第十六話 森の王は誰だ
「森ノ……王ヨ」
「……はい?」
何を言っているんだろう。
俺は後ろを見る。
マインたち。
ガレスたち。
全員こちらを見ている。
「俺?」
老ゴブリンが首を振った。
「違ウ」
「違うんかい」
思わず突っ込んだ。
「王、逃ゲタ」
「逃げた?」
「オ前タチ、来タ。王、逃ゲタ」
少しずつ意味が見えてくる。
「もしかして……森の王っていう別の魔物がいる?」
老ゴブリンが何度も頷いた。
「大キイ。強イ。王」
「それが俺たちを見て逃げた?」
「六ツ。強イ。王、勝テナイ。逃ゲタ」
「……」
横を見る。
「マイン」
「はい」
「俺たち、何かした?」
「何もしておりません」
「だよな」
「はい」
何もしてない。
転移してきた。
外へ出た。
それだけだ。
「……それで逃げたの?」
「そのようですね」
何とも言えない。
老ゴブリンはさらに説明を続ける。
森の王。
巨大な獣。
長い間、深部に君臨していた存在。
ゴブリンたちはそれを恐れ、縄張りへ近づかなかった。
しかし三日前。
俺たちが現れた。
そして森の王が縄張りを捨てた。
「なるほど……」
「何を話してる?」
ガレスが聞いてきた。
まずい。
「えーっと……」
どう説明しよう。
「この者たちは、三日前に森の深部で大きな異変が発生し、それによって森の王と呼ばれる魔物が縄張りを移したと申しております」
マインが答えた。
完璧だ。
「そう、それ」
「その異変とは?」
バルトが聞く。
「詳細までは分からないようです」
マインが平然と答える。
嘘ではない。
核心を言ってないだけだ。
(マイン、こういうの上手いな……)
「それで」
俺は老ゴブリンを見る。
「俺たちを囲んだ理由は?」
老ゴブリンが顔を上げる。
「里」
「里?」
「奪ワレタ」
「誰に?」
「王」
「あー……」
何となく全部つながってきた。
森の王が逃げた。
逃げた先にゴブリンの縄張りがあった。
ゴブリンが追い出された。
「助ケテ、欲シイ」
老ゴブリンが頭を下げる。
後ろ。
三百を超えるゴブリンたちも、一斉に頭を下げた。
「……」
これ。
(結構、俺たちにも責任あるよな)
俺たちが来なければ、森の王は移動しなかった。
多分。
「分かった」
「おい」
ガレスの声。
「ちょっと見てくるよ」
「待て待て待て!」
ガレスが俺の肩を掴んだ。
「お前、今までの話を聞いてたのか!?」
「聞いてましたよ」
「こいつら三百以上を追い出した魔物だぞ!」
「そうですね」
「しかも森の王だ!」
「そうらしいですね」
「何で行くって結論になる!?」
何でと言われても。
「困ってるみたいだし」
「……」
「できる範囲でですけど」
ガレスが絶句した。
マインたちを見る。
全員、当然のような顔をしている。
「お前らも止めろよ!」
「なぜでしょう?」
マインが首を傾げた。
「なぜって……」
「あるじ様がお決めになったことです」
ガレスは頭を抱えた。




