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誠実という名の鎖に繋がれた国母は、微笑みながら毒を飲む  作者: 蒼宙 つむぎ


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24.

 カトリーン様と穏やかな会話を堪能したわたくしは、屋敷に戻りました。また夕食には時間があります。少しだけ、受け取った薬草の書籍を読むことにいたしました。


 1番上に置かれていた書籍は難しい言葉では書かれておらず、厚みもないのですぐに読み終わりそうでした。

 挿絵もありますので、似た薬草と見分けるのも難しくなさそうです。


 そして、あっという間に読み終わり、わたくしの心はほっこりとしておりました。


 この書籍に書かれた内容は、どれも誰かを想って書かれています。

 目の下に隈が出来ているのを見たら……とか、お腹に手を当てて辛そうにしていたら……など、筆者が目の前にいる方を労わるかのような、そんな優しさであふれております。


 一体、どなたが書かれた書籍なのでしょうか。

 最後のページにも、見開きにも、名前が書かれておりません。


「貴方は、どなたですの?」


 小さな声で、書籍に話しかけました。

 勿論返事などございませんが、きっと優しい方が大切な方へ書かれたものなのでしょう。

 無償の愛に満ちていて、わたくしは切なくなりました。



 ――フランクリン様との婚儀は後2か月後。

 ドレスはカトリーン様がもう手配を済まされたと伺っていますので、心配はしておりません。

 式は大聖堂を使うと聞いております。

 大司祭様へご挨拶をしに伺うべきでしょう。

 近々、祈りを捧げに参りましょう。



 ライティングデスクの引き出しから1枚のカードを出し、丁寧に感謝の気持ちを綴りました。



 カトリーン様


 大切な冊子と薬草の書籍をありがとうございました。

 冊子は、毎日読んで心の支えにしようと思っております。


 薬草の書籍は早速1冊を読みました。

 挿絵もありとても読みやすく、内容もとても誰かを大切に思われている素敵なものでした。

 カトリーン様にお返しした後も読み返せるようにわたくしも購入したいと思っておりますが、作者名がわかりません。

 どちらでご購入されたかご教授いただけますでしょうか?


 エリザベート



 カードを3つに折り、わたくし専用のシーリングスタンプで封をいたしました。

 呼鈴を鳴らし、クラリスが参ります。


「クラリス、こちらを王妃様へ届けたいの」


「カードでございますね。ダーニエルにお使いをさせます」


 クラリスは、風のごとく退室してしまいました。

 そこまで急がなくてもよろしいのに……。



 夕食の後、わたくしは今日あったことで、心に引っかかっていたことを帳面に書いていきます。

 いろんなことがありすぎて、混乱します……。

 気になることもたくさんです。

 フランクリン様との婚姻することを、フィーのことを諦める決意をいたしました。

 心が、痛みます。

 わたくし、寝れるでしょうか……。



 そんなことを考えておりましたが、ベッドに横になりましたらすぐに睡魔がやって参りました。


「……」


 わたくし、自分では繊細だと思っていたのですが……。

 図太い、のでしょうか。


「お嬢様、どうされました?」

 クラリスが身支度をしながら聞いてきました。


「わたくし、昨日はいろいろとありまして、落ち込みましたの。夜眠れなくなるかと思ったのに、しっかりと、ぐっすりと眠れてしまいましたわ……」


「あら、落ち込まれていたのですか?そのようには見えませんでした」


「そうですの?昨日の夕食、少し残してしまったでしょう?」


「え?パン1口だけ、ですよね?」


「ええ、1口も残してしまいましたわ……」


「……お嬢様。本当に落ち込まれていたのでしょうか……」


「失礼ですわ~。こう見えて、繊細ですのよ」

 ふふふ、と笑いながら、きちんと自分のことをクラリスに教えてあげました。


「お嬢様……。本当に繊細な方は、ご自分でそのようなことは申されません――」


 わたくし、驚いて目を見開いてしまいました。


「え!?本当に?!」


「はい。誰もそのようなことを言われておりません……」


 わたくし、何も言えなくなりました。

 世の中の方は、自分で繊細だとは言わないのだそうです。


「ですが、お嬢様がしっかりとお食事をされて、しっかりとお休みになられていることはいいことですよ」


「そう、よね」


「はい」


 クラリスもこう言ってくれていますし、気にしなくてもいいですわよね、フィー。


 “落ち込みすぎず

 しっかりと食事をとり

 しっかりと寝る

 これだけは、絶対に守ってね“


 貴方が、小さなころから

 毎日、言い続けてくれたのですもの。


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