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誠実という名の鎖に繋がれた国母は、微笑みながら毒を飲む  作者: 蒼宙 つむぎ


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10.

 ヤスミンとの出会いは、わたくしが幼少の頃でございます。

 まだ、わたくしとフィリクス様が出会う前です――。



 エリザベート・オーエンツォ、4歳の誕生日を最近迎えた頃でした。

 小さな領地で毎日走り回って過ごしておりました。

 そのころのわたくしは、ほんの少し活発な子供だったのです。


 ******



「エリザベート様、お願いですから木登りはやめてください!怪我をします」

 口うるさいげじょたちが木のしたでわめいていますね。


「ほっといてよ!

 小さなルーイスをかまえばいいじゃない!」

 わたくしのことなんて、どうでもいいんでしょ!


「エリザベート様、そんなことを言わず」

「うるさい!みんな、いなくなればいいのよ!」

「お嬢様!そんなことを言わないでください」

「わたくしのおたんじょうびを忘れていたくせに!」

「そう言うわけではないのです!お嬢様!」


 3日前のたんじょうびはみんなでおいわいをしてくれるといっていたのに、おいわいの“ばんさん”もなくてさみしかったの。

 ルーイスが“はやりやまい”にかかり、やしきではわたくしを小さなこやにおしこみましたのよ!

 ゆるせませんわ!

 だから、わたくしはみんなが“こまること”をすることにいたしましたの。


 よくじつ、わたくしは“いえで”をしてみることにいたしました。

 かあさまのかばんをくすねて、だいじなたからものたちをつめこみました。

 そして、こっそりとうらぐちから森にむかいました。

 ほんとうは、入ってはいけないといわれているけど。


 森をおくへとすすみましたら、木々がうっそうとしており、こころぼそくなってきました。

「どうしましょう。かえったほうがいいかしら……」

 よわきになり、わたくしはうずくまってしまいました。

 どこからか、鳥のなくこえがきこえます。

 ぶきみです。

 からだがふるえます。

 あたまの中で“こわい”しかかんがえられません。


 しばらくうずくまっていましたら、どこからか“あかご”のなきごえがきこえます。

「あかちゃん?ないている。ずっと……」

 なきやまないなんて、どうしたのかしら。

 げじょがいないのかしら。

 しんぱいですわ。


 わたくしは、さっきまでの“ふあん感”より、“しんぱい”が大きくなり、さがすことにしました。

 だって、ひとりぼっちだったらかわいそうですもの。


 森のおくのみずうみのちかく、木のねっこのところにかごがあります。

 そのかごから、なきごえがきこえます。

 まわりには、だれもいません。

 おそるおそるかごのそばにむかいました。

 ぬのにくるまれた“あかご”がないています。


 でも、なんでないているの?

 どうして、だれもたすけてあげないの?

 ふっくらとしたほほおにそっと手をあてました。

 すると、さっきまで大なきしてしていたのに、ぴたりとなきやみました。

 それどころか、にっこりとわらいかけてまいりましたわ。


「かわいい……」

 思ったことが口からでてしまいました。

 おもわず、はずかしくなり口に手をあてましたけど、だれもいないからいいですわ。


 それにしても、このままはよくありません。

 どうしようかとおもっていると、“あかご”の上にもじがかいてあるかみがおいてあります。

「えっと、“やすみん”。なまえ、かな」

 とてもかわいいなまえですわ。

 でも、わたくしといっしょでひとりぼっちはかわいそうです。


「“やすみん”。わたくしが“かぞく”になってあげますわ」


 わたくしは“たからもの”がはいっているかばんをほおりだし、“やすみん”の入っているかごをだきしめて、いそいでやしきにもどりました。

 やしきにもどると、めちゃくちゃおこられました。

 でも、“やすみん”をまもるときめたのです。

 まけられません。


「わたくし、“やすみん”を“かぞく”にむかえます!」

 こしに手を当ててそうさけぶと、お父さまとお母さまのかおが青くなりました。

「エリザベートにはルーイスという弟がいるじゃないか。男の子が嫌だったのかい?女の子だとよかったのかい?」

「私達がいるのに、どうして?」

 お父さまとお母さまはおかしなことを言いますわ。

 そんなのきまってますのに。


「“やすみん”はわたくしとおなじひとりぼっちでかわいそうなのです。わたくしがまもってあげないとだれもたすけてくれません。だから、わたくしが“かぞく”になるのです」


 お父さまとおかあさまはこまったような、気まずいようなかおをしています。

 でも、わたくしはだれにもじゃまさせませんわ。


 ******



 その後、ヤスミンを放っておくのも良くないとのことで、当時の侍女長が面倒を見てくれることになり、下女として教育を叩きこまれたヤスミンはわたくし付となりました。


 わたくしは……、ルーイスの流行り病がうつり、赤い発疹が体中に広がりました。

 わたくしを小屋に入れていたのは、隔離するためだったと知ったので、蔑ろにしようとしていたわけではないことがわかりました。

 熱にうなされながら、わたくしは愛されていると知ることができた、大切な思い出ですわ。



「エリザベート様、お茶を入れましたよ」

 ヤスミンは今日も元気に側にいてくれます。


「今日は何かしら?」


「今日は、生のカメレオン草と乾燥したカメレオン草をブレンドしました!」


「……」




 輿入れの際に連れて行くのは、

 考え直そうかしら。


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