面倒臭い奴
サリーナ達がパールの将来を話している中、ルーフは黙々と歩いていた。
「強い魔力が近づいてきたな。ん?1つではない…複数いるな。」
ルーフの後ろからやってきたサリーナ達もそれを感じていた。
「魔力のバラツキがあるわね。」
「アイツ等、群れでいるからな。」
「群れで?」
「ああ。」
“リーナ!もうちょっとで来るよ。10時の方向からた~くさん!”
空から見えたのだろう。アルが教えてくれる。
「ザック様。アルからです。『10時の方向からたくさん。』だそうです。」
「分かった。」
私達はそちらへ集中し、魔力の動きを追う。
「左右へ別れたな。」
「はい。私達を囲む為でしょうね。」
「なぁ…アンタ達、冷静すぎないか?」
「そんなことないわよ。」
「そうは見えないけど?」
「そう見えたら、相手の思うツボだろ?」
「ふーん。」
「『感情は見せないように、いつも笑顔で』よ。」
「人間って皆そうなの?」
「皆では無いけれど、そう教育されているから。」
王族やその伴侶となるものは、特に…。
「囲まれたが、動きはないな。」
「おい、黒豹!こいつら喧嘩っ早いんじゃなかったのか?」
「その筈なんだけど。流石に様子を見てるんだと思うよ。強い魔力を持つ奴ら、しかも複数なんて、警戒するなっていうのが無理でしょ。」
「チッ!」
ルーフが舌打ちをした。
その時…
「おい!テメェが何でここにいる!」
黒い狼が現れた。
見ているのは、黒豹の事だ。
「あ~。俺、番を見つけちゃったのよ。その子の後に付いてきただけ~。」
「まだ番じゃないわよ!」
「『まだ』ってことは、今後そうなるかもしれないってことだね!?」
「ちがっ、」
「良かった!誰よりも幸せにするよ!」
「だから、」
「こっちを無視すんな!」
黒豹とパールが話し、黒狼を無視する形になった事が、黒狼は我慢ならなかったのだろう、黒豹へ怒鳴った。
「うるさいな。そうだ。こいつが力比べしたいんだってさ。よろしく!それじゃあ、パールは俺と交流を深めよう!」
黒豹はルーフを黒狼へ紹介し、すぐにパールに向き直った。
「嫌よ。私も自分の力が知りたくてきたの。」
「んー、じゃあ、俺と戦おう!俺が勝ったら番になってね。」
「え?嫌!」
「え~!俺、結構強いよ?それに、優しくない?お買い得だと思うんだけど。」
「自分でお買い得とかいう奴、好きではないわ。」
「雌豹、お前とは意見が合いそうだな。」
黒狼がパールに声をかけると、黒豹が声を荒らげた。
「は!?パールは俺が口説いてんだから、話してんじゃねえ!」
黒豹くん…口調が変わっているわ。
「…喧嘩っ早いのは貴方ではないの。」
パールが黒豹から少し離れながら言った。
「あ~、離れていかないで~。番にしたい子に横からちょっかい出されたら、誰だって怒りたくなるでしょ?ね!男の主殿!」
黒豹はアイザックに同意を求める。
「まぁ、そうだな。」
「ほら!ね!俺は普通!」
何か…力比べをする雰囲気ではないわね。
「ルーフ。今日は…」
サリーナは、黙ったままのルーフに声をかけた。
「はぁぁぁぁぁ…。」
ルーフは、とてつもなく大きな溜息をついた。
「もういい。帰ろう…。」
これは、落ち込んでいるわね。
そうだ!
「ルーフ。明日、森の訓練場で私と手合わせしましょう。」
「リーナと?」
ルーフは、呆けた顔をしている。
「ええ。したことないでしょ?」
「リーナ。いくらなんでも、それは危険じゃないか!?」
焦ったようにアイザックが止めにはいる。
「そうだ。怪我でもしたら。」
我に返ったルーフも、否定的だ。
「バリアを張っておくわ。」
「…リーナ、本気か?」
「ええ。危ないと思ったらやめますから。」
「…分かった。俺も行く。」
「え?ザック様もですか?」
「ああ。念の為、明日も休みを取っているし、問題ない。」
「おいおいおい!止めないのか?」
ザック様の言葉に驚いているのは黒豹だ。
「知らないところで何かあるより良い。」
「さすが、ザック様。話がわかりますね。それでは、今日は帰りましょうか。」
「分かった。」
ルーフは素直に頷く。
「パールとアルも行きましょうね。」
「「は~い。」」
私達が帰ろうと話をしていると、黒狼が声をかけてきた。
「ちょっと待て。力比べに来たんだろう?面白そうだから、相手してやるよ!」
「いや、遠慮する。」
「は?」
「お前達とやるより、リーナとの方が楽しそうだ。」
「ふん!そんな人間より強いぞ?」
「………そうか?」
「何だ、その返事は!」
さっきまで興味なさそうだったじゃないの。
これって、あれね。引かれると気になるやつ。なんて言うんだっけ?天の邪鬼みたいな…。
ま、いいか。
「ルーフ。その気になってくれたんだし、戦っていったら?」
「…」
「どうしたの?」
「こいつも面倒くさそうなんだが…。」
こいつも?
「森にはこんな魔獣しかいないのか?」
あー、なるほど。
ルーフの中で黒豹くんも黒狼くんも『面倒くさい』のね。
「ねぇ~、帰るんじゃなかったの~?」
なかなか動かない私達を気にして、アルがそばにやってきた。
「アル。ごめんなさい。少し待ってね。」
「う~ん。じゃあ、その辺飛んでるから、帰るときに言って。」
「分かったわ。」
アルは、戦いに興味はないのね。
「空のお散歩~。いってきま~す!」
そういえば、来るときに『ピクニックみたい』って…。
「それで、ルーフもパールもどうするんだ?」
「私は、もういいわ。」
ザック様の問いかけに、パールは疲れ気味に答える。
「ええー。もう帰るの!?」
「少し静かにしてもらえる…?」
「パール、俺と戦おう!そして、俺が勝ったら番になろう!」
「さっきも嫌だといったでしょ!」
「でもさ~」
このやり取り…また、始まってしまった。
「ルーフは?」
「面倒くさい…が、気にはなるな。」
「では、リーナの言う通り。せっかくだから戦って来たらどうだ?」
「…」
1回断った手前、素直になれないのかしらね。
「ルーフ。」
「何だ?」
「勝ったら、貴方の好きなお肉を奮発してもらう様にお父様へ話してあげるわ。」
「行ってくる。」
ルーフは、黒狼の前に進み出た。
「お!やる気になったな!」
「肉の為にな。」




