第11話「俺が、救世主?」
衣着せぬ 歯にも着せねば 体にも わがあるままを 見せしめるらむーーー
気が付くと、俺はどこかの部屋のベッドに運ばれていた。
体を起こそうとすると、全身に筋肉痛が走る。
いったい、俺はどんなムチャをやらかしたんだっけか・・・
(「神の呼吸」ーーー)
はっ!
眠りから覚め、俺の頭脳が徐々に記憶を取り戻し覚醒していく。
そう、俺は市原との戦いという土壇場の中で、たしかに習得したのだ。
きっとこの全身の痛みは、その反動といったところだろうか。
(あのあと、俺は一体・・・)
チュン。チュチュン。窓から鳥のさえずりが聞こえる。
バタン!!と大きな音を立て、部屋のドアが開く。
あれ、こんなことが、前にもあったようなーーー
「・・・目覚めたようだな」
女が喋る。
んん?いやちがう、たしかここは、
「そこは、『おーーーーーーーはよっ!』だろ!?」
「ククッ、水田クン、ここは夢乃国じゃあ、ないんだぜ」
「?」
ひとり、飯塚は事態がのみこめない様子できょとんとしている。
そして今話しかけてきたこの男は・・・
「い、市原ァ!?おまえ、無事だったのか!?」
「キミもね。どうやら僕たちは、このお嬢さんたちに助けられたみたいだよ」
「そ、そうだったのか。・・・ところで、お前どうして両目をつぶっているんだ?」
(キミの目つぶしが思った以上に強打で、目が見えなくなってしまったんだけど、黙っておこう・・・)
「どうでもいいけど、アンタたち、全裸でレディーの目の前に現れるとは、いったいどういう了見よ!パジャマ着せてあげた有希に感謝することね」
いつのまにか部屋に入ってきていた福田が不満げに告げる。
そしてそのとなりには・・・ギャームと、あの老人が例によって囲碁をたしなんでいた。
「ふむぅ、なんという偶然か、おぬしから話を聞かせてもらおうと思っていた矢先、こんなにすぐ有希に出くわせるとはのう。おぬし、中々強運の星に生まれているかもしれぬぞ」パチ
「ギャーーーーーァム(えがったえがった)」パチ
「・・・さて、水田。いや、その前に市原くんは、ちゃんと話すのはこれがはじめましてになるかな。一応同じクラスメイトの飯塚有希だ。2人に、この世界について説明しようと思う」
かくかくしかじか
「・・・という事情なのだよ。私の身内の問題に巻き込んでしまったようで申し訳ない。が、しかしその一方、ケガの功名。水田貴之という人間の発掘ができた点は非常に大きい。きみは老師の技を盗み習得したという。きみは我々の救世主になる器なのかもしれない。」
俺は、飯塚の話が長くて途中から何を言っているのかよくわからなくなったので、M1で面白かったコンビのネタを脳内再生しながら聞いていたが、最後の言葉には反応せざるを得なかった。
「俺が・・・救世主?」
「ちょっとちょっと、水を指すようで悪いのだけれど、日本が腐敗しているのはまぁ100歩ゆずってわかったとして、それがどうして神の技を習得した水田と関係があるっていうの?あんなのただの武術じゃない。」
(おお、福田って意外と理解力があるんだな。あとで産業まとめしといてくれ。俺は寝る。)
「ギャアアァム、ギャムウウ、ギャーーーーーーーム!!(この女、よく見たらけっこう美人じゃん。ライン交換しね?)」
「ギャムギャムギャーーーーーーーーームギャム!(お・こ・と・わ・り・よ!!)」
(ギャーム語もちゃんと翻訳できる、っていうかギャームと会話もできるのかよ、精神レベルが近いから通ずるものがあるのかな。すげえ)
「・・・アンタ、さっきからなんか失礼なことばかり考えてない?」
(そして心の中まで読めるってオイオイ、お前こそ救世主なんじゃないか?)
ウォッホン、と大きく一つ咳をして、老人が話し始める。
「あー、それについてはわしが説明しよう。おぬしらも知っておろう?日本だけではなく、いまや地球全体は極度の気温上昇を検知しており、温暖化は留まることを知らない。春夏秋冬などという四季があったのももう懐かしい出来事だ、ということを」
本で読んだことがある。かつて日本の気候は春夏秋冬と4段階に季節が分かれていて、また冬の時期には「雪」という気象があったという。
それももう50年以上前の話で、いまでは「季節」なんてバカらしい単語すら辞書から消えてしまったほどだ。なんせ、夏夏夏夏なのだから、区別しようがない。
「そう。その50年前・・・これが重要なのじゃよ。犯罪率が急上昇しはじめ、無法地帯になってしまった時期とピタリ一致する」
「!!!!」
飯塚が、普段以上に神妙な顔で何かを思案している。彼女にとってこの課題はとても重大なものなのだろう。
俺は自分さえ幸福なら知らない他人の幸せには興味が無いから、あまりよくわからない感覚だ。飯塚とは対極に当たる性格なのかもしれない。
「・・・で?そろそろ本題に入ってくださいよ、おじいさん。それが結局彼とどう関係あるんです?」
ファ~とあくびをしながら市原がこぼす。
「降らなくなった雪、上昇した気温、それに追随して頻繁におこる犯罪。この流れを断ち切るためには、単純な事じゃ。再び気温を下げ、雪を降らせる。・・・わが天川流心眼拳の究極奥義ならば、それができる。」
「ま、まさかーーー気候の操作が、人間に可能だというのか!?」
今にも寝そうだった顔つきの市原が老人の発言に食いつく。
「フフッ、すごい壮大な話になってきたじゃない。いいわね。この会話。上の上って感じよ」
「じいさん、その究極奥義ってのは、いったいどうすれば身につくんだ!?」
「老師、わたしにもできることがあれば、協力は惜しまない心意気です」
「ほっほ、もちろん、ここにいるみなに協力してもらわんと、実現はせぬ。しかしーーーまず最初にこれだけは言っておかねばな。」
「?」
「この究極奥義を使った者はーーーーーーー」
「地上を去ることになる」
産業まとめ
・ついに全キャラ?集合!
・犯罪率90%の地球をどうにかするには究極奥義で雪を降らせるしかない
・ばいばいw




