魔獣の森へ出発
魔獣がいる森に行く日の朝方、まだ暗い時間…
今日は、私達だけではなく、ザック様とパールも一緒に行くことになった。
「本当に仕事は休んで大丈夫でしたの?」
「もちろん。何回も言うけど、いくら魔力が強いと言っても、実践はないに等しいんだし、ひとりでは心配だから。……公爵は何故、許可を出したんだろう?」
「うーん…ルーフとアルがいるし、私なら大丈夫と言っていたけど…。もしかしたら、こうなる事が分かっていたのかもしれないですわね。」
そう。
私がザック様に話して、ザック様とパールも行くことになると分かっていたのかも。
「おい。まだか?」
ルーフが焦れったそうに口を開く。
「ごめんなさい。行きましょうか。」
「そうだな。行こうか。」
「「アイザック殿下、サリーナ様、いってらっしゃいませ。」」
私達は、ロンドとメルに見送られ、スウィーティー家の裏庭から飛び立った。
「ザック様、飛ぶのが上手くなられましたね。」
「やっと最近、コツを掴めたんだ。」
「夜空のお散歩ができそうですね。」
「それは、お誘いと受け取って良いんだね?」
「はい。デートしましょうね。」
サリーナは、アイザックへにっこり笑いかけた。
「…リーナ。」
「はい?」
「…いや…うん…魔獣に会えるといいな…。」
「はい。私より、ルーフですけれどね。戦うのを楽しみにしているようです。」
ルーフは尻尾を振っている。
「…そうだな。」
「?」
何か、ザック様の反応が…。
私、またおかしな事言った!?
「パールも楽しみにしていた。」
「え?…あ、はい。私の方にも伝わってきていました。」
普通?気のせいだったかしら…。
「パールも戦ってみたいのよね?」
「貴方達…、こっちに話を振る前に何かないの?」
「…」
「?」
なんの事?
ザック様は、何か心当たりがありそうだけど、何も言わない。
「はぁ…、もう良いわ。」
パールは呆れたように溜息をついた。
「私も力比べは気になるの。まぁ、強いのは分かっているけれどね。」
パールは気取ったように、顎を上げ胸を張って飛んでいる。
「僕も、僕も~!」
アルは、皆の周りをくるくる回る。
「クスクスッ…そうね、アルも楽しみにしていたわね。」
「うん!ピクニックみたいだし、ワクワクする!」
「目的が少しズレている気がするけれど…。私も、皆でお出かけは楽しくてワクワクするわ。」
遠足みたいで、楽しみで笑顔が止まらない。
「ふっ、それは良かった。」
ザック様も笑顔になっている。
あ…手を繋ぎたい。
いや…抱きつきたい?
サリーナは、アイザックの笑顔を見て、そんな衝動にかられた。
「リーナ、どうした?」
「いえ…あ…今は飛んでいますのでやめておきます。」
「何を?」
「まだ、魔獣のいる場所は着きませんかねぇ~?」
「リーナは、誤魔化すのが下手だね。」
「ザック様には言われたくありませんよ。」
「……俺も分かりやすかった?」
「何かは分かりませんが、反応が少し不自然でした。」
「ん…あとで話そう。今は魔力操作が乱れると命に関わるから。」
魔力操作が乱れる事なの?
サリーナは、飛びながら手を繋いだり、抱きついたりする事を考えてみる。
………うん、落ちるかも。
「分かりました。」
そこから、私達は会話少なく、目的地に向かった。
◇
目的地へ着いた頃には日が昇り、森にも光がさしていた。
「こんなに明るくて魔獣は出るのでしょうか?」
「魔獣にも、色々いるからな。」
ザック様の言葉にパールとアルも続く。
「日ざしが駄目なら私達も昼間に歩けないわ。」
「好みはあるけど、問題ないよ~。」
「なぁ…」
「あら?貴方達は、特別でしょう?」
「ま、そうね!」
「僕達特別!」
「なぁー、って!」
「ルーフ、大きな声を出して、どうしたの?」
「早く行こう!」
「そんなに急がなくても…。」
「強い魔力の気配がある!」
「そうだな。まだ遠いが、確かに感じる。」
アイザックもルーフを肯定する。
そう言われて、サリーナも感知範囲を広げると、いくつもある魔力の気配の中に強いものを感じた。
「本当ね…。」
「そいつの所へ行こう。早く!」
走り出したいのを我慢しているのだろう。
身体をもぞもぞと動かしている。
「ふふふっ。では、急いでいきましょうか。」
「おう!」
「あ、でも、驚いて逃げてしまうかもしれないから、静かにね。」
「この魔力の主が、そんなに可愛い行動を取るとは思えないが…分かった、気をつける。」
私達は、静かに速足移動した。
「こういう時に風魔法って便利ですね。」
「そうだな。…ちょっと、リーナ、ストップ。」
ザック様が制止の声をあげた。
「?…!動いていますね。」
「ああ、こちらに近づいてきている。」
強い魔力が、こちらに向かってきているのだ。
「待ちます?」
「そうだな。パール達もそれでいいか?」
「良いわ。」
「OK~」
「俺は迎え撃つより、突撃したい。」
「筋肉バカ…。」
「は!?猫、どういう意味だ?」
「別に~。」
「もう…ふたりともやめなさい。」
「は~い。」
「チッ。」
その時、近づく魔力が強まった。
「来るぞ。」
「ええ。」
私達の空気がピリッとする。
「見つけた!」
その声と共に木の間から黒豹が飛び出してきた。
黒豹!?
「あ~、もう!強い魔力がわんさかいるから、何事かと思って来ちゃったよ。でも、アンタ達の前に出るつもりはなかったんだよ。本当!遠くから様子を見て、俺達の敵か見定めようと思ったんだ。そう思ったんだけどさ…。見つけちゃったら、出てくるしかないよね!」
よく喋るわね、この子…。
「見つけちゃった?見つかったではなくて?」
「そもそも、魔力は置いといて、姿は見つけてなかったけど?」
「そうですよね?」
黒豹はこちらへスタスタと歩いて来た為、私達は警戒を強める。
「あ、そんなに警戒しないで。いくら俺でもアンタ達全員を相手にしたら死ぬから、何もしないよ。」
そう言いながら、歩きは止めずにこちらへ近づいてきて、パールの目の前で止まった。
「僕のスウィートハニー。」
「「は?」」
「「「え?」」」




