11.
2度目の謁見の翌日。
当たり前ですが、まだ王妃様からは何も知らせはございません。
時間もありますし、手帳に違和感を書き加えておこうとペンを持ちました。
ですが、文字を書く前に部屋の扉をノックする音で手が止まりました。
「お嬢様、お客様が……来られました」
下女の一人が困った顔をしています。
「わたくしは誰とも会いません」
誰かと会う予定もしていませんし、先触れもいただいておりません。
まあ、先触れを受け取る必要はなくなりましたので、誰とも会わなくていいということなんですけども。
「それが……、アイシャ様という方なのですが……、会うまで帰らないと玄関先で喚いております」
先触れもなく、いきなり訪問して喚くだなんて。淑女としては不合格ですわ。
「ふふふ。喚くからと言って会う必要を感じません。帰っていただいて。それでも無理なら、憲兵を呼んできなさい」
わたくしは、それくらいのことで折れませんわ。
「えっ?!よろしいのですか?」
この下女、使えませんね。後で侍女長に話をしませんと。
「ヤスミン、王妃様からの書状を持って行って貴方から説明して帰っていただいて」
「かしこまりました。そこの貴方、すぐにここから出なさい。侍女長様のとこへ行って指示を仰いで」
ヤスミン。貴方、私がしたいことを読んでくれましたわね。余計な手間が省けてよかったわ。
ヤスミンが下女を部屋から追い出し、玄関へと向かっていきました。
この屋敷には、鼠がまだもぐりこんでいるのでしょう。
掃除が必要です。
暫くして、ヤスミンが戻って参りました。
「お嬢様。憲兵を呼んで、アイシャ様には帰っていただきました」
「そう、ありがとう」
「あと、侍女長に先ほどの下女について報告いたしました」
「そう。手間をかけたわね」
「いいえ。お屋敷の中が変な感じなのですけど……、どうしますか?」
「そうね……。ルーイスは学園かしら?」
「はい、夕刻まで戻ってこられません」
さて、どうしましょうか。
ルーイスが戻るまでに計画を立てておく必要がありますわね……。
「ミヒャエルを呼んできて。急ぎで」
「はい。すぐに」
ヤスミンは真剣な顔で部屋を出ていきました。
少し、厄介なことになりそうですわ。
コンコン
「お嬢様、戻りました」
ヤスミンの声です。ミヒャエルは……、無言ですわね。
「入って」と言って2人を迎えます。
「お嬢様、屋敷の下女のリストと下働きのリストも持ってきました」
「あら、仕事が早いわね。助かるわ」
「当たり前です。お嬢様の動きについて行くためにはこれくらいじゃないと」
「ふふふ。その通りですわ。ミヒャエルもこの速さに慣れてね」
「はい」
ミヒャエルが返事をしましたわ!珍しい!暦に赤で印をつけておかなくては!
滅多にないことが起きましたので、勢いよく立ち上がり、赤いインクを取り出してそわそわしてしまいましたわ。
わたくしも淑女らしくありませんね。
反省です。
それにしても、1日家を空けましたらこんなことになるなんてね。
わたくしはヤスミンが手に入れたリストを眺めてため息が出ました。
「さて。……それでは、お2人の意見を伺いましょうか」
お掃除をするには、
しっかりと計画を立てませんとね。
”カレンダーに赤ペンで印をつけておかなくちゃ”
日常とは違う珍しいことが起きて「明日は雪(雨)でも降るんじゃない?」と驚くドイツ語での慣用句見たいなものらしいです。
リヒテンシュタイン公国のような国をモデルにしているので、ドイツ語をできるだけ使っています。




