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第二十話 ただいま、ミステイク

 翌朝。

 俺たちは再び迷わずの森へ入った。

 今度は六人だけだ。

「楽だな」

 思わず口から出た。

「何がでしょう?」

 マインが聞く。

「移動」

 昨日はガレスたちに合わせて慎重に進んだ。

 今日は違う。

「ちょっと走る?」

「御意」

 地面を蹴る。

 木々が後ろへ流れていく。

 速い。

 やっぱりこれだ。

 サラは翼で飛ぶ。

 エルは浮遊魔法。

 夏とマインもそれぞれ移動能力を使う。

 マジカは四本の脚で森を駆ける。

 途中で魔物を何体か感知したが、近づいてこなかった。

「昨日より少なくない?」

「避けられているのでは?」

 夏が言った。

「俺たちが?」

「はい」

「何で?」

 誰も答えなかった。

 徒歩なら1日は掛かる道のりが、驚くほど短時間で終わる。

 やがて木々の向こうに巨大な外壁が見えてきた。

 ギルドハウス《ミステイク》。

「帰ってきた……」

 門をくぐる。

 妙に安心する。

 豪華すぎる広間も。

 無駄に長い廊下も。

 ゲーム時代にはただの背景だった装飾も。

 今では家に見える。

「ただいま」

 何となく言った。

 五人が一斉にこちらを見る。

「お帰りなさいませ、あるじ様」

「いや、みんな一緒に帰ってきたじゃん」

 マインが微笑む。

「それでも、ここはあるじ様がお造りになられた場所ですから」

「作ったっていうか……」

 課金とイベント報酬と素材集めの結果なんだけど。

 まあいい。

「今日は一回、ちゃんと話そうか」

「お話、でございますか?」

「これからどうするか」

 五人の表情が変わった。

 そんなに重大な話のつもりではなかった。

 でも。

 考えなければならない。

 俺たちは元の世界へ戻れるのか。

 戻る方法はあるのか。

 そもそも、ここはどこなのか。

 何も分からない。

 ただ一つ。

 俺自身は。

(せっかくなら、この世界を見てみたい)

 そう思っていた。

 元の世界へ帰りたくないわけじゃない。

 でも帰る方法も分からないのに、ここへ閉じこもっていても仕方ない。

 知らない街。

 知らない国。

 知らない種族。

 ゲームではない、本物の異世界。

 少し楽しみだった。

「その前に」

 腹が減った。

「飯にしよう」

 マインたちがずっこけそうな顔をした。

「大事な話は?」

「飯の後」

 食堂へ向かおうとして、ふと思い出す。

「あ」

「どうされました?」

「倉庫」

 まだまともに確認していない。

 転移直後は状況把握で精一杯だった。

「飯の前にちょっと見るか」

 地下倉庫。

 扉を開く。

「うわ……」

 ゲーム時代そのままだ。

 素材。

 武器。

 防具。

 ポーション。

 イベントアイテム。

 使わなくなった装備。

「こんなの持ってたっけ?」

 記憶にない物まである。

 MMOを何年もやっていれば、こうなる。

 いつか使う。

 何かに必要かもしれない。

 捨てるのはもったいない。

 結果。

 倉庫の肥やし。

 棚を見て回る。

「これは……」

 五つの小さな石箱。

 開ける。

「あー」

 思い出した。

「あるじ様?」

「召喚獣だ」

 五人の視線が集まった。

「召喚獣、でございますか?」

「ゲームのイベントとかで貰ったやつ。全然使ってなかったけど」

 五つ。

 ちょうど五つ。

 俺は石を並べる。

「せっかくだし、呼んでみる?」

 魔力を流した。

 五つの石が同時に光った。

 光が膨らむ。

 形になる。

 一体目。

 蜘蛛の下半身を持つ女――アラクネ。

 二体目。

 石の翼を持つガーゴイル。

 三体目。

 半透明の小さなスライム。

 四体目。

 氷で作られた巨大なゴーレム。

 五体目。

 巨大な斧を背負ったオーク。

「懐かしいな」

 そう言った瞬間。

 五体が一斉に俺の前へ跪いた。

「召喚に応じ参上いたしました、我が主」

「……」

 喋った。

「あるじ様?」

「いや」

 マインを見る。

「こいつら、ゲームじゃ喋らなかったんだけど」

「そうなのですか?」

「うん」

 五体を見る。

 全員、俺を見ている。

(また増えたな……)

 この世界。

 どうやら俺が思っている以上に、色々と面倒なことになりそうだ。

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