敵陣?
「ルーフ…どういう状況かしら?」
ルーフは広間のような所におり、周りには数人が倒れている。
「さっき伝えた通りだ。変わりない。リーナこそ、また新しい事をしたのか?……俺の知っている物にも思えるが。」
ルーフは、リーナが顔を出している扉を見る。
「あ、うん。ま、それは置いといて…。騎士団の皆さんも手伝ってくれる事になったから、簡単に移動でき無いかな~と思ってやってみたら出来ちゃった。」
「騎士団か…そんなかからないと思うぞ。あの女は、近くにいないようだし。」
「関係はありそうなの?」
「ああ。匂いが残っているからな。」
「そう。」
「とりあえず、俺が#扉__そこ__#から帰ればいいか?」
「雨との関連も調べたいのだけれど…。」
「そうなのか?」
「ええ。」
「リーナ。」
ルーフとサリーナが話していると、後ろからサリーナの名が呼ばれる。
「そろそろ、いいか?」
「お父様…。」
「私も行きたいが、仕事が残っているのでな…。アイザック殿下と騎士団に任せる。リーナも気をつけるんだぞ?」
「はい。…ザック様、皆さんどうぞ。」
サリーナは、扉を大きく開き皆に通る様、促した。パールとアルが通り、それに続いてアイザックも扉を通ろうとするが、その後ろから誰も付いてこないのを感じ取り、振り返った。
「隊長、行きますよ。隊長!」
「あ、ああ…。聞いてはいたが、お前の婚約者殿は凄いな。」
「そうでしょう。可愛い俺の女神ですから。」
「そ、そうだな…。」
「さぁ、行きましょう。」
ハンス隊長と騎士団は、アイザックの後ろをついて扉を通った。
「ザック様。この方達、どうしましょう?」
サリーナは通ってきた扉を消しながら、ルーフが倒した人達を指す。
「隊長。」
「捕縛しろ!」
ハンス隊長は騎士たちに指示を出す。
「ここ以外の場所はどうなっているか分かるか?」
アイザックは、ルーフに声をかける。
“ここから、外には出てない。”
ルーフは騎士たちがいるからか、口には出さず、サリーナへ伝えた。
「ここから出ていないそうです。」
「そうか、分かった。俺は外を見てくる。」
「私も行きます。」
「いや、リーナはここにいてくれ。」
「……それなら、パールとアルも一緒にお連れくださいね。」
「分かった。隊長、行ってきます。」
「騎士も連れていけよ。」
「はい。」
ハンス隊長と数名の騎士を残し、アイザックと他の騎士は、部屋の扉を開け外に出ていく。それを見送ったサリーナは、広間を見渡した。
「魔力封じがあると言っていたわよね?」
“そうだな。”
「それらしきものは無いけど、確かに少し変な感じがする、かな?」
サリーナが呟くと、それを聞いていたハンス隊長がサリーナへ話しかけた。
「変な感じですか?」
「ええ。少し身体が重いように感じます。」
「私は何も感じません…。」
「ハンス隊長は、魔法を使用なさいますか?」
「はい、まぁ…少しですが。」
「1度使ってみてくださいますか?」
「分かりました。…………………………出来ません。」
「ありがとうございました。やはり、魔力は封じられているということですね。」
「そのようですね。」
「部屋自体に何かあるのかしら?…う~ん。ちょっと、部屋を出てみます。」
サリーナはハンス隊長へ断りを入れる。
「では、私も。」
部屋を出ても身体の重さは変わらない。
「この建物全体に魔力封じされているようですね。………もう少し外に近づいても?」
「何があるか分からない中で、それは許可いたしかねます。」
「私はルーフもいますし、問題ないと思いますよ。」
「しかし、魔力封じが。」
心配してくれるのはありがたい。
でも、ここの状況を知らないと……ザック様がいるから大丈夫か。
そう思ったとき、パールから話しかけられた。
“リーナ~。こっちに来れるかしら?”
「分かったわ。ハンス隊長、パールに呼ばれたので行ってきます。」
「そうですか…。それでは私もご一緒します。中の騎士に声をかけてきますので、少々お待ち下さい。」
「…はい。」
サリーナは、パールの魔力を辿ろうとして、ふと気づいた。
「あれ?そういえば、パールの位置がわからない…。」
阻害魔法が使われている?
でも、パールからの言葉は伝わる。なぜ?
………私達には、繋がりがあるから話す事には影響がないのか!
“パール!私、あなたの場所が分からないわ。”
“やっぱり。”
“やっぱり?”
“中では気配がなかったのに、外に出る扉まで来たら、うっすら外に気配があるのよ。それで、外を見ようとしたんだけど、窓から見える所には誰もいないし、扉も窓も開かないの。”
“この建物全体に魔力封じや、阻害魔法が使われているのね。”
“そうとしか考えられないわ。”
「お待たせいたしました。」
「ハンス隊長。この建物全体に何やら仕掛けがあるようです。魔力封じなのか、阻害魔法なのかは、断言できませんが…。」
サリーナは、ハンス隊長へ外の気配の事も伝えた。
「分かりました。…お前ら、敵が潜んでいる可能性がある!気を引き締めろ!」
ハンス隊長は、広間の騎士へ大声で指示した。
その敵に聞こえてしまうのではないかしら?……わざと聞かせている?
……………ま、いいか。
サリーナは考えることを放棄し、パールの元へ向かうことにした。
「ルーフ、パールの匂いは分かる?」
「ああ。こっちだ。」
ルーフが動き出し、その後ろをサリーナとハンス隊長がついていく。
自分達は地下にいたようで、階段を上がると玄関ホールへついた。そこにはアイザックや騎士たちの姿もある。
「ザック様。」
「リーナ。この扉とこの先に裏口の様な扉もある。外の気配は俺も言われて分かったくらいだ。」
「開かないのですよね?」
「ああ。外の状況もわからない。」
サリーナは考え込み、1つの結論を出した。
「………壊します?」
…「「「「「「………え?」」」」」」…
そこにいたアイザック以外の騎士がサリーナの言葉に驚きを隠せない。
「力任せにやると屋敷自体が壊れてしまう。」
「壊れて困りますか?」
「………いや、困らないか。」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ。」
サリーナとアイザックの過激な提案にハンス隊長が止めに入る。
「向こうの目的も分からないのに、それはやりすぎだろ!」
「リーナが誘拐されそうになったのですよ?」
「それはそうだが!」
ややこしくなるから、自分で防げた事は、今は口に出さないでおこう。
「あのー…」
騎士の一人が恐る恐る手を挙げる。
「どうした?」
「魔力封じがあるのでしたよね?屋敷が壊れるとか、どういう事ですか?そこまでの魔法をどうやって?」
サリーナとアイザックは顔を見合わせた後、その騎士に向き直り笑顔で答えた。
「問題ない。」
「問題ありません。」
私達は、裏口に移動した。
「さぁ、準備はいいですか?」
後ろを見ると、ザック様はじめ騎士たちが深く頷く。
話し合いの結果…というか、ハンス隊長にお願いされ、穏便にドアを開けることになった。
この状況でどこまで正確に出来るかは分からないし、やったことはないけど…。
サリーナは、指先からレーザーの様な、電気の様な、光の線を出した。それで、静かにドアノブの周りを焼き切っていく。
ドアノブは取れたけど、ドア開くかな?
サリーナは、ドアノブを取った穴に手を入れ、そっと引いた。
開かない…。
押してみよう。………駄目だ。
「リーナ。開かないのか?」
「そうなのです。」
「変わろう。」
「お願いします。」
サリーナがアイザックと変わり、後ろへ下がる。
「少し強めに行きます。」
「…」
アイザックは、ハンス隊長に声をかけたが、返事はない。
…どうしたのかしら?
サリーナもハンス隊長を見ると、瞬きもせずに固まっている。その後ろの騎士達も同様だ。
「ハンス隊長?」
「またか…。隊長!隊長!」
「……あ、ああ。すまない。」
「いい加減、慣れてください。」
「そんなにすぐには慣れない…。」
どういうことかしら?ザック様は、分かっているようだけど…。
「ドアを少し強く引きますよ。」
「分かった。おい、お前達!行くぞ。」
ハンス隊長が、後ろの騎士達に声をかけると、騎士達も我に返り、返事をした。
アイザックは、ドアを勢いよく押した。
バコッ!
ドアは凹み、開いた。
それと同時に、サリーナの身体が軽くなる。
「魔力封じが解除された様ですね。」
「ああ。身体が軽いな。」
「あちら様も、沢山いらっしゃったのですね。」
「そうだな。」
魔力封じが解除され、魔力の気配も感じ取れるようになった。
姿は見えないが、魔力で相手の場所も分かる。
「出てきてもらおうか?」
アイザックが話しかけるが、返事はない。
「何がしたいのでしょうか?」
「バレていないと思っているのかもな。」
「うーん…。」
“俺が行く。”
“僕も~。”
“私もよ。”
「ザック様…。3人がやる気です。」
アイザックはそれを聞き、隊長をちらりと見る。目があったハンス隊長は頷きで返した。
「やり過ぎないように頼む。」
「…ですって。」
それを聞いたルーフ、アル、パールは、すぐに行動に移す。
「ぎゃー!」
「うわー!」
「やめろー!」
所々で声が上がり、隠れていた者たちが姿を現していく。
こちらの倍の人数がいるかしら…。
姿が見えたら、騎士達が捕縛の為に動く。相手は魔法も使ってきているが、サリーナとアイザックがバリアで防ぎ、騎士たちには当たらないようにしている。
あっという間に、こちらの倍いる敵の捕縛が終了した。
「さぁ、説明してもらおうか!」
ハンス隊長が敵のリーダーと思われる人物に話しかけた。
「さぁ、どういうことが説明してもらおうか!お前達は何を企んでいる?スウィーティー様をどうするつもりだった?」
ハンス隊長がリーダーらしき男に話しかけるが、答えは返ってこない。
「この雨と関係があるのだろう!?」
やはり、答えは返ってこない。
「…隊長。」
アイザックに名前を呼ばれたハンス隊長は、何かを察し話題を変えた。
「それでは、話を変えよう。…アイランという娘を知っているか?」
無言だった男は、その言葉を聞くと、ハンス隊長を睨みつけ声を荒らげた。
「聖女を呼び捨てるな!!!」
叫んだ男だけではなく、他の者達も鋭い視線をこちらへ向けている。
………聖女?
「聖女とはどう言うことだ?!」
「ふん!」
それから、再び男達は口を閉じた。
「ザック様。私、嫌な予感がするのですが…。」
「リーナもか?俺もだ。」
アイランの魔力は………見つけた。
「ザック様。」
「リーナ。」
サリーナと同様、アイザックもアイランの魔力を感じ取ることができたようだ。
「隊長。ここは、お任せします。俺達は…」
「気を付けろよ。」
“パール。ここを頼んでもいいかしら?”
“もちろんよ。この人達の魔法から騎士団を守ればいいのでしょ?封じておくから、大丈夫よ~。”
“ありがとう。お願いね。”
“まかせて~。”
「ザック様。パールが残ってくれます。」
「そうか。ありがとう、パール。」
アイザックとサリーナは、パールを一撫でし、ルーフとアルを連れて、アイランの元へ向かおうと足を踏み出した。
「あ、扉…。王城と繋げておきますか?」
サリーナは振り向き、ハンス隊長へ問いかけた。
「それは、有り難い。騎士団へ繋ぐことは可能ですか?」
「行ったことがあるので、たぶん。」
サリーナは、扉を作り出し、向こう側を覗いた後、ハンス隊長に確認を求めた。
「繋がったかな。どうでしょうか?」
「失礼いたします。……確かに、騎士団で間違いございません。ありがとうございます。おい!団長へ伝えてこい!」
ハンス隊長は騎士の一人に指示を出した。
「では、行こうか。」
「ザック様。扉を1度に2つ出すとどうなるか分かりませんので、飛んでいくのでよろしいですか?」
「俺も、そのつもりだったよ。リーナに負担はかけられない。」
「ザック様…。ありがとうございます。」
サリーナとアイザックは、今度こそアイランの元へ向かった。




