街を散策
「講師を引き受けていただきありがとうございました。これからよろしくお願いいたします。」
「こちらこそよろしくお願いいたします。」
私は今、校長室にいる。校長は白髪のイケオジだ。
「今日は、仕事の説明だけの予定です。学校の新学期が始まったら講師として授業を受け持っていただきます。」
「はい。」
「予定通り、サポートとしてジェシー先生も授業に携わっていただきますので、分からないことがあればジェシー先生に聞いてください。あとの事は、ジェシー先生よろしくお願いいたします。」
「はい。承知いたしました。さぁ、行きましょうか。」
「はい。」
私達は校長室を出た。
「スウィーティーさんが、同僚になるなんて心強いわ。」
「私はジェシー先生の後輩になります。サリーナとお呼びください。」
「そ、そう?…ゴホン!では、サリーナ。魔法に関しては、私も教えてもらう事があると思うの。これからよろしくお願いしますね。」
「はい。こちらこそ、またご指導よろしくお願いいたします。」
「校内の案内は、要らないわよね。仕事内容も聞いているのでしょう?」
「週2回の魔法講師とだけ…。」
「そう。主に1年生の魔力操作と、他の学年の実技を順に、という形になります。」
「順にですか?」
「今日は1年と2年、次は1年と3年…という様に1日午前午後1時限ずつの週2回ということです。」
「なるほど。」
「基本的には専門課程に入る前までの学年と考えておいてください。」
「承知いたしました。」
話しながら歩き、すぐに職員室…こちらでは職員待機室という、場所へついた。
職員待機室は教科ごとにあり、魔法職員待機室の中には、席が数席。
教師はいなかった。
「明日までは授業があるので、皆出ていますね。この席が私。サリーナは隣を使ってください。…どうぞ。」
ジェシー先生はそう言って席に座り、私へも座るよう促した。
「はい。ありがとうございます。」
「それでは、初めての授業日と内容を話し合いましょうか。」
話し合いは時間がかからずに終わった。
「では、そのようにいたしましょう。」
「よろしくお願いいたします。」
「次は休暇明け、新学期に。」
「はい。」
「それでは、馬車乗り場まで送りましょう。」
「いいえ。慣れた場所ですから、ひとりで大丈夫です。」
「そうですか?それなら、気をつけて帰ってください。」
「はい。失礼いたします。」
私は慣れた校内を馬車乗り場に向かって歩いた。
途中、顔見知りの後輩に話しかけられ、講師の話をすると目を見開き後退った。
「どうなさったのですか?」
「いえ…いや、あの…」
「?」
「楽しみにしております!!」
その後輩はそう言うと、走り去った。
「え?いや、だから…貴方の学年は範囲外なのだけれど…。」
もうすでに姿はない。
「…ま、いいか。」
私は馬車に乗り、学校を後にした。
◇
私は学校の帰り、街にサラ様用の消耗品を探しに来た。
馬車から降りると、アルが肩にとまる。
サリーナは、アルをひと撫ですると、歩き始めた。
「確かこっちよね…。」
目当ての店に向かう。
「いつもは家に来てもらうからなぁ…。あ、あった!」
そこは貴族御用達の日用品や消耗品の店。
「いらっしゃいませ。…!!スウィーティー様。ようこそおいでくださいました。」
「急に来てしまってごめんなさい。ちょっと見たいものがあって…。」
「そうですか。では、こちらへどうぞ。お前達、ここは頼む。」
店主が奥の部屋へ案内してくれる。
「今日は予定が変更になり店にいましたが、スウィーティー様に会えるとは…。相手方へ感謝しなくてはなりませんね。」
店主はにっこり笑って言う。
「まぁ、お上手ですね。」
「それで、見たいものとは?」
「お店のシャンプーや石鹸、香水など見せていただきたいの。」
「…もしや、お兄様の結婚準備ですか?」
「さすがですね。その通りです。」
「畏まりました。商品をご用意いたします。少々お待ち下さい。」
そう言って、店主は部屋を出て行った。
「ねぇ、リーナ。あの人にサラ様が何を使っているか、聞けばいいんじゃない?」
「サラ様がここで買っているかどうかは分からないわ。それに、聞いてしまってはつまらないでしょう?兄様に聞いて分からなかった時点で、自分で探そうと思ったのよ。同じものでなくてもいいと思うの。サラ様が好きそうな香りや使い心地を探すわ。」
「リーナと同じものは?僕、リーナの匂い好きだよ。」
「ありがとう。でも、サラ様はもっと…」
コンコンコン
「失礼いたします。」
そこでドアがノックされ、店主がワゴンに色々な種類の商品を乗せて戻ってきた。
「定番から最近の人気商品までお持ちしました。他にリクエストがございましたら、再度ご希望にあったものをお探しします。」
「分かりました。さっそくよろしいですか?」
「ご自由にお試しください。」
「では、これからお願いします。」
私が1つの石鹸を指すと、目の前に桶とお湯を用意してくれる。
香りと使い心地をチェック。
「う~ん…これは少し甘すぎるかしら。甘い中に爽やかさがほしい所ね。泡立ちももう少しある方が良いわ。」
「では、こちらはいかがですか?」
次は、店主に勧められた物を試す。
「これは…泡立ちがいいですね。でも香りが惜しい。何か違う様に感じます。う~ん…『甘い中に爽やかさ』ではなくて、『爽やかな中に少しの甘さ』の物はあるかしら?」
「それでしたら、こちらはいかがですか?」
この感じ…
香りも理想的!
泡立ちもふわふわ!
「これ、これにします。このシリーズの香水や化粧品もあるかしら?」
「シリーズはないのですが、同じ系統の香りの物をお試しになりますか?」
「ええ。お願いします。」
こうしてサラ様の物が決まり、私は店を出た。
「良いものが見つかって良かった。」
私は馬車を呼ばず、街を散策していた。
「せっかく来たのだもの、もう少し見て回りたいわよね。」
“良いの?”
“さっき店で、ロンドへ手紙を送っておいたから大丈夫よ。”
“それならいいか。僕、あっち見たい。”
“公園ね。良いわ。行きましょう。”
「お嬢さん。」
公園に入ろうとすると、後ろから声をかけられた。
なんだろう?
私が振り向くと、にこにこした男の人が立っていた。
誰?
「ひとり?ひとりなら一緒にお茶でもどう?」
これって…ナンパ!?
こんな事、前世含めて初めてだわ。
本当にあるのね。
「喉は乾いていませんので…。」
「喉は?じゃあ、お腹は空いているかな?美味しい店が近くにあるんだ。」
「お腹も空いておりません。」
「それなら、」
「おい。バズじゃないか。何やってるんだ?」
私が断っていると、男の人の知り合いらしき人が声をかけてきた。
「いやぁ、綺麗な子がいまして。こんなに綺麗な子、もう会えそうにないし粘っている所です。」
今のうちに…
男同士で話し始めたので、そっと離れようと片足を後ろへ引く。
「綺麗な子ねぇ。………サリーナ·スウィーティー様!?」
逃げる前に後から来た男の人に見られ、驚きの声をあげられた。
え?知り合い?
…いや、知らないよね?
顔をしっかり見るが、覚えはない。
「サリーナ·スウィーティー様ですよね?」
「えーと、すみません。どなたでしょうか?」
「あ、失礼いたしました!」
その男の人は、ピシッと姿勢を正した。
「私、アイザック殿下と同じ隊のシュルツでございます。アイザック殿下にはお世話になっております。」
「そうですか。同じ隊の…。しかし、私だと、よく分かりましたね。」
「数年前の事件の時、私も学校へいきました。あの時よりもお綺麗になられていますが、分かります。」
「あの時の?覚えていなくて失礼いたしました。」
「いいえ。私は新人でしたし、きちんと顔を合わせたわけではございませんでしたので。」
「シュルツ先輩?」
「バズ、お前…。この方はザックの婚約者だ。」
ザック様を愛称で呼んでいるという事は、仲の良い方なのかしら?
「え?…えーーー!!せっかく綺麗で可愛い子見つけたのにぃ!アイザック先輩の婚約者ですかぁ!?」
「おい、声がでかい!」
「あ、すみません。」
「噂は聞いているだろう?」
「もちろんです。可愛くて綺麗で、魔法が天才級の天使ですよね?」
え?何それ!?
「そう、それ!」
シュルツは、それを肯定した。
マジか…。
恥ずかしくて、いたたまれない…。
「確かに他にいない天使級。……あ、もしかして、俺、明日、この世を…。」
「………否定はできない。」
バズは、肩を落とした。
はい!?
なぜそんな事になるの?
「スウィーティー様。それで、なぜこんな所に?」
「仕事の話を聞きに行った帰りにちょっと街へ寄ったのです。」
「仕事ですか?」
「はい。学校の講師を…。」
「いいな~。こんな綺麗な講師に教えてもらえるなんて。俺だったら超頑張る。」
話の途中で復活したらしいバズが、話に加わった。
「スウィーティー様の話を遮るな!」
「すみません…。」
「いえ。大した話ではないので、良いのです。」
「天使!」
「あの、恥ずかしいので、それやめてください。」
「はい。」
バズが、口を閉じるジェスチャーをした。
「はぁ…、すみません。後で指導します。…ところで、この後の予定はあるのですか?」
「公園でこの子と遊ぼうと思っているのです。」
サリーナは、微笑みながらアルを撫でる。
「天使…。」
また、バズが口を開くと、シュルツの拳骨が頭に落とされた。
「度々、申し訳ございません。」
「いえ。」
「お詫びと言ってはなんですが…。この後、騎士団の訓練場へ一緒にいかがですか?」
「訓練場ですか?」
「この近くに訓練場がありまして、今日はアイザック殿下が参加されています。」
そういえば、昨夜ザック様が話してた…。
「広いですので、契約獣様も飛び回れますよ。」
“う~ん…もし何かあっても何とかなるかしら。アル、どうする?”
“悪い感じはしないし、この魔力量ならどうとでもなるよ。広いところで飛べるなら、ここじゃなくてもいいし~。”
“…そんなはっきり。でも、ザック様の訓練の姿がみれるなら。”
「では、お願いしてもよろしいでしょうか?」
「はい。それでは、行きましょう。バズも来るだろう?」
「いや、俺は…。」
「来るよな?」
「でも…。」
「バズ。」
「………はい。」
「あの、無理はなさらなくても…。」
「いえ。婚約者のある女性とふたりきりはいけません。」
そういうことか…。
サリーナ、シュルツ、バズの3人は訓練場へ向かった。
そうだ!
“パール。”
“何~?”
“今日は訓練場にいるのよね?”
“そうよ~。”
“今から行くけど、ザック様には内緒ね。”
“は~い。アイザックくん、驚くわね!”
“ふふっ。”
反応が楽しみ!




