一向宗との戦い
「殿、一向宗徒が尾張の西で蜂起したようです」
「じゃあ滝川一益を向かわせて鎮圧してちょーだい」
………
「殿、今度は一向宗徒が美濃の東で反乱を起こしましたぞ」
「じゃあ柴田勝家を向かわせて蹴散らしちゃってくれる?」
………
「殿! 美濃の西で、またしても一向宗徒が蜂起しています」
「じゃあ森可成に鎮圧するように伝えてちょーだい」
「殿、今度はまた尾張の西で一向宗徒が……」
「あーもうっ! なんでこんなに何度も何度も湧いて出てくるのよ。ほーんと、IKKO宗徒ってムカつくわね。アイツら、人差し指を左右に振りながら、『どんだけ〜』とか言って攻めてくるのよね。近頃はやたらと『背負い投げ〜』とか言って攻めてくるらしいじゃない。ちっとも面白くねーっつーの」
「殿、何か勘違いをされているようですが」
「何よ、恒興。オカマのメイクアップアーティストが集団で攻めてくるんじゃないの?」
「言っときますけど、一向宗って『IKKO宗』じゃないですからね。誰が人差し指を立てて『どんだけ〜』なんて言って攻めてくるんですか。そんな宗教、あるわけ無いでしょ」
「あら、そうなの? アタシはてっきり『IKKO宗』かと思ってたけど」
「違いますよ。一、ニ、三の『一』に、『向かう』っていう字を書いて、『一向宗』ですから」
「なるほどー。だから一人になっても諦めずに向かって来るわけね。道理でしぶといわけだわ」
「一向宗の一向って、一人になっても向かってくるって意味じゃないですけどね」
「しかも、叩いても叩いても一向に減らないし」
「一向宗の一向って、そういう意味でもないですけどね」
「それにしてもさー、この一向宗の反乱ってどうにかなんないわけ? 叩いても叩いてもキリが無いじゃないの。モグラ叩きかよ」
「モグラ叩きですか。懐かしいですね。昔はゲームセンターに置いてあったりしましたけど、最近はまったく見かけませんね」
「最近じゃ、見かけたとしてもワニワニパニックくらいね。まぁモグラ叩きもワニワニパニックも、出てきた頭を叩きまくるっていうコンセプトに変わりは無いけどね……って、そんなのどっちだっていいじゃないの」
「アンタが言い出したんだろ」
「そんな事より、恒興。いったいどうしたら一向宗の反乱を無くすことが出来るのかしら」
「一向宗の反乱を無くすと言われても……。一向宗が無くならない限り、どうしたって信者は増えていきますからね。そう簡単には……」
「そうなの? おのれー、IKKOめ。本名は豊田一幸のくせに」
「だから人違いだって言ってんだろ。それに本名なんてどうでもいいですよね」
「ま、べつに1辛なんて大したことないわ。さすがに10辛はキツいけど」
「人の話を聞いてます? なんでCoCo壱番屋のカレーの話になってるんですか。1辛じゃなくて一幸ですからね」
「そういえば一幸で思い出したんだけどさ、アタシ、前世の就職試験で福岡幸一っていう人と面接したことがあってさ……」
「前世の就職試験?」
「そう。当時アタシはATT学院っていう学習塾を就職先にエントリーしててさ、その学院長が福岡幸一っていう人だったのよ。で、就職試験の最終段階で学院長と面接したのよ」
「はぁ……」
「当時はまだ若い感じに見えたたけど、さすがに貫禄があって、見るからにやり手だったわね。『やっぱり人の上に立つ人ってオーラがあって、持ってる器が違うんだな』っていうのを感じたわ。何を話したかは全く覚えてないんだけど、その印象だけは今もハッキリ残ってるわね。今は自ら企業したコンサル会社の社長をしてるみたいだけど」
「えーっと、いったい何の話をしてるのか分からないうえに反応にも困りますね。そんなの聞かされて、どう答えればいいんですか」
「べつにリアクションなんか求めてないわよ。ただリアルな思い出を語りたくなっただけよ」
「しかも実名で、ですか」
「べつにディスってるわけじゃないし、むしろ褒めてるんだから問題ないでしょ」
「本当に見境がなくなってますね」
「ま、思い出話はこのくらいにしとくわ。それよりそろそろ本題に戻って、どうやって一向宗を無くすかを考えないとね」
「どう考えても一向宗を無くすなんてできませんよ」
「出来るわよ。一向宗の総本山ってどこ?」
「一向宗の総本山は、石山本願寺ですね」
「だったらその石山本願寺を無くしちゃえばいいのよ。そしたら信者の拠り所が無くなって、後は自然消滅するのを待てばいいじゃない。スズメバチの巣をぶっ壊したらスズメバチが居なくなるのと同じ理屈よ」
「そう簡単に無くしたり、ぶっ壊したりできないと思いますが」
「別にいいのよ、それならそれで。『アタシに歯向かったらタダじゃおかないわよ』って、全国に知らしめる事が重要なんだから。そしたらみんなビビって、アタシに歯向ってくる人は居なくなるんじゃないかしら。でもそうすると、アタシへのお土産にハムを買ってくる人も居なくなっちゃうわね。なんちゃって」
「なるほど。今のは『歯向かう』と『ハム買う』を掛けているんですね」
「ちょっと恒興。冷静に分析してないで少しは笑いなさいよ」
「はぁ……」
「ていうか、一向宗の総本山って石山本願寺だったの? 知らなかったわー。アタシ、てっきり比叡山の延暦寺だとばっかり思ってたんだけど。信長って一向一揆に業を煮やして、総本山の延暦寺を焼き払ったんじゃないの?」
「延暦寺を焼き払う? そんな罰当たりな事、誰にも出来っこありませんよ。それに、信長とは殿のことではありませんか。いったいさっきから何を訳の分からないことを……」
「あ、恒興は気にしなくていいわよ。こっちの話だから。早い話が、一向一揆ってバックには一向宗のお坊さんが付いてるってこと?」
「まぁそういう見方もできますね」
「そっかー。くそー。たかが坊主のくせにロクな事しないわね。坊主は屏風に上手に坊主の絵を描いてりゃいいのよ」
「それ、ただの早口言葉じゃないですか。実際には屏風に坊主の絵を描く坊主なんていませんから」
「笹刺す猿、笹刺さる猿、笹刺さる猿さする猿!」
「あーあ。大谷健太のネタを丸パクリしちゃったよ、この人」




