防衛戦
登録を終えた次の日、ギルドの様子は慌ただしかった。
「一回しか言わねーから良く聞け !戦士職は1階の南側、回復職は1階の北側、魔法職は2階だ。動け !」
集まった冒険者達は、急いで職業ごとに分かれる。さっきから、指示をしているのはレオ率いる王都第4騎士団の副団長のドメルマだ。今回の防衛戦は、レオが最高責任者に任命されたらしい。
「ソウタ、うち達はあっちだよ。早く行かないと怒られる」
「そ、そうだな。じゃあ、ユーティリアとレインまた後で」
カグヤに引っ張られソウタは南側に向かう。ユーティリアは北側、レインは2階へと各自の職業の場所にいく。
「戦士職はこんなものか。やあ、ソウタ君じゃないか」
戦士職の場所に行くとそこには、レオがいた。あの時着ていた鎧を装備し書類を持って人数の確認をしている。どうやら、ソウタとカグヤが最後のようだ。
「それでは、全員揃ったので説明を始める。今回の防衛戦は、名の通り王都を守ることが最優先だ。君達、戦士職には突撃してくる魔物を迎え撃ってほしい」
レオの言葉で場がざわついた。特に、女性には少し過酷な戦い方だ。突撃してくる魔物に対してそれを迎え撃てなんてこと、口では言えても実行出来るかどうかはわからない。
「もちろん、男性、女性とは役割は分けるつもりだ。主に男性が前に出て戦いサポートを女性がするというものだ」
その一言で、女性達はまだ気が楽になったらしくほっと一息つく。隣にいる女の子は別になんとも思っていないようだ。
「今回の防衛戦で敗れれば王都陥落は目に見えている。だから、私を含めて君達には期待している。防衛戦、勝利を手にするのは我々だー !」
ギルドがレオへの敬意の拍手に包まれた。
「これから、王都の外で待機する。おそらく、数時間後には戦闘が始まっている。ここまできたら覚悟を決めろ」
ギルドから次々に人が出ていく。ユーティリアとレインはソウタ達の元に近づいてきた。
「どうやら私たち回復職と魔法職は、戦士職の後方支援らしい。後ろは任せて」
「頼んだよ。そろそろ俺たちも行こうか」
ソウタ達はイルに見送られながらギルドを出ていった。
王都の外に出て2時間が経った。しかし、一向に魔物が現れる気配はない。
「おい、もう帰ろうぜ」
1人の冒険者がそんな一言を発した瞬間、遠くを見ているレオの目が険しくなった。
「全員気を引き締め直せ、来るぞ」
やがて遠くから無数の足音が聴こえる。その足音は、少しずつ大きくなる。
「隊長、魔物の軍勢視認出来ました !か、数はおそらく1000を超えているかもしれません」
高台にいた兵士がレオに伝える。レオはそれを聞き剣を抜き盾を構える。
「そうか、これからも情報の取得を頼む。魔法部隊、詠唱準備を。戦士諸君は、魔法が放たれたのを合図に攻撃開始だ」
魔法部隊の詠唱が始まる。次の瞬間、次々と魔法が放たれた。放たれた魔法は、魔物の軍勢に命中し一網打尽にするがまだまだ残っている。その頃、言われた通りソウタ達は、魔物を攻撃しに行く。
魔物の多くはゴブリンや狼の姿をしたリアウルフ、また所々に強そうな魔物の姿が見える。
「カグヤ行くぞ」
「ええ」
ソウタとカグヤは魔物の軍勢に向かって走り出した。すぐさま、ソウタ達に気付き2匹のゴブリンが向かってくる。
「どけっ !」
「邪魔よ」
飛びかかってきたゴブリンを2人は切り裂きゴブリンは地面に落ちる。
「ガルルルッ」
ゴブリンの様子に気付きリアウルフの群れがソウタ達を襲おうとする。ソウタは立ち止まり剣を構えた。4匹のリアウルフはソウタを獲物と思い連携してソウタに飛びついた。
ソウタは軽く剣を振った。次の瞬間、リアウルフは空中で首を切られたかのように絶命した。
「なにしたの ?」
「カグヤの技の応用だよ。まず、剣の斬撃を創って宙に滞空させる。次にリアウルフが襲いかかってきたタイミングを見計らってその斬撃を拡張しただけだ」
その間にも後方からどんどん魔法が飛んでくる。それを上手く避ける魔物もいるが、ほとんどの魔物は避けられずに命中し死んでいく。
魔物の軍勢の中を着々と進んでいたソウタ達は、ある魔物の前で走りを止めた。
「これは厄介かもな」
「だね~、でもやるしかないね」
目の前には、岩を削って作った彫刻のような人の形をした石像が立っていた。
「ゴーレムか」
「ゴォォォォ !」
ゴーレムは、凄まじい雄叫びらしきものをあげソウタ達に襲いかかる。ゴーレムの拳がソウタに当たる。それだけでたちまち砂埃がたちソウタの姿が見えなくなる。ゴーレムはさらに攻撃を続ける。
「ソウタ !」
「カグヤ、攻撃するなら今だ」
近寄ろうとしたカグヤはその言葉で、攻撃体勢に入る。
「スラッシュ」
ゴーレムをレイピアで切り裂こうとするが岩の肌に剣が弾かれる。やがて、ゴーレムの連続攻撃が終わり砂埃の中から盾を張ったソウタの姿が現れた。
「ソウタ、このゴーレム硬い」
「みたいだね」
一度ゴーレムから距離を取るためにカグヤの元に駆け寄った。
「ゴゴゴォォォ !」
再びゴーレムはソウタを襲いにかかる。
「カグヤ、少し下がってて」
「え、あ、うん」
カグヤは言われた通りソウタから少し離れた。ソウタは手を前に突きだす。すると、手に1本の刀が出現した。そのまま手に持ち構える。
そんな事をお構いなしにゴーレムは自分の腕をソウタ振り下ろす。
「拡張居合い」
振り下ろされたゴーレムの腕はソウタに届くことはなかった。ドスンと大きな音を立ててゴーレムの腕が落ちた。ゴーレムは、自分の身に起きたことがわからなかった。
「これも応用。というか、そのままだけどね。居合いの斬撃を創造して拡張した」
「でも、うちには斬れなかった」
「言っただろ。俺は基本何でも創造出来るって。世界一強い刀を創造して、世界一鋭い斬撃を創造すれば斬れないものなんてないよ」
ソウタとカグヤが話をしている間に、ゴーレムは起き上がりソウタを残った方の腕で殴ろうとした。
だが、その攻撃もソウタに届かなかった。またしても、腕が切れている。
「気を付けろよ、ゴーレム。もうその辺は、滞空斬撃でいっぱいだ。下手をすれば、体は粉々になるよ」
ゴーレムが人間の言葉を理解出来るはずもなく、攻撃手段を失ったゴーレムは自らの本陣に引き返そうとした。
「終わりだ」
次の瞬間、ゴーレムの体は粉々になり破片は地面に落ちていった。
「俺たちは先を急ごうか。目指すは西の魔王だ」
「そうだね~こんなところで苦戦している場合じゃないね」
ソウタ達はさらに敵の本陣へと近づいていった。




