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月亮の輝きを……【破鏡の世に……第二章】  作者: 刹那玻璃
季常さんが机上空論から実践に飛び出しました。
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季常さんはビックリしています。

 しばらく、道を進み、そして山道が開かれ、大きな町が開かれる。


「ここは?」


 季常(きじょう)の問いかけに、均(きん)は、


「漢中(かんちゅう)。張魯(ちょうろ)の五斗米道(ごとべいどう)……の本拠地。今回の目的地」

「はぁ‼えっと、益州成都(えきしゅうせいと)方面に追いかけていたんじゃないの?」

「ダメに決まってるだろう⁉士元(しげん)兄さんが、裏切り者だよ‼着いていったら斬首。家族も‼球琳(きゅうりん)殿や、甥や姪がどんな目に遭うか‼特に好色の関雲長(かんうんちょう)なんて、球琳殿を……とか思ってるよ‼」

「姉上。そんな馬鹿には、半殺し……」


 スコーン‼


頭上から手刀が叩き込まれ呻く。


「うぅぅぅ~‼いったぁぁい‼姉上は、そんなにバカじゃないよって言いたかったのに~‼」

「先に言え‼愚か者‼」

「でも、ここにどうして……」


 馬が二頭近づいてくる。


 一頭には、巨躯の金色の髪と青い瞳の青年。

 もう一頭には、ホッソリとした金の髪と青い瞳の女性に、男の子が乗っている……。


「金剛(ダイヤモンド)‼」


 馬に乗る金剛は、駆け出すと、


「うぉらぁぁぁ‼ふざけんな‼この親父め‼」


と、男の馬に飛び移り締め上げる。


「何でこうなったんだよ‼言いやがれ‼」

「待て待て……がぁぁ‼雲母(きらら)に似て可愛いのに……怪力……」

「うっさい‼」

「ダメです‼」


 もう一頭の馬から、広(こう)よりも幼い少年……。


「承(しょう)‼」

「兄上‼しょうもお手伝いします‼一緒に‼お父さんを‼」

「承にまで‼」


 がーん‼


衝撃を受ける孟起(もうき)に、孔明(こうめい)と均(きん)は大爆笑である。


「頑張って!金剛。殺したら駄目だよ?」

「私が教えたギリギリまでだよ~‼」

「はい‼叔父さん」

「て、てめぇらぁぁ‼金剛を、どんな風に育てたんだ‼」

「見ての通り優しい子に‼」

「どこが見ての通りだ‼」


 必死に逃げた孟起は、


「一回、てめぇ、殺る‼」

「あ、私怪我人です」

「はぁ?」

「ここに来る途中の谷で死にかかって、5日意識不明で、それから3日寝込みました」


手をあげる孔明。


「詳しい話は後で。すみません、雲母殿。お久しぶりです。申し訳ありませんが一般の民衆なのです。休憩できる場所とかはありませんか?」

「旅支度はできている。どこか平原でも構わない」

「令明(れいめい)お兄様‼」


 雲母は馬から飛び降りると、駆け寄る。


「久しぶりだ。心配していた。亭主があれだからな」

「旦那様と、お母様と承が……金剛が時々便りもくれましたし……でも、こんなに大きく立派になって……」


 微笑むと、


「私たちは城内ではなく、外に屋敷があるのです。馬もいますし、訓練もありますし、どうぞ」


呆然と見ていた季常が、隣の義兄の士元(しげん)に問いかける。


「えっ?どうして知っているんでしょう?」

「赤壁の戦いの間、孔明は裏工作に駆け回ってて、江東(こうとう)から曹孟徳(そうもうとく)軍に寝返ったことにしてあれこれやっていたんだよ。そうしたら、今次期当主の曹子脩(そうししゅう)どのと知り合って、その息子の子文(しぶん)どのが暗殺者に襲われてな……で、毒消しを取りに行ったと聞いている。そうしたら、ほら、あの女性な?雲母どのと言ったか?あの人は元々馬岱(ばたい)と言う名前で戦場に立っていた。母親は生まれてすぐ亡くなり、母の姉である馬孟起(ばもうき)将軍の母親の珊瑚(さんご)さまに育てられた。あの美しさだ、周囲でも噂になったが、実の父親が馬寿成(ばじゅせい)将軍の弟……再婚もしていて、邪魔な前妻の子を何処かの妾(めかけ)にと言い出し、それで大騒ぎになったらしい」


 季常は呟く。


「はぁ……。美しいと言うのも大変なんですね。あ、そう言えば琉璃(りゅうり)どのにも似ている……」

「琉璃の母親の姉が珊瑚さまと、雲母どのの母上だ」

「えぇぇぇ‼」

「然程勢力がない時に、連れ去られた。人さらいなんぞ当たり前だろうな。しかも、琉璃や雲母どののように美しいならな。探し回っていたが、と言うことだそうだ」


 言葉を失う。

 どんな目に遭ってきたのだろう……自分の視点の浅さに唇を噛む。

 そして、その子供として生まれた琉璃がどんな思いだったのか……。


「……兄上……」

「何だ?」

「過去の自分を抹殺しに行きたいです……琉璃殿に対して吐いた暴言や失言、大言、全部叩きのめしたいです……。許されないとわかっていますが、帰ったら、琉璃殿に謝罪と、皆さんに……」

「まぁ、ちゃんとしておきたいのなら、しておくといい。それと、口先だけでは駄目だ。成長した自分を見せてやれ」

「はい‼家族の為にも、今までの自分を消し去り、新しい自分……身を慎んで人の意見を聞き、それに従うだけではなく、それをもう少し補助をできる人間になります」


 季常は立ち上がり降りると、士元を支え手助けをする。

 そこに趙子龍(ちょうしりゅう)が現れる。


「日差しは強くはありませんが、ご注意を。それと、季常どのもその頬は……」


 いかつい趙子龍が笑う。


「あ、もしかして、墨ですか?」

「そうですな」


 子龍が拭くと、


「ありがとうございます。わぁぁ、良い年して恥ずかしい」

「今のうちですぞ?」

「そうですね。頑張ります」

「いやいや。これから全く休憩なしに、働かされるんじゃないかと思うのですよ」

「そんなことは……」


と思っていた季常が地獄を見る羽目に成る、一連のことの始まりだった。

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