18.
「今後のことについてですが、まずは昨日のことをお話ししましょう」
クラリスはそう言い姿勢を正した。
「私たちがこちらに到着してエリザベートお嬢様のお部屋に向かおうとした時、悲鳴が聞こえましたので、了承を得ずにお部屋に入りました。申し訳ございません」
クラリスとダーニエルは先ほどよりももっと深く頭を下げた。
「……。そうね、本来ならよろしくありませんが、この度はわたくしの命を助けてくれましたから、不問といたします」
この2人は私の従者となりますしね。
「ありがとうございます。以後はこのようなことがないようにいたします」
クラリスは頭を下げたまま、忠義を唱える。
「昨日のことで、もし不義だと思うことがあったとしても不問とするわ。時間がもったいないので、早く話してちょうだい」
今後のことを考えたいから、事実が知りたい。
「かしこまりました。……私たちが部屋に入りました時、お嬢様は服毒してそれほど時間が経っていませんでした。意識はありませんでしたがすぐに解毒薬を飲んでいただきました」
意識ないのに、飲めたのでしょうか……。
「お嬢様。意識がなくとも、人間本来の生存本能で嚥下もできます。口と鼻を塞げば」
あら、わたくしの心の声が漏れていましたかしら?
「お嬢様の思っていること、すぐに顔を拝見していますとわかりますよ」
すました顔をしていたつもりなのに。鏡の前でもっと練習しなくてはなりませんわ。
「ふふふ。……失礼いたしました。お嬢様は解毒薬を飲まれましたが、毒が強かったため熱を出されました。ヤスミン様と私でお着替えをいたしまして、ゆっくりと休んでいただきました。屋敷の下働きの中に、3匹の鼠がいましたが、泳がせています。
お嬢様が毒で倒れたということは、執事と侍女長と私達のみだけの秘密です。茶葉を入れ替えたのは下女の一人のようです。もう解雇されて、すんなりと屋敷を出た女が1人だけいました。きっと、その女がしたことでしょう。
その女の事は放っていても問題ないと思いますので、後は追っていません。
お嬢様、今回は運がよかったのです。私達もすぐに対応できたのです。ですが、一歩間違えばお命はありませんでした。
もっと、御自分を大切にしてください!」
クラリスは、うっすらと涙を浮かべています。2人の主にはなりましたが、忠誠を誓ってもらってそんなに時間は立っていないのですけど。どうして、そんなに大切にしようとしてくれるのでしょう……。
「そして、今後のことです。婚儀は、3か月後です。ドレスは急ぎ手配をしておりますのでご安心を」
たったの3か月……。早すぎますが、アイシャ様のお腹が大きくなる前に形だけでも成婚しなければならない、ということですわね。
「ここからが、大事なお話となります。お嬢様には私が王城へお連れし、王妃様から教えを受けていただきます。体力勝負となります」
体力勝負?寝る暇もないということかしら……。
「ヤスミン様は、王妃様のご実家の傘下の男爵家の養女となっていただきます。ヤスミン様も貴族教育を受けていただきます」
「……はい」
ヤスミンを輿入れに連れていくには、貴族籍が無いといけませんものね。わたくしが動くにも、時間がないのでよかったですわ。
「お嬢様が家政と領地経営をされるご予定と伺っています。無理のない範囲でお願いします。下働きも減らされました分は、王妃様の名のもとに人を集めますのでご安心を」
クラリス……。貴方、できる方ね。ヤスミンを鍛えて欲しいくらいですわ。
「ふふ……。ヤスミン様を、しっかりと育てますので、ご安心を」
不敵な笑みを浮かべるクラリス。
わたくしは、思っていたより表情豊かだったようですわ。
「ルーイス様も。ダーニエルがしごくと言っておりましたので、楽しみにしてください」
「……」
ルーイス。一体何をしごかれるのでしょう。
姉は、心配ですわ。




