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赫の神は休めない  作者: sei10


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18/22

16 免罪符

腹切りならぬ首切りを敢行(かんこう)せんとする少女に対して、俺は咄嗟に魔術によって待ったをかける。


『止まれ』


少女と俺の視線を交差させ、右目に刻まれた魔法陣に魔力を流す。そして、同時に声帯へと魔力をこめて言霊を放った。


繊細な手術によって角膜へと刻んだ中空型の円陣は、視覚をトリガーとして目視した対象を軽い催眠状態に陥れる。いわば【魔眼】とでもいうべき魔術だ。そして、催眠状態にある対象は俺が下した命令に反射的に従ってしまう。


魔術が通じる格下であれば絶対的優位に立つことができ、格上相手でも戦闘中に隙を作り出せる。俺の切り札の一つとでもいうべきものだ。


視て、魔力を流す。このような生活魔術よりも簡易な手段で発動できるのがこの魔術の利点... しかし、今回はそれが(あだ)になった。とっさの行動で切り札を見せてしまったのだ、それも口封じができない相手に。


今こいつは自死しようとしてはいるが、こんな辺鄙(へんぴ)な場所で聖騎士が行方不明になればどうなるだろうか? 答えは簡単だ。教国との”聖戦”へと発展する。


ただでさえ、今の帝国は魔王国と戦端を開いており、王国や亜人連邦とは三つ巴の冷戦を繰り広げている。そこへ更に三大列強として数えられる教国が加わる展開は最も避けるべき事態だ。


「まてやぁあぁあああああ!」


一瞬の間に少女の手にある十字剣を叩き落し、その体を組み伏せる。いくら光魔術で森を焼き払える実力を持つからと言って、体術を魔術で更に強化できる俺に接近されれば成す術はない。


.....絵面は最悪の一言に尽きるが、そんなことは後で考えることだ。


すかさず俺は【精神安定化(アベレージマインド)】を掛け、少女の精神を落ち着かせた。拘束から逃れようとする少女は次第にその抵抗を弱め、ついには抵抗をやめる。しばしの沈黙が流れ、その後に彼女はか細い声でこう言った。


「.....この身を捧げよというのならば、私はこの罪をそそぐために、甘んじて受け入れましょぅ........」


「あーもう、めちゃくちゃだよ畜生!」


とりあえずは落ち着きを取り戻した少女を解放し、へたりこむ彼女の目の前に座る。



「あー、まず、私は今回のことを問題にするつもりはありません」


「.....それは、なぜ?」


「後始末が面倒だからです。それに、教国との関係が拗れることも避けたい。なので、私はこの(たび)の件の賠償として、今回の件を他言無用とすることを提案します」


「......それでは、私の罪はそそげません。やはりこの身を」


「やめてください」


これだがら聖騎士ってやつは.... 人の話を聞きやしない。


「だーかーら! この件は他言無用! 貴方の神と真名に懸けて、何人(なんぴと)にもこの事を漏らしてはいけません」


だが、何度言っても目の前の少女は、不服そうな、そして申し訳なさそうな顔のままだった。


「.........では、貴方の”免罪符”をいただきましょう。それで手打ちとします」


「...............わかりました。この約定を以て、あなたへの贖罪としましょう。では、これを」


そう言って彼女は俺の手の甲へキスをする。


少し湿った手の甲を見ると、そこには白く輝く【聖痕】が浮かんでいた。


これは聖騎士が自らの恩人へと贈る”免罪符”。これを持つ者は、一度に限りその送り主に相応する罪を赦されるという。


その紋の形によって聖痕の階級が分かるというが.... 分らんな。この形は見たことがない。


「....まぁ、いいか」


コイツが聖騎士であることは疑いようのない事実だし。儲けものと考えよう。


「では、これで私たちの因縁は白紙に戻りました。私は近くの駐屯地に戻ります。そちらも素早く撤収して下さい」


そう言って去ろうとする俺に、彼女はこう告げた。


「......いずれまた、お会いしましょう。その時こそは貴方に報います」


「.....」


生命魔術によって息を吹き返した馬の背にネムを乗せ、俺はその場を立ち去った。


二度と会ってたまるかよ。くわばらくわばら...... 塩も()いておこう。

〇三大列強国


帝国

教国

亜人連邦



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レビュー   狂喜乱舞

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