16.
頭を優しく撫でられている感覚があります。
あら、頬もそっと撫でていますわ。
誰の手でしょうか……。
大きくて、温かくて、――グローブと柑橘の香りが微かにいたしますわ。
「フィー……?」
まだ、意識が戻り切らない……。でも、名前を呼んでみました。ちゃんと、言えているかな?
体が思うように動けません。
せめて、この手が誰なのか目を開けて確認したいのに、瞼が重くてそれもできません。
もどかしいです。
手を何とかして動かしてみました。ゆっくりですが、少しは動きます。
わたくしに触れている手を確かめようと、頭に持っていこうと懸命に頑張りました。
どこかしら。
空を切る手が、重いです。
途中で自分の重みで落ちていく手。
どうにもできないのが、もどかしいですわ。
「だ、れ……?」
口もハクハクと小刻みに震えながらなんとか動かそうとしていますが、難しいです。
こんなにも、何もできないわたくし。
情けなくて、悔しくて、涙が勝手に溢れてきます。
「うっ……」
大丈夫だと、思っていたの。
ほんの少しの毒だろうと、高をくくっていたのでしょう。
情けないですわ。
毛布が掛けられているというのに、寒く感じます。
寒くて体が震え、カチカチと歯が鳴ってしまいます。
高熱を出しているということですわね。
王妃様のところで飲んだ時は、少しの違和感しかなかったのに……。
今のわたくしは力もなければ頼れる手が少なすぎます。
「うう……」
悔しい…、悔しいですわ。
もっと、狡猾に動くことが出来なければ、ルーイスや両親を守れない。
そして、フィリクス様……フィーのことも――。
そんなことを朧げに考えていましたら、肩まで毛布を掛けられ、おでこに柔らかい感触がありました。
何が、触れたのでしょう?
疑問だらけで、思考が纏まりません。
そして、体が重くて、なぜだか疲れて、眠気がゆっくりと下りてきます……。
そんな時、耳元で小さな声で囁かれました。
「心配したよ、リズ。……今はゆっくりと休んで」
フィーの、声ですわ……。
似た声ではなく、本人です。
間違い、ありません。
わたくしが、フィーを間違うはずありませんもの――。
やっと会えたのに……。
わたくしは睡魔に勝てず、
ふかふかのベッドに
意識も体も沈んでいきました……。




