梅花(メイファ)ちゃんは決闘する気満々です。
梅花は、長旅が終わり馬車を降りると、お嬢様らしからぬ全身をほぐし始める。
「こらこら、一応婚約の挨拶に来たのに、花嫁が何をしてるんだ?」
球琳が子供たちが降りるのを手助けしつつ、声をかける。
「いえ~。あの筋肉叔父さん……強そうだなぁってワクワクしてるんです‼」
「いや、あの方が馬孟起将軍。金剛の父だから……」
「楽しみです~‼ばっきばき?」
「……頑張りなさい……」
自分も女として大丈夫か?の育ちだが、この少女はその上を軽く越えて、変人の域である。
口を挟まないようにする。
「最近、体がなまってきている気がするんですよね……運動不足でしょうか?」
じっと手を見る少女は、武将ではなくご令嬢である。
それなのに、手のまめを見ている。
「それに、何か胸の方が太った⁉困るわ筋肉体操を‼」
梅花は、ちなみに成長期の令嬢である。
体全体が、女性的になってきている証拠であるのだが、賢い少女も自分が女性的になっていることが解っていない。
「困りました。筋肉をつける運動を倍にしないと……」
「それだけはやめてくれ……もう、ほんっとに‼」
士元は目を布で覆い、子供たちと妻に支えられながら降りてくる。
「それ以上鍛えたら、部将並だ‼自分のみを守る程度にした方がいい。自分の分を越えて動いてみろ……俺みたいになるぞ?」
「でも、守りたいんです‼」
梅花の声に、
「戦いってもんが、どれだけ辛いのか……知りもしないで言うんじゃない‼」
いつもはのらりくらりとかわす士元が、厳しい声で告げる。
「琉璃が……どれだけ苦労して、今の生活を手にいれたと思っている‼飢えと戦場、怪我……逃げ回り、ようやく得た幸せを奪われた‼再び戦場に投げ込まれた琉璃に言えるのか?」
「士元……」
「球琳、お前も分かっているだろう?戦いの虚しさ、苦しみ、哀しみを……それを、安易に口にするな‼」
「ですが‼私は、決めたんです‼」
梅花は言い返す。
「遊びではありません‼真剣なんです‼本当は怖いんです‼でも……」
「解ってるなら止めろ‼」
「なら、嫁ごうと思いません‼他の兄弟は皆、文官になり、姉妹はその妻として嫁いでいます。でも、私はそれが両親の優しさであっても……戦いを見せたくないと言うことであっても、現実に琉璃さまは戦い、孔明様や士元様は戦略を考えつつ、采配を振るう為に戦場に‼子龍将軍や令明将軍も‼それに、金剛様だって‼生きていく為に、虚しくても……一人の命を救う為に‼」
梅花は涙を流す。
「孔明様のあの姿にどれだけ傷つき、苦しみ、嘆き……自分の力のなさを嘆いてこられたのか……自分の弱さと愚かさに涙しました。甘さにも……それに、自分が本当に親に大事にされ、自分がどんな所で生きて、現実を見ないようにしていたのか、顔を背けて来たのかを身をもって知ったんです‼だから、尚更、自分は武家の人間に嫁ぐ、それを考えたんです‼」
「……馬鹿だな」
「馬鹿で良いんです‼」
「そんなんじゃない。誰もが逃げたい……そう願うのに、あえて立ち向かう。そんな強さを持った娘に現実を伝えようとしない子仲どのだ」
「父は、馬鹿ではありません‼」
キッと睨む。
「私は、父と母の娘で良かったと思っています‼それが自慢です‼例え、兄弟に比べてとろ臭くて、筋肉馬鹿で単純でも、両親は私を大切に育ててくれました。五体満足‼体力だけですが、それが私です‼だから、ちゃんと自分は選んだんです‼その決意もあって、ここまで来たんです‼金剛さまの両親に挨拶をするためです‼……あ、ついでに、孟起将軍と筋肉対決‼」
「ついでかよ……あははは‼馬孟起は頭は今一つだが、名将だぞ?それがついで‼」
大爆笑する士元。
と周囲の笑い声の間に、
「これが、嫁……微妙……」
「金剛さまの嫁ですが、何か?」
振り返ると、ブラーンっと下の息子を首にぶら下げた男。
孔明程長身ではないが、子龍、令明に負けない巨漢である。
「あー、一応、金剛の父親なんだが……」
「似てなくて良かったです‼金剛さま美男子‼……父親?」
首を傾げ、その横にいる金剛を見る。
「父親?これ、これ?えぇぇぇ?」
「そう。一応実の父、だったり……アハハ」
「似てない‼オジサン‼オジサンです‼どうしましょう‼益徳叔父上の方が、筋肉にときめくのです‼」
「いや、筋肉は良いから……」
「じゃぁ、子龍将軍や令明将軍位、威厳があったら良かったのに~‼」
少女の一言一言に撃沈する孟起。
金剛は、慌てて、
「この人が私の母。雲母。弟の承は孔雀って言うんだって」
「きゃぁぁ‼琉璃さまに負けない美女‼それに、可愛い~‼……あ、忘れてました‼」
はっと我に返った梅花は、丁寧に頭を下げる。
「申し訳ございません。私は姓は糜、名は梅花。父は子仲と申します。よろしくお願い申し上げます」
金剛の家族と、新しい家族との出会いであった。
孔雀は孔雀石からとりました。
マラカイトと言うと分かりやすいと思います。
グリーンの縞模様が美しく、綺麗な石です。
昔は青丹と呼ばれて、顔料や絵具に利用されていました。
銅を含んでいて、石言葉は危険な愛情だそうです。




