表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/46

パールと黒豹

「どういうことかしら?」


パールの顔が引きつっている…様に感じる。


「聞こえなかった?マイスウィート。」


黒豹は機嫌の良さそうな声で再びパールに話しかけた。


「聞こえているわよ。何故、私をその恥ずかしい呼び名で呼ぶのか聞いているのよ。」


恥ずかしい呼び名…パール、はっきり言うわね。


「一目惚れっていうの?君を見た瞬間に、『俺の番は、この子だ!』って思っちゃったんだよね~。」

「迷惑も良い所ね。」

「つれないところも俺好み!」

「は!?」


パールの物言いに動じていない!?


「えーと、話し中ごめんなさいね。」


この子はどういう子なのかしら。


「アンタは、マイスウィートと同じ匂いがするな。ん?クンクン…そっちの男もか?」


黒豹は、ザック様の方向の匂いもかぐ。


「そりゃそうよ。私の主達だもの。」

「なるほど、だからか!マイスウィートの主殿、失礼しました。」

「その呼び方やめてくれるかしら?」


パールが、心底嫌そうに言う。


「名前を知らないし、似合ってると思うんだけどな~。」

「…リーナ、気分が悪いわ。帰りましょう。」

「…帰るの?」

「帰るの!」

「ちょっと待て!」


帰るというパールの事をルーフが止めた。


「何よ。」

「俺は戦いに来たんだ。帰るならひとりで帰れ。」

「あなただけ残ればいいじゃない。ほら、相手も出てきたんだし。」


パールは、鼻で黒豹を指した。


「そいつは戦う気がなさそうだから嫌だ。」

「我儘な犬ね。」

「犬って言うな。」


パールとルーフは睨み合う。


最近は良い距離を保っていたのに、関係性は変わらないのね…。


「ふたりとも落ち着いてね。」

「そうだ。話はできそうだし、もう少し話してみたらどうだ?」

「アイザックくん!これのどこが話ができそうなのよ!?リーナをあげないわよ!?」

「それは困る…。」

「あげるって…私は物ではないわよ。」

「リーナぁぁぁ~。帰りましょ~。」


パールがこちらへ泣きついてくる。それを宥めて、私は黒豹に話しかけた。


「黒豹くん。」

「どうした?主殿。」

「私はサリーナよ。貴方の主ではないから、そちらでよんでね。」

「はい、サリーナ。」


あら、素直…。


「先程も説明をしてくれていたけれど、いくつか質問をいい?」

「もちろん。」

「貴方の自己紹介をお願いできる?」

「自己紹介?」

「あなたのことが分からないと、この子が怖がってしまうわ。」


私はパールを撫でた。


「そうか、ごめん。マイスウィート。」

「だから!その呼び方!」

「さっきも言ったけど、名前が分からないからそう呼ぶよ。それとも、名前を教えてくれる?」

「嫌よ。」

「じゃ、マイスウィートだ。」

「…」


パールは諦めたのか、黙ってしまった。


「それで、俺のことだよね?俺は、名前はない。人と契約をしたことがないから。したいと思ったこともないし。この辺りは俺の縄張りだから見回りしてたところだよ。敵が来たら、他の魔獣を逃さないといけないからね。」

「逃がす?」

「この辺りは弱い魔獣が多いんだ。」

「そうなのね。貴方は他の子を守っているのね?」

「守っているとか大層なことではないよ。俺の縄張りで勝手なことをされると気分が悪いだけ。」


この子、良い子ね。


あれ?ルーフは森で戦いを挑んでいたのよね?もしかして…


「話は変わるのだけれど、この子…ルーフの事は知ってる?」

「見たことはある。でも、俺の縄張りでは何もなかったから、特に何もないよ。」

「貴方の縄張りでは?」

「他の所の事は興味ない。」


黒豹は、本当に興味がなさそうだ。


「他に質問は?」

「そうね…」


私が質問をしようとすると、ルーフが横から口を出した。


「血の気の多いやつはどこにいる?」

「血の気が多い?」

「俺は、力比べに戦いたいんだ。」

「あ~、そういう面倒くさいやつなら、もっと奥にいるよ。」

「分かった。奥だな。」


ルーフ、貴方も面倒くさいと言われているのよ…。


「リーナ、行こう!」


ルーフは嬉々として奥に向かう。


「おい!サリーナやマイスウィートも連れて行く気か!?」

「は?当たり前だろう。」

「わざわざ危険地帯に連れて行ってどうするんだ!」

「危険地帯なのか?」

「争い好きな奴らのところが危険じゃなかったら、何なんだ。」

「あら、面白そうね。」

「マイスウィート!?」

「はぁー、パールよ…私の名前。」


パールは大きく溜息をついた後に、黒豹へ名乗った。


名前を隠すのを諦めたわね。


「パール…。いい名前だな。」

「それは、ありがとう。リーナがつけてくれた名前よ。」

「俺は、ルーフだ。」

「聞いてないんだが。」

「一応、知っとけ。それと主が一緒だ。」

「え?ひとりに契約獣が2匹!?」

「いいえ。2匹と1羽よ。」


サリーナは、空を指さした。

そこでは、アルが楽しそうに回転している。


目が回らないのかしら?


「全てサリーナとの契約?」

「ええ。」

「アンタ何者?」

「?」

「魔力の供給負担が多いだろうに…。」

「そうなの?確かに複数の契約は珍しいようだけど、魔力の供給云々は気にならないわ。」

「凄いな…。で、そっちの主殿は?」


黒豹はアイザックに声をかけた。


「俺?俺は、誰とも契約していない。」

「でも、さっきパールが…。」

「ああ、ふたりが主というやつか。それは、俺がパールと生活をしているからだな。」

「は!?…俺のライバルはアンタか!」

「それは、勘違いだ。俺はリーナの婚約者。リーナからパールを預かっているんだ。」

「何だそれ。意味分からないな。」

「分からなくていいのよ。関係ないんだから。」

「そうだね。これから知っていけばいい。」


アイザックと話していた黒豹に、パールが冷たく言い放ったが、黒豹は特に気にした様子がない。


「…本当に話が通じないわ。」

「ポジティブね…。」

「リーナ、良いように言ったわね。」

「…」


私達は森の奥へと進んだ。


「貴方は付いてこなくても良かったのよ?」


パールは、付いてきた黒豹に、また冷たく言った。黒豹は、やはり動じない。


「せっかくパールを見つけたのに、諦められないからね。いい返事をもらうまで離れないよ。」

「…うざいわ。」

「パール…。もう少し、言い方を優しく…。」

「気持ちがないのに良い顔をするのは、相手の為にならないわよ。」

「…そう。」


ツンデレのパールと、押せ押せの黒豹。

ふたりの相性は、いいと思うけど…。


「それにしても、静かですね。」

「そうだな。森の奥とは思えないくらいに明るいしな。」

「ザック様もそう思いますか?」

「ああ。もっと薄暗いのを想像していた。」

「私もです。」

「いちいち魔獣に喧嘩を吹っ掛けるやつがいるから、皆この辺りを避けてるんだ。」

「ん?それってルーフ?」

「あ~、違う違う。そいつじゃない。あっちを縄張りにしているやつ。」

「そりゃ、楽しみだな。」


それを聞いたルーフの声が弾んでいる。その言葉に黒豹は溜息をついた。


「はぁ、戦いなんて面倒くさいだけだろうに…。」

「あら?貴方は戦う事が嫌いなのね。自分の力量を知る事は良いことよ?」


パールはルーフの行動を肯定する発言をした。


「そうかもしれないが、虚しくもなる…。」


黒豹の声のトーンが落ちる。


何かあったのかしら?


「……では、帰ったら?」


前を見て歩きながら話していたパールは立ち止まり、黒豹を見た。


「嫌なものにわざわざ付き合うことは無いわよ。」


パールから離れてもらう理由にしたいのか、単純に黒豹の会話の間から感じて思った事を言っているのか。


パールのこの言葉は、後者でしょうね。パールはそういう子…。


「黒豹くん。パールは貴方を離したくて言っているのではないわ。心配してるのよ。」

「してないわよ!」

「はいはい。心配ではないのね。でも、言葉通りの意味でとればいいのよね?」

「当たり前よ。それ以外にないでしょう?」

「ふふふっ。ですって、黒豹くん。」

「パール…。俺にはやっぱり君しかいない!」

「は!?やめてくれるかしら。」


パールは、早足で歩き出した。


「何だかんだ、良い感じに思えるのは俺だけか?」


ザック様が小声で私に聞いてきた。


「私もそう思います。」


私も小声で答え、二人で微笑みあった。


「いいようになるといいな。」

「はい。」

「しかし、そうなった場合、パールは森に住むのか?黒豹にこちらへ来てもらうか?」

「パールが森にとどまったら私が寂しいですし、黒豹くんにこっちに来てもらったら、森の子たちが困りますよね?どちらも何かしらの問題が出そうです。どうしましょう…。」

「通い婚か?」

「それもありましたね!」

「リーナ!アイザックくん!何を話しているの!?早く行くわよ!」

「ふふふっ。は~い。」

「ハハハッ。今、行くよ。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ