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サプライズ

サプライズを思うと、楽しい気持ちになったが、ふと思った。


「お言葉に甘えてしまいましたが、おふたりとも、予定があったのではないですか?」

「休みで暇でしたので大丈夫です。」

「俺は、女の子観察を、」

「おい!」


聞かなかったことにしよう…。


「訓練は参加しないのですか?」

「訓練中になにかあるかもしれないので、訓練は班ごとに行います。今日は、第2部隊1班の日です。ちなみに、私達は2班です。」


なるほど、そうなのね。


「着きましたよ。ここです。話を通しますので、少々お待ち下さい。」

「分かりました。」

「バズ。」

「はい。何でしょう?」

「何でしょうではなくて、行って来い。」

「えー、俺がですか?」

「お前とスウィーティー様をふたりにはできないだろ。」

「はぁ…、分かりましたよ。」


バズは、訓練場の門近くにある小さな建物へ入っていった。


“リーナ。一応、あれしといたら?”

“あれ?”

“バリア。”

“そんな危険な事ないと思うけど?”

“念の為、念の為。”

“分かったわ。”


サリーナは、アルに言われた通り、身体に沿ってバリアを張った。


「どうかなさいましたか?」

「いいえ。何でもありません。…あっ。」

「先程の、話を通すってザック様にも連絡はいきますか?」

「そうですね。」

「そうですか…。」

「?」


サリーナが落胆していると、シュルツは不思議そうにサリーナを見た。


「びっくりした顔が見たかったもので…。」

「そういう事ですか。それでは付いてきてください。」

「え?はい。」


言われたままシュルツの後をついていくと、先程バズが入って行った建物へ入った。


「あれ?結局、シュルツ先輩も来たんですか?」

「今の状況は?」

「説明が終わって許可待ちです。」

「なるほど。…ちょっと遅かったか。」

「どうしたんです?」

「実は…」


シュルツは、バズに先程の話をした。


「それは、面白そうですね。俺、行ってきます。走れば間に合うかも。」


そう言って、バズは建物の奥に走っていった。


「どこへ行かれたのですか?」

「許可取りに行く騎士を追いました。」

「申し訳ないです…。」

「良いんですよ。アイザック殿下の驚く顔なんて滅多に見れないのですから。我々も楽しみです。」


シュルツがニッコリ笑うと、そこへバズが戻ってきた。


「許可出ました!そして、アイザック先輩への伝達も阻止しました。」

「ご苦労。スウィーティー様、こちらです。」


見学自体が邪魔だというのは置いておいて、それ以上邪魔にならないように気をつけましょう。



案内されたのは、運動場の様な広場だった。


「お。やってる、やってる。」


広場では、騎士たちが鎧をつけて剣で戦っていた。


「すごい迫力ですね…。」

「鎧をつけていますし、練習用の剣だから心配しなくて大丈夫ですよ。」


そりゃそうか…。


「ほら、アイザック殿下はあそこに。」


シュルツは、騎士たちの中で動きの良い目立っている鎧を指した。


本当だ。

ザック様の魔力だ。


「見ただけで、よくお分かりになりますね。」


鎧で誰が誰か分からなくない?

それとも、シュルツ様も魔力が?


「一緒に働いていれば、動きで大体分かります。」


なるほど。


「そういうものですか?」

「ええ。人それぞれ癖がありますからね。…休憩まで少しあるので、日陰で休みましょう。」

「はい。」

「今、椅子をお持ちしますね。」

「いいえ。このままで大丈夫です。」

「しかし、立ったままでは疲れてしまいます。」

「ハンカチがありますから、敷いて座ります。」

「「え?」」

「?」


驚いてる?

………!


「そうですよね!おふたりも座りたいですよね?えーと…何かあったかしら。」


サリーナは持っていた鞄の中を探り始めた。


「いいえ、私共は…」

「あ、ありました。エコバッグ!」

「「エコバッグ?」」


あ、そうか。この世界にその言葉はないか。


「買い物のときに使う袋です。」

「「はあ。」」

「エコバッグも2つ持っていて良かったです。1つは小さめですけど、すみません。」


サリーナは木陰にエコバッグとハンカチを置いた。


「どうぞ。お座りください。」


サリーナは、シュルツとバスのふたりに笑いかけた。

ふたりは一瞬固まり、顔を見合わせた後…


「「失礼いたします。」」


用意された場所へ座った。

それを見て、サリーナもハンカチへ座る。


「ここからでもザック様がよく見えますね。」

「え?本当だ。…目を離した後によく分かりましたね。」

「私はザック様の戦う時の癖は分かりませんが、魔力がザック様ですので。」

「魔力…ですか?」

「ええ。」

「さすが天才天使様!」

「バズ!…スウィーティー様、申し訳ございません。」

「いいえ。お気になさらず…。あの、パールの姿が見えないのですが、いつも一緒ではないのでしょうか?」

「パール…様ならあそこに。」


シュルツにそう言われ見ると、パールは騎士達が訓練している場所近くの木陰に寝ていた。


“そんなに近くでよく寝ていられるわね。”

“慣れよ、慣れ。リーナ、着いたのね。”

“ええ。”

“そっちに行くわ~。”


パールは立ち上がり、こちらへ向かってきた。




---アイザックside---


俺は今、騎士団の訓練に参加している。


相手の剣を避け、一太刀当てようとした所で、いつも訓練中は寝ているパールが、歩いているのが視界に入った。


珍しいな。


相手に攻撃を当てながらもパールの向かう方を見る。


は!?


「っ!」


一瞬手が止まった隙に相手に一太刀当てられた。


「ザック!何よそ見してんだよ!」

「悪い。」


俺は、訓練を続けるが、頭の中は混乱していた。


何でリーナがここに!?

一緒にいるのは、シュルツとバズだったか?何で彼奴等と?


シュルツとは学校が違うが、一緒に入隊し、見習い期間は同じ班だった。身分関係なく付き合ってくれる友人のひとりだ。


それにしても、リーナは今日も、可愛い。

…ん?今、一発当てられたのを見られたか!?

駄目だ。格好悪い所は見せられない!集中だ!


アイザックは頭を振り、訓練に集中を戻す。そこからは、一発も当てられる事なく、訓練を終えた。


「ご苦労だった!これで、訓練は終了とする!解散!」


ハンス隊長のその言葉で、アイザックはすぐさま兜を脱ぎ、木陰に座っているサリーナの元へ走った。


「リーナ!何故ここに!?」

「ふふふふふっ。」

「リーナ?」


リーナは笑っていて、返事が返ってこない。

俺はシュルツに視線を向ける。


「シュルツ、どういう事だ?」

「街でスウィーティー様にお会いしまして、こちらへ案内いたしました。」

「そうか。リーナ、何故街へ?」

「ふふっ。」

「まだ笑ってる…。どうしてそんなに?」

「ふふっ。…失礼いたしました。今日は仕事の説明を聞きに行って、帰りにサラ様を迎える為のものを街へ見に行きました。その途中…」


リーナがチラッとバズを見た。


何だ?バズがどうした?


バズを見ると、首を横に振っている。

リーナは、何も無かったように話を続ける。


「その買い物の途中、バズ様とシュルツ様にお会いしたのです。」

「リーナ、今の間は何?」

「何がですか?」


サリーナがにっこり笑う。


「いや、何でもない…。」


これ以上は聞くな、と…。後でシュルツに聞くか。


「あ、あの!俺はここで失礼します!」


バズがそう言い、他の騎士達の方へ走っていった。


「ははっ。逃げられましたね。」


シュルツが笑いながら言った。


「シュルツ、さっきも気になったが…。何だ?その話し方。」

「何の事でしょうか?」

「いつもと違うのが、気持ち悪い。」

「おい!言いすぎだろ!」


いつものシュルツが出たな。


「リーナも気にしないタイプだから、いつも通りで大丈夫だ。な、リーナ。」

「ええ。」

「そうですか?それならお言葉に甘えますが…。」

「だから、それが…」

「急には無理だ!」

「そうか?…それで、リーナ。何であんなに笑っていたんだ?」

「あ、それですか?それは、」


俺はリーナに事情を聞いて、抱きしめたくなった。


------------------------------



私は、訓練が終わりこちらへ来てくれたザック様に、サプライズの事を話した。


「リーナ。」

「はい?」

「抱きしめていい?」

「だ、駄目です!」

「何で?」

「なんでって…」


ここ、訓練場。

しかも、シュルツ様もいるのに…。


「俺、帰るか?」

「ああ、そうして。」


私が気にしていることを察知したのだろう、シュルツの発言に簡単に頷くザック様。


「ザック様、何を仰っているのですか?」

「何ってシュルツが気になるんだろう?いなくなれば問題なく抱きしめ、」

「恩人に向かって、それはありません。」

「恩人?」

「………あ。」


さっき、ぼやかしたのに…。

ごめんなさいね、バズ様。


「リーナ、隠し事は無しだよ?」

「隠し事と言いますか、これは特に話さなくてもいい事と言いますか…」

「スウィーティー様。あいつを庇わなくていいよ。俺も後で言うつもりだったし。」


シュルツ様がニッコリ笑う。


「庇う?リーナが誰を?」

「それは…」

「バズだよ。」

「バズ?何で?」

「街でスウィーティー様に声を掛けていたんだ。こんなに綺麗な子には会えないかもしれないから、とか言ってたかな。」

「…それは、同感だな。」

「声をかけられたと言っても、ザック様の婚約者と知らなかった様ですし、直ぐにシュルツ様もいらしたので何もなかったですよ。」

「知らない奴に声をかけられて怖かっただろう?」


頭を撫でられる。


「怖くはなかったです。ちょっと面倒くさいなとは思いましたけど…。」

「そうか。なら良い。」

「おっ、俺の思っていた反応とは違う。」


シュルツ様が驚いている。


「何がだ?」

「いや、もっと怒るかと思ってたんだよ。」

「怒る?」

「『俺の婚約者に声をかけやがって』みたいな?」

「そんな理不尽なことは言わない。」

「へぇー。」

「リーナが綺麗で可愛いのは分かっていることだから、声をかけられるのは必然。……とはいえ、安易に女性に声をかけるなとは注意するけどな。」

「ほぉ~。」

「それより、リーナは自分がそこら辺にはいない綺麗で可愛い女性だという事を分かったほうがいい。何故一人で街に行ったんだ?もっと、危機感を持たないといけない。」


怒られるのは、私だった!?


「ですが、仕事帰りには一人で行くしかないと思います。それに、アルもいましたし…。」

「俺が一緒に行く。」

「ザック様は訓練日だったではないですか。」

「この後は何もない。」

「ですが、訓練後はいつもお疲れですよね?」

「一緒に買い物するくらい、どうってことないから。」

「明日に響きます。」

「可愛いリーナに何かあったほうが響く。」

「で、でも、私は対応できますよ。」


魔法の腕には多少の自信がある。


「強いかどうかの問題ではないよ。魔導具だってあるし、何も起きない可能性がないとは言えないんだから。」


私は何も言えなくなった。

その様子を見て、シュルツ様が笑いをこらえながら、言った。


「くくっ。スウィーティー様、諦めたほうが良いですよ。これからは、番犬を連れて買い物行って下さい。」

「番犬…。」


私はザック様を見た。


「ん?何?」


他の人から見ても、犬に見えるのね…。

ま、いいか。ひとりで行かなきゃいけないことはないし、隠すものも無い。


「ザック様。この後予定がなければ、一緒にデートしましょう。」

「で、デート!?」

「そうですけど?」


何故、そんなに驚いているの?


「いや、改めて言われると緊張する…。」


頬を赤らめたザック様を見て、シュルツ様は少し呆れているようだ。


「お前、面倒くさいな。婚約して何年経つんだよ。」



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