力の差
レオ・ティナカルトは、名家の養子として育った。そこで裕福な生活を送り、勉学や剣術などをしっかり教わった。何をしても優秀だったレオは、物心ついた頃から王都騎士団に入隊していた。
騎士団に入ってからも、レオは着々と実力をつけていった。そんなレオのことをよく思わない連中から決闘を申し込まれることも多々あった。
だが、レオはその決闘で一度も負けることはなかった。初めの頃は何度も挑んでくる者もいたが、勝てないとわかるとレオに決闘を申し込む者はいなくなった。
レオの実力は、王都騎士団でもトップクラスだ。騎士団の中でも、レオに勝る、対等に戦える者は少ない。
レオの言ったことは本当だ。一度、ソウタと戦ってみたかった。だからといって、レオはこの決闘に負けるつもりはなかった。ましてや、最近冒険者になったばかりの者になんて。
しかし、それは間違いだった。レオの目に写っている光景は信じがたいものであった。
「うっ !」
ソウタの剣を盾で防ぐが防ぎきれず、レオは少し後退した。
「ホーリーブレーズ」
レオの剣に光が纏う。レオの職業、聖騎士は剣と盾を基本として戦うスタイルに光魔法により自分や仲間を強化する。
光魔法は、通常攻撃の与えることの出来ない死霊系の魔物にダメージを与えることが出来るようになる。
レオは、光を纏った剣でソウタを攻撃する。ソウタは迫り来る剣を静かに受け流す。空いた胴体に一撃を見舞う。
「くっ !ホーリークロス」
レオは、剣で十字に描き接点に剣を突き立てる。その瞬間、光の十字はソウタに向かっていく。しかし、ソウタはその場を動かない。それどころか、剣を構えて光の十字が来るのを待っている。光の十字は、すぐにソウタさん目の前まで迫った。
「スラッシュ」
剣を斜め下から振り上げ、十字の接点に当て十字を持ち上げ空に反らす。そのまま、体を1回転させスピードに乗りレオに走っていく。
驚きの光景を目にし呆然としていたところに、ソウタが迫る。咄嗟に盾を構えるが、防御するだけで精一杯だ。一度、ソウタの剣を弾き返し大きく距離を取る。
「まさか、君がここまで強いなんてな。正直驚いたよ」
「そうですか。騎士団長に褒めてもらえるなんて恐縮です。それでも、俺は手を抜くつもりはありませんから !」
ソウタは、レオとの開いた距離を一瞬で詰める。そこから一気に猛攻にはいった。レオは盾で防ぐばかりだ。
「起動軸 片手剣」
ソウタは剣を持っていない左手にもう1本の剣を創造した。二刀流になったことで、手数が増えレオに攻撃させる隙を与えない。しかし、勝負は意外な展開を迎える。
「パリィ !」
タイミングを計られ、剣を弾き返させてソウタは体勢を崩す。その瞬間をレオは見逃さない。
「神よ 我が剣に 御加護を与えたまえ バラニキアス !」
剣に神々しい光が纏いそのままソウタに向かって剣を突き出す。ソウタはなんとか2本の剣で受け止めるが、あまりの威力に大きく吹き飛ばされた。
「ぐはっ !」
そのまま壁にぶつかり一瞬呼吸が出来なくなる。地面に落ち、起き上がろうとするソウタの首もとに剣が突きつけられた。
「これで決着がついたな」
傷だらけのレオがそこに立っていた。どうやら、さっきの技は自分にも影響が出るようだ。その分、威力が馬鹿げているが。
「そうみたいですね」
ソウタは、手に持っていた剣を2本共に消滅させる。もう戦う意志がないことを証明するために、両手を上げた。そこで、決闘終了の鐘がなる。観客席は、歓声に溢れた。レオは、座り込んだソウタに手を差しのべる。
「やっぱり、強いですね」
そう言ってソウタはレオの手を取る。
「いや、君もなかなかに強かった。久しぶりに負けるかと思ったよ」
「これがやっぱり力の差なんですかね」
ソウタは、先程まで剣を握っていた手のひらを見る。
「そうかもしれんな。だが、君はこれからもっと強くなるだろう。またその時は、手合わせしよう」
コロシアムの出口に向かっていると、観客席から下りてきたユーティリア達が待っていた。
「そうですね。では、俺はこれで」
ユーティリア達のところに向かう途中、1人の兵士とすれ違う。その兵士は、レオの元に駆け寄った。
するとなにやら、兵士はレオに周りに聞こえない声で話しかけ始めた。レオも真剣にその話を聞く。やがて、終わったのか兵士はその場を去っていった。話を終えたレオはソウタに近づいた。
「ソウタ君、これから少しだけいいかな ?」
「なんですか ?」
レオは真剣な眼差しでソウタを見る。
「西の魔王の討伐に行った遠征隊が帰ってきた。私はこれからその会議に出向かねばならぬ」
「それはまたどうしてですか ?」
「簡単に話そう。討伐作戦は失敗、作戦に参加した数百人のメンバーの中で帰還したメンバーはたった百数人だけだという」
「それは大変なことですね」
ソウタとレオの会話を遠くから早くしてほしそうにユーティリアがこちらを見ている。しかし、レオはまだ話を続ける。
「この作戦が失敗に終わったおかげで、西の魔王が王都に攻めてきている。魔王から王都を防衛する作戦を実行するつもりだ。君達にもどうか作戦に参加してもらいたいんだが。どうだろうか」
「少し考えさせてもらうことって可能ですか ?」
「あぁ、かまわない。ただ、期日は明後日の早朝だ。それを越えると作戦がたてられなくなる」
「わかりました。この作戦には、ユーティリア達の参加は」
「もちろん、自由だ。参加する冒険者は町の方でも別の町からも募るつもりだ」
「そうですか、考えておきます。じゃあ俺はこれで」
「いい返事を期待している」
ソウタはユーティリア達の元に駆け寄りミレイが待つ宿へと帰った。




