のみになさって。男性が傍にいましたら誘惑して出してもらおうとしますからね」


 近衛騎士は青ざめていそいそと立ち去っていきました。



 屋敷に帰り、カトリーン様へお手紙を出すことにいたしました。

 パメーラ様の処遇をどうするか、です。

 明日、お会いして決めたいものです。


「クラリスはいますか?」

 声を掛けました。


 扉から少し姿を見せたのは他の下女でした。

「クラリス様は、ダーニエル様と森に行かれました。もうすぐお帰りになるかと」


 そう言えば、定期的に森に行くと言っておりましたわ。

 もうすぐ帰ってくるなら、その後にでもお願いいたしましょう。


「クラリスが戻ったら、わたくしのところに来るように伝えてね」

 下女は是を唱え、退出いたしました。


 クラリスとダーニエルは、森が好きなのですね。




 あの後、クラリスが戻ってきて、カトリーン様に手紙を託し、翌日の早朝なら時間が取れるとのことで返事をいただき、今に至ります。


「カトリーン様、朝早くから申し訳ございません」


「いいえ、こちらこそ朝早くに来させてごめんなさい。議会がね、ちょっと……。それより、お話って?」


「パメーラさんです。昨日、フューゲル侯爵夫人の茶会で揉めまして。今は牢屋に入っているのですよ」


「まあ!それは私も見てみたいわ!……でも、忙しくて見れないのが残念ね。それで、処遇のことね」


「はい。本来なら社交界出禁、罰金、社会貢献活動をしていただきたいのですが……。罰金はパメーラ様の個人資産から相応をいただき、茶会で怖い思いをされた男爵家にそのままお支払いをしたいのです」


「あら、もしかしてランメルツ男爵家かしら?あそこの領地、2年連続悪天候で不作でしたね。しかも、橋が流されたのではなかったかしら……」


「はい。ご令嬢は、今年がデビュタントなのですが……、見送ろうかと考えておられるようですわ」


「それは……。国庫からの支援は領地の運営のみですからね。……いいでしょう。パメーラさんから罰金をいただいて、そのまま慰謝料として渡してあげましょう」


「ありがとうございます。社会貢献活動ですが、言い渡しても他の取り巻きにやらせるだけでご本人は何もいたしません。ですので、他のことを考えようかと。そして、社交界の出禁ですが……、出来ましたら彼女を泳がせたく思っています」


「泳がせる?」


「はい。あの人がどこで毒を入手しているのかが気になりまして……」


「あら、エリザベートも?私も調べたのに、証人が見つからないのよ」


「カトリーン様もでしたか……。闇市場でもよくわからないようでして」


「エリザベート!闇市場に探りを?」


「問題ございませんわ。ミヒャエルを使っています」


「貴方ね……。帝国の第8王子を駒使いにして」

 カトリーン様にあきれた顔をされてしまいましたわ。


「とにかく、独特な毒の配合みたいで、完全解毒は難しいの。パメーラを泳がせて、毒を追うのね」


「はい。ここまでプライドを傷つけられたら、彼女は何かを仕掛けてきます。きっと、毒を使おうと考えますわ」


「そうね、彼女の常套手段ですからね……。わかりました。社交界は少し緩めましょう」


「ありがとうございます。彼女の行動は影を使って追わせますか?」


「そうね。新しい子達が育ってきているようなので、使いましょう」


「かしこまりました」

 わたくしは、微笑みながら丁寧にカーテシーをいたします。



 カトリーン様は、会話の後すぐに会議へと向かわれました。

 わたくしは、その後ろ姿を見送ります。



 あの、甘い香りのする毒。

 わたくし達が生き残るためにも、

 どうしても解毒薬を手に入れませんと――。


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