覚醒
ソウタ達は不呪王の攻撃を避けるためひたすら走っていた。
「レオさん、このままじゃまずいです」
「わかっている、だがやつの攻撃の仕組みが分からない限りどうすることも出来ない」
ソウタとレオが会話をしているうちにも、次々に仲間が殺られていく。ある者は誤って地面に躓き(つまずき)逃げ遅れ殺され、ある者は木に隠れていたとこを足が出ており居場所がばれ足を消し飛ばされた。
「(ん、待て。なんで足だけなんだ ?なんで奴は全身を消さなかった。いや、消せなかったのか)」
そこであることに気が付いたソウタは足を止めた。
「ソウタ君、何を止まっているんだ !早く走って !」
「待って下さい、少し試したいことがあるんです」
「何を言っている !奴の攻撃が当たれば死ぬんだぞ !」
「ええ、わかってます。だからもし、俺が死んだらユーティリア達を頼みます」
不呪王は、足を止めたソウタに気付き手をかざした。それを見ていたユーティリアが叫ぶ。
「ソウタ !」
「盾」
すると、不呪王の攻撃がソウタを襲ったはずなのにソウタはどこも怪我をしていない。
「やっぱりそうか」
「ソウタ君、何をしたんだ ?」
「簡単に説明すると、あいつの攻撃はきっと見えない魔法みたいなもんなんです。だから、盾で防げた」
不呪王はソウタが死なないことを不思議に思い何度も魔法を放っているのか手を下ろさない。
「レオさん、ここは俺に任せて他の魔物を片付けて下さい。奴の魔法は障害物に隠れていれば当たりませんがこちらが攻撃する瞬間はどうしても障害物から出なければいけません。俺の盾ならいつでも防げます」
「だが、身に付けている普通の盾では駄目なのか ?最初に突っ込んだ者は職業が武闘家であった為に軽装だったが聖騎士や守護戦士なら」
ソウタは説明するのがめんどくさそうにため息をついた。
「顔はどうするんですか、盾をずっと顔の前に構えていては攻撃することもままならない。仮に全身を鎧で覆ったとして攻撃があれだけとは思えません。何か別の攻撃で打開してきます」
「そこまで言うなら……だが、1人で大丈夫なのか ?」
「まあ、なんとかします。ユーティリア達は任せました」
もうソウタにこの魔法は効かないと判断したのかいつの間にか不呪王は手を下ろしていた。
「行きます」
ソウタは剣を片手に走り出した。レオは剣を鞘に納め大きく息を吸った。
「全軍に告ぐ !不呪王の相手はソウタ・ミクニに任せた !よって、我々は周りにいる魔物の掃討にあたる !いいか、ソウタ君の戦闘の邪魔をさせるな !」
レオの声が戦場に響き渡った。その声は戦場のどこにいても聞こえる声で。戦士職全般が取得出来る『ウォークライ』、それは戦場に指示を伝えるとともに士気を上げるものだ。それとともに、戦士たちは雄叫びをあげ次々に魔物を殺していく。しかしそんな中、ソウタの元に向かう3つの影があった。
ソウタの剣から放たれた斬撃が不呪王を襲う。不呪王は手を地面に当てる。すると、不呪王の目の前の地面から漆黒の荊が出現しバリケードを造り不呪王を守った。
「やっぱりまだ持ってるか」
不呪王はそのまま地面についた手に力を込めた。その瞬間、次々と地面を突き破るように荊が現れる。やがて、ソウタの足元からも荊が出てきた。それを後ろに跳んでかわすも着地地点からも出てくる。
きりがないと判断したソウタはジャンプで避けることを諦め猛スピードで走り出した。視線の先には不呪王の姿。ただ殺すことだけを考えて漆黒の荊を避けつつ不呪王に近付く。
不呪王は近付いて来るソウタを気にする様子も無く次の詠唱に入った。それを見たソウタは念のため盾の準備をする。深く被ったフードの下でぼそぼそと何かを呟き宙に黒の五芒星を描く。その中に手を突っ込み何か引っ張り出した。
出てきたのは群青色に輝く幅20cmはありそうな少し古びた剣だ。そしてその剣を地面に突き立てた。剣から黒い瘴気が出て地面を覆い尽くす。瘴気はどんどん広がりソウタの目の前で止まった。
やがて、瘴気が覆い尽くした地面から一体、また一体と何かが出てきた。
「あれは、スケルトン ?」
出てきたのは、以前ソウタが戦った骨騎士とは違い今にも崩れそうな形をしているスケルトンだった。能力自体も骨騎士より大幅に劣るだろう。しかし、それは単体であった場合の話だ。
出てきたスケルトンの数はおよそ200体以上。しかも次々にと新しい個体まで出てくる。出てきたスケルトン達は、ソウタに襲い掛かる。
スケルトン達をひたすら斬り続けるが、ソウタが倒すスピードよりも生み出される数の方が多い。
「このままじゃまずいな、あいつにさえ辿り着けない」
不呪王は周りには他のスケルトンより一回り大きいスケルトンが守護していた。不呪王は今もなおスケルトンを生み出し続けている。
「打ち払え サンダーボルト」
ソウタは自らの能力でスケルトンの群れに向かって雷の第二階級魔法を放った。サンダーボルトは広範囲にわたりスケルトンを焼き尽くした。
スケルトンがいなくなった道を一気に駆け抜ける。すかさず他のスケルトンがフォローに入るがすでに遅かった。ソウタに襲いかかったスケルトンはあと一歩のところで塵となって消えた。
「聖女の加護。これでもう心配ないわ」
ソウタは驚いて辺りを見渡した。
「どうして来たんだよ」
そこにはユーティリア、カグヤ、レインの三人がいた。
「ソウタ一人だと心配だってユーティリアが」
「べ、別にそんなことは」
「ソウタさん、前 !」
三人の方を向き油断していたソウタに三体のスケルトンがいたが、ユーティリアの『聖女の加護』で塵になって消えた。
「援護は任せて。私とレインでどうにかする。」
「じゃあ私は一緒に戦おうかな」
カグヤは腰に差したレイピアを引き抜いた。
「行くぞ」
ソウタとカグヤは走り出した。スケルトン達は不呪王のもとにいかせまいと次々に襲いかかってくる。
「邪魔だ」
スケルトンはあっという間にソウタとカグヤに斬られ崩れていく。たとえ、スケルトンがソウタやカグヤに傷を付けようが瞬く間にユーティリアが治していく。
「スウェイク・ダウン」
レインの杖から出た黒い靄がスケルトン達を包み込んでいく。すると、急にスケルトンの移動速度が遅くなった。
「二人とも、今 !」
「ありがと、レイン。ソウタ、やるなら今だよ」
「わかってる」
二人は不呪王に向かってさらに速く走った。不呪王はまた何かは呟いている。
「速攻で決める」
ソウタとカグヤは不呪王の目の前まで来た時、不呪王が両腕を大きく広げた。次の瞬間、二人をとんでもない重力の嵐が襲った。耐えきれずに地面にひれ伏す。
「我に貴公らの剣は届かない」
初めて聞こえる声で不呪王が喋った。
「アシャラニャワルーテ・ティカシャリャノランテ」
不呪王は聞いたこともないような詠唱を唱え手をユーティリアに向ける。
「去らばだ、名も知らぬ回復術師よ」
手から赤黒い波動が出てユーティリアに向かっていく。
「ユーティリア !」
盾を出そうにも手が動かずに出せない。やがて大きな衝撃音がした。それと同時にソウタとカグヤの重力が無くなった。
「ユーティリア……」
土煙が風に流され視界に映ったのは、予想外のものだった。
ユーティリアの前には一人の女性が立っていた。長い黒髪をたなびかせ手には木に植物が絡み付いたような杖を持っていた。同時に近くにいたレインがいないことにソウタは気がついた。
「どうして君がそこにいるんだ、アトランテ」
不呪王は驚きを隠せずにいた。一方、女性は不気味に微笑み杖を構えた。




