アルのお嫁さん
戦いの結果…ルーフが勝った。
「ルーフ、お疲れ様。」
「ああ。でも、圧勝とまではいかなかった。」
「いやいやいやいや、怪我せず勝ってんだから圧勝だろう!?」
見ていた黒豹からツッコミが入る。
「それでは、ザック様。今度こそ帰りましょうか。」
「そうだな。リーナ、明日はどうするんだ?」
「そうですね。どうしましょう?」
「私は行きたいわ。」
「俺もリーナと戦いたい。」
サリーナ達は、明日森の訓練場へ行くかどうか話しながら動き出した。
「兄貴!」
「パール!」
「「俺も連れて行ってくれ~。」」
黒狼と黒豹が後ろから追ってくる。
「俺はお前の兄貴になった覚えはないが。」
「俺より強いんだから、兄貴だ!何処までも付いていくぜ!」
「いらない。」
「黒豹、貴方も帰りなさいよ。」
「俺はパールに番になってもらうまで帰らない。」
「番になったら帰るの?」
「帰らない。ずっと一緒にいるに決まってるだろう。いや…番になってくれるなら、譲歩はする?」
「…リーナ。早く行きましょう。」
「良いの?」
「逆に聞くわ。どこに駄目な要素があるの?」
私とザック様は顔を見合わせて頷いた。
「それでは、行こうか。」
「はい。」
私達は飛び立った。もちろん、ルーフとパールに魔法をかけるのを忘れない。
「ええー!そんなんありー!?」
「兄貴ー!!!」
黒豹と黒狼の二匹は地上で叫んでいる。
黒豹くん、どうするかしら?
男の見せ所よ!
「リーナ。アルには?」
「そうでした。」
“アル。帰るわよ~。”
“は~い。”
少し経つと、アルが合流した。
知らない鷹と一緒だ。
「アル、その子は?」
「可愛いでしょ?僕のお嫁さん!」
サリーナの飛ぶ精度が乱れた。それをアイザックが支えて飛ぶ。
「………ごめんなさい。聞き間違えたかしら?今、お嫁さんと言った?」
「うん。さっき見つけちゃった。」
「『見つけちゃった』って、アル…。」
「『来る?』って言ったら、『来る』って!」
「ザック様、どうしましょう…。」
「とりあえず、降りて話そう。」
「はい。」
「ルーフとパールもいいかな。」
2匹も頷いた為、森に降りた。
「パール!」
「兄貴!」
「「戻ってきてくれたのか!」」
飛び立った場所から、離れていた筈…。
2匹も追いかけてきていたのね。…ま、その位の根性がないとパールは任せられないけど。
「しつこいわね。」
「俺は兄貴じゃない。」
パールもルーフも迷惑そうだ。
しかし、話はこちらが先!
「アル、本気で言っているの?」
「もちろん!」
「貴方も本当に良いのかしら?」
「はい。強い方と結ばれる、とても幸せ。」
女の子の鷹は目が細くなり、笑っているように見える。
「そう。」
それより、魔獣の話せる率、高くない?
「お話が上手ね。」
「魔力ちょっと強い、話せる。」
「なるほど。」
薄々感じていたけど、そういう事だったのね。
「ザック様。私は合意の上なら良いと思うのですが、同居か、別居か。別居だと聞こえが悪いかな?週末婚とか?どう思います?」
「週末婚?」
「普段はそれぞれの生活をし、週末だけ一緒に暮らすのです。」
「そのような風習があったんだな。」
「はい。…あ、そもそも魔獣の婚姻生活がどういうシステムか分かりません。」
「リーナ、落ち着いて。今後の事は父さんや公爵を含めて話そう。リーナの元に魔獣が増えるという事になるから、対策をたてないと。」
「そうですね。分かりました。」
「アル、それから…何と呼べばいいんだ?」
「お嫁さん?」
「で、いいのか?」
私とザック様の問いかけに二匹は頷く。
「ところで、あれはどうなってるの?」
アルの視線の先には、ルーフと黒狼、パールと黒豹がいる。
「黒狼くんは置いておいて、黒豹くんはパールの気持ち次第ですよね。」
「あとは、黒豹の頑張りも必要だな。俺みたいに。」
ザック様がこちらを見ていった。
そういえば、私の好みを聞いて、それに近づく努力をしていてくれたんだよね。
「私は幸せものですね。」
「俺も幸せだ。」
私達は微笑み合う。
じー
ん?視線を感じる。
周りを見ると六匹から注目されていた。
「帰りましょうか。」
「そうだな。」
私達は、今度こそ帰路へついた。
◇
「そうか。」
帰ってお父様と話をした。
パールとザック様も帰らずに一緒にいる。
「うちで一緒に暮らしても良いのでしょうか?」
「うーん…アルはどうしたいと?」
「え?僕?僕は皆で仲良くできればいいよ~。」
「なるほどな。…はっきり言うと、我が家では、そちらの子と契約をする事は難しい。しかし、アルの番としては問題ないと思う。」
「契約するとかは考えてなかったよ。ね!」
「はい。アルの近く、いれればそれで良いです。」
「ねぇねぇ。裏の森に家作ってもいい?」
「家?」
「そう。お嫁さんとの。」
「お父様、どうですか?」
「それは構わないが、安全面ではどうだろうか。」
「私、魔獣。心配ない。」
「しかし、森の奥とは違う危険もあるのだよ。」
「お父様。やはり、我が家に…」
「大丈夫。私、木の上好き。結界張れる。」
「結界?…張れるの?」
「できる。」
「分かった。裏の森の好きな所を使っていい。…アル。」
「ん?」
「リーナの事もそうだが、お嫁さんを大事にな。」
「もちろん!」
「アル。それから、お嫁さん。おめでとう。これからよろしくね。」
アルとお嫁さんは、微笑んでいる。
「リーナ、ありがとう。」
「お父様、今日くらいは家の中で過ごしてもらってもいいですよね?」
「あ、リーナ。僕達すぐに家造りを始めるよ。」
「え?そうなの?」
「うん。また明日ね。」
「え、ええ。」
そういうと、アルとお嫁さんは窓から飛び立っていった。
「寂しい…。」
「リーナ?」
「子供が結婚する親の気持ちだわ…。」
「ははは、そうか。」
「お父様、嬉しくも寂しいものですね。」
「そうだな。…さて、陛下にも一応報告だな。『アルに嫁ができた。』とだけ伝えておくか。詳しくはアイザック殿下よろしくお願いいたします。」
「分かりました。」
「リックもそろそろ帰るだろう。アイザック殿下、夕食をご一緒にいかがですか?」
「ありがとうございます。お言葉に甘えます。」
そういえば、あの2匹のことを話していない。
「ねぇ、お父様。あと2匹こっちに来るかも。」
「何がだ?」
「魔獣。」
「…詳しく話してくれるか?」
私はお父様へ黒豹と黒狼の事を話す。
「そういうことか。」
「本当に来るかどうかは何とも言えませんが。」
「黒豹は分からんが、黒狼は来るだろうな…。魔獣の特性上、強いものに付き従う。」
「それなら、来るなといえば来ないのでは?」
「言い方や捉え方もあるだろう。1度自分の弟分だと認めた上で言っていたなら来なかったかもしれん。」
「…アイツを弟分とか、面倒くさい事この上ない。」
ルーフが肩を落とす。
「口だけでもいいと思うが。」
「それは…いくら面倒くさいやつでもしてはいけないと思う。」
「ルーフ…。貴方、格好いいわ。」
サリーナはルーフを抱きしめた。それを見たアイザックが眉をピクリと動かした。
「あら、アイザックくん。ルーフにまでヤキモチ~?」
パールの言葉にサリーナは驚き、アイザックを見た。
ルーフ相手にヤキモチ?
アイザックは何も言わない。
「そうなのですか?」
アイザックはそっぽを向き、耳を赤くしながら口を開く。
「そんなことは……………ある。」
「まぁ、ザック様!ザック様も、もちろん格好いいですよ。今日なんて、何回触りたいと思ったか。」
「さわっ!?」
そっぽを向いていたアイザックは、勢いよくサリーナを見る。顔は真っ赤だ。
「リーナ、貴方結構大胆ね。」
「何が?」
「分からないの?」
パールの言葉で今までの会話を思い返してみる。
「…!…あ、あの、そ、うではなくて…いや、ん?ちがくもない?とにかく、え~と…」
私が狼狽えていると、お父様が呆れたように言った。
「リーナ、夕食後にしなさい…。」
な、何を!?
「アイザック殿下、食事の用意はさせています。こちらへどうぞ。」
「あ、ああ。ありがとうございます。」
アイザック様はお父様へついていき、私はその後ろをついていく。
夕食後に『改めて話をしなさい』と言うことよね?そうよね?まさか、ザック様を『触るのは後にしなさい』って事ではないわよね?……もう、私のバカ…恥ずかしい。




