23.
「エリザベート、ありがとう。貴方には、国母として頑張って行ってもらいたいの。だから、社交を掌握してほしい。それと同時に、薬草学もしっかり学んで。どちらも、必ず貴方のためになりますから」
カトリーン様はわたくしを国母にしたいのですね。でも、どうしてそこまで?特筆、秀でているところもございませんし、ごく普通です。顔も特別美人でもありませんし……。
わたくしは、カトリーン様から数冊の薬草についての書籍を受け取り、1冊の冊子を受け取りました。
「こちらの冊子は、何でしょうか……」
「それは、私が来になることを書き留めたものを冊子にしたものです。社交について、薬草について、……毒について」
わたくしはこちらの冊子の表紙をそっと撫でました。
厚めのなめし革の表紙は、何度も手に取っていたことがうかがえるくらい、艶やかに、温かみのあるあめ色になっております。
「ありがとうございます。大切に預からさせていただきます」
こちらは王妃様の苦楽を詰め込んだ大切なものです。屋敷に戻り、写しを取ったらすぐにお返ししなくては。
「いいえ。そちらは貴方に授けます。貴方の一助になると嬉しいわ」
「カトリーン様……。ありがとうございます。大切にいたします」
冊子を開いてみました。
茶会でパメーラ様と舌戦を繰り広げられた際のことや、夜会での嫌がらせをかわす処世術、――毒を口にした時の、対処方法。
ぱらぱらと頁をめくりしっかりと読んでいませんが、カトリーン様が王妃として、国母として頑張ってこられたことがよくわかります。
わたくしの心が、じんわりと温かくなるのがわかりました。
わたくしは、嬉しくて、思わず冊子を抱きしめました。
両親は悪い人たちではありません。
ですが、愛されている感覚は、あまりありませんでした。
父も母も、自分のしたいことを優先させる人たちでしたから……。
家にいることが少なかった両親の代わりに、執事と侍女長がわたくしとルーイスを育ててくれたようなものです。
両親からは、誕生日を祝ってもらうことも、少なかったのです……。
ですから、大事に使っておられたものをいただくと言うことが、わたくしを大事に思ってくださっていると感じ、この上なく嬉しくて、ほんの少し涙が出ました。
目を瞑り、喜びを感じていましたら、フワッと優しく抱きしめられました。
カトリーン様です。
「エリザベート、貴方は私の義娘ですからね」
慈しみ、愛情の込められたお声です。
「はい。――義母様」
少し、恥ずかしいですが、素直に思った言葉を紡ぎました。
フィー、ごめんなさい。
貴方とは、結ばれない運命なのかもしれません。
わたくしは、王妃様のためにもフランクリン様と婚姻を結びます。
そして、国母になって、この公国を支えていきますわ。




