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誠実という名の鎖に繋がれた国母は、微笑みながら毒を飲む  作者: 蒼宙 つむぎ


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9.

 王妃様との謁見後、すぐに屋敷に戻り、自室へと急ぎました。


「ヤスミン、少し1人にしてもらっていいかしら……」

 着替えの手伝いをしようと側によってきた彼女にそっと耳打ちをする。


「ん……。お召し物に皺が寄りますから、ほんの少しですよ。大広間にあります大時計が次の鐘を鳴らしましたら遠慮なく入りますからね」

「ええ、ありがとう」

 次の鐘が鳴るまで、それだけでも十分ですわ。

 クラリス様が書状を渡してきた際に目配せしてきた意味を確認するには――。


 ヤスミンが部屋を出ていったのを確認し、クラリス様から受け取りました王妃様からの書状を広げました。

 中には、1枚の小さな紙片が挟まっております。

 わたくしは、その紙片へと手を伸ばします。


 見覚えのある独特な跳ねのある、あの方の文字。

 そこに書かれていたのはとても簡潔でたわいない言葉です。


 “いつも努力を惜しまない貴方のことを誇りに思います。

 体調にはくれぐれも気を付けて。

 次に会うのを楽しみにしています。


 カトリーヌ“


 そう、文面はカトリーヌ様からのお言葉です。

 ですが、わたくしにはもう一つの言葉があることを知っています。


 手元灯に火をつけ、紙片を手前にかざします。

 そして、文字の下に、小さな小さな穴が開いているところを順番につなげ、頭の中で文章に変換していきます。

 瞬時、わたくしの手は震え、息を止めてしまいました。


 “愛している。

 フィー“


 どういたしましょう。

 あの方が、手紙の暗号を使って、想いを伝えてきてくれました。

 嬉しさのあまり、紙片を強く胸に押し付けてしまいました。

 胸が、熱いですわ。

 わたくしのことをもうお忘れになられたかと思いましたのに。


 いけませんわ。

 感傷に浸り涙がこぼれそうになりましたが、ヤスミンが戻ってきたときに怪しまれますわね。

 手に持った紙片を机の一角に立てかけておきましょう。


 その後、急ぎ手元灯を消し、窓を開け放ちました。

 煤の微かな香りであかりを灯したことを悟られないように……。



 コンコン

「エリザベート様、入りますね」

 ヤスミンが着替えの手伝いをしに他の下女と共に戻って参りました。


「ええ、お願いします」

 わたくしはいつもと同じように声を掛けます。


 ヤスミンは手際よく登城用のドレスを脱がしてくれます。

 そして、屋敷用の動きやすい簡易ドレスを身に纏わせていきます。

 コルセットが緩められ、やっと息苦しさから解放されました。



 ヤスミンがドレスを持ち上げ、衣装部屋に戻ろうとした時、ふとわたくしに声を掛けてきました。


「エリザベート様、王妃様から心温まるお手紙をいただいたのですね」

 机の紙片を見ながら、そう言ってまいりました。


「ええ……。とても嬉しかったので、目につくところに飾っておこうと思いましたの」

 誰かに見つかっても怪しまれない内容ですし。

 変に隠す方が怪しまれますからね。


「それはいいですね!これを見ると、頑張れますね」

 明るくわたくしに話しかけてくる貴方の声は、少々大きめですわ。



 ああ……、ヤスミン。

 貴方は本当に完璧です。

 フィーの文字を知っているのに何も言わず、他の下女に意識を誘導するなんて。

 わたくしは、貴方には側にいてもらわないと心細くなりますわ。

 カトリーン様へお願いを追加しておくべきでしたわね。


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