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誠実という名の鎖に繋がれた国母は、微笑みながら毒を飲む  作者: 蒼宙 つむぎ


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15.

 執務室に着いたわたくしたちは、早速過去の帳簿を確認することにいたしました。

 ひとまず、3年分を――。


「……」

「……」


 駄目ですわ……。

 赤字経営にも程があります。

 ですが、毎年補填されていますのよね……。


「……補填していただいてるのは、リヒタイン家がほとんどですわ……」


「そうだね……。それから、公金もあるね」


「ええ……。どうしてかしら。オーエンツォ家の領地の特産品も特筆するようなものはございませんし……」


「姉さま、我が家の特産品のほとんどは薬草ですね。父様は地質学者なので、薬草に適した土を開発したのでしょうか?」


「そうですわね……。あの方、いったい何をしているのか何も言ってくれませんし。殴ってみたら話してくれますかしら」


「あ!いいですね!1度やってみましょう」


「ルーイス、冗談ですわ……」


「え~。冗談だったのですか~。ありだと思ったのに~」


「一応、親ですから。……暴力はいけませんわ」


「ちぇ!詰まんないの~」


 ルーイス……、大丈夫かしら。

 暴力的な子になってきたような気がします。

 誰かに相談したいところですわね……。



 結局のところ、3年分の帳簿ではよくわからないことが多すぎましたので、執事に聞いてみることにいたしました。

 その執事、今は解雇する人たちと話し合いが長引いております。

 仕方ありません。

 何せ、紹介状を出さない方針ですので、彼らも必死なのでしょう。

 執事がこちらに来るまで、お茶を飲んで休憩することにいたします。


「ヤスミン、お茶を入れてもらえる?」

「はい。今日は何にいたしますか?」

「そうね……。ミントですっきりしたいわね」

「かしこまりました!」

 ヤスミンは笑顔で執務室から出ていきました。



 暫くして、彼女が変な顔をして戻ってきました。

「どうかしたの?」

「あの……。茶葉が、入れ替わっていました」


 なるほど……。


「ルーイス、貴方は絶対に飲まないでね」

「……はい」

 ルーイス、大丈夫です。


「ヤスミン、手筈通りに」

「……かしこまりました」

「ヤスミン!姉さま!」

 ルーイス、泣かないで。きっと、大丈夫ですから。



 ヤスミンは、茶葉の入った瓶を開け、スプーン1杯をポットに入れ、お湯を注ぎました。

 3分しっかりと蒸らし、カップに注ぎ入れ、わたくしの目の前に静かに置きます。

 その手は、かすかに震えておりました。

 嫌な役回りをさせて、ごめんなさいね。



 わたくしは、目の前のお茶を見つめ、小さく呼吸いたしました。

 そして、ソーサ―に置かれております銀製のスプーンを手に取り、お茶を1回しいたしました。


 スプーンは、うっすらと黒みを帯びております。


 ルーイスとヤスミンの息を飲む音が聞こえてきました。


 わたくしは、貴方たちを信用しております。

 だから、大丈夫です。


 ゆっくりと両手でソーサーを持ち上げ、右手でカップの持ち手を持ちます。

 ミントの爽やかな香りの中に、甘い香りが混じっています。

 わたくし、思わず笑みがこぼれてしまいました。


「ねえ、様?」

 ルーイスが、心配して声を掛けてきます。


「同じ、ですわ」

 そう言いますと、ルーイスはとうとう大粒の涙をこぼしてしまいました。


「後のこと、よろしくね」

 わたくしは最後にそう言って、お茶を1口飲みました。


 やはり、苦いですわ。

 そして、残念なことに、――以前のものより強そうです。



 わたくしは次の瞬間、

 意識が遠のいていきました。


 倒れていく体。

 視線が、斜めに傾いていきます。

 ルーイスとヤスミンの叫んでいる声は、籠った音に聞こえますわ。


 ああ……

 どういたしましょう。

 今、無性にフィーに会いたくて仕方ありませんわ。



 わたくしはその後

 意識が遠のき、倒れてしまいした。


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