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パトリックの結婚準備

翌日


「ふわぁ~」


朝、今日は特に予定はないのだが、いつも通りに起きてしまった。


お父様達との朝ご飯に間に合いそうね。


「サリーナ様、おはようございます。」

「おはよう、メル。」

「本日のお召し物はどうなさいますか?」

「出かける予定もないし、楽なものでお願い。」

「畏まりました。」


メルは、衣装部屋からロングワンピースの様な形の軽いドレスを持ってきてくれた。


「こちらでいかがでしょうか?」

「ありがとう。あとは自分でするわ。」

「畏まりました。失礼します。」


メルは、お辞儀をすると部屋から出ていった。


「はあ~、もう動くのか?」


あくびをしながらルーフが言った。


「お父様達と朝ご飯を食べれるかと思ってね。」

「なんか話でもあるのか?」

「別にないけど、食べられる時は一緒に食べたいじゃない。」

「そうか?」

「そうよ。」

「リーナ。僕散歩してきたいんだけど。」


ルーフと話していると、アルがとまり木から私の方にやって来た。


「良いわよ。」


窓を開けると、アルは外に飛んでいった。


「ルーフはどうする?」

「俺は、まだ寝る。」

「ふふっ。分かったわ。おやすみなさい。」

「おやすみ。」


私はルーフが再び眠りについたのを見て、着替え始めた。


「髪は、簡単でいいよね。」


ハーフアップに結いて、部屋を出る。


「ふんふんふんふん~♪」

「随分ごきげんだな。」


鼻歌を歌いながら、廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。


「リック兄様。おはようございます。」

「おはよう。早いな。特別講師は明日からだろう?」

「はい、そうです。」

「昨日の卒業パーティーで疲れているだろうに、もう少し寝ていて良いんだぞ?」

「目が覚めたので、リック兄様達と朝食を食べようかと思いまして。」

「それは、嬉しいな。」

「ふふっ。…あれ?そういえば、ヨウは部屋ですか?」


いつもは朝食に一緒に来るリック兄様の契約獣ヨウの姿が見えない。


「いや、野暮用でサラの所に飛んでもらった。」

「そうですか。…もうすぐ結婚式ですね。準備は順調ですか?」

「ああ。滞りない。」


リック兄様は、1ヶ月後にサラ様と結婚式を予定している。


「良かったです。何か手伝えることがあったら、手伝いますから言ってくださいね。」

「ありがとう。…そうだ。サラの部屋の準備を頼めるか?」

「部屋の準備ですか?」

「女じゃないと分からないことがあると思うんだ。必要な物とかも。」

「なるほど。…本当ならこういう事は、お母様がする事なのかもしれませんね…。」

「そうだな…。」


気づかなかった…。

お母様がいたら、お嫁さんの為にすることってたくさんありそう…。


「…至らぬ所もあると思いますが、お母様の代わりを務めさせていただきます!」

「部屋作りに、そんなに気負わなくても良いぞ?」

「でも、他にやる事もあるのでしょう?」

「あ~、まぁ、でも、その辺はサラの方でやってくれてたりするから、心配しなくて大丈夫だ。」

「お料理の手配とかは?」


式の後は、披露宴の様な食事会が開かれる。


「料理長に頼んだ。」

「そうですか。…もっと早く気づくべきでした。我が家に女は私だけ…私がお母様の代わりをしなくてはならなかったのに…。」

「そんなことない。皆で考えて用意すれば、それで良いんだ。だから、リーナは部屋作りを頼む。」

「はい。」


私は、朝食後に部屋の準備に取り掛かった。


「さぁ、何から始めようかしら。」


私は、リック兄様の部屋の続き部屋にいた。ここがサラ様の部屋…と言うか、ふたりの寝室になる。


結婚の為に、二部屋の壁を壊して繋げる工事をしており、広くなっている。


「細かい物は、サラ様がご自分で決めた方が居心地が良い気がするのよね。仲良くしてくれているとはいえ、義理の妹に全部用意されるのって嫌かもしれないし。」

「そうですか?私ならサリーナ様に全て選んでいただきたいですが。」

「あ、うん。…お母様の時はどうだったのかしら。ロンドなら分かるかな?」


領地にいるお祖母様に手紙で聞いても良いけど…。


「呼んできましょうか?」

「ええ。お願い。…あ、でも、仕事をしていたら、急ぎではないから後で良いと言って。」

「畏まりました。」


メルは、ロンドを連れてすぐに戻ってきた。


「ロンド、ごめんなさいね。仕事は大丈夫?」

「はい。それで、旦那様と奥様の結婚時の事をお知りになりたいとのことでしたか?」

「そうなの。部屋の準備とか。」

「奥様にも話は聞いていたようですが、全て大奥様が用意していたように思います。」

「サラ様の意見を聞きながら、用意してもいいという事ね。欲しい物や好きな物を聞いてみましょう。」


私は、さっそくサラ様に手紙を書くことにした。サラ様にも小型手紙魔法陣は渡してある。

小型手紙魔法陣については、職人と契約して私以外にも作れるように試行錯誤してもらった。その結果、今では多く使われる様になっている。


アドレス付きは、無理だったけどね…。

まぁ、仕方がない。


手紙を出すと、すぐに返事が来た。


「『リーナ様が選んでくれた物なら何でも嬉しいですわ。』………ふりだしに戻った。あれこれ言うタイプではないのは、分かっていたけれど、今回ばかりは何かヒントが欲しかったわ。あとは…帰ってきたら兄様に聞きます。それまでは、私が思うサラ様のイメージで考えておくとしましょう。」


私は、私室へ戻った。

ルーフは、まだ寝ている。


「よく寝るわね…。体調でも悪いのかしら?」

「いや、やる事なくて暇なだけだ。」

「起きていたの?」

「ああ。」

「アルのように散歩に行く?」

「うーん…。」


珍しくはっきりしないわね。


「一緒に行きましょうか。」

「良いのか?やる事があるんじゃないのか?」


それを気にしてたのか。

可愛いやつ。


「外を歩きながら、頭の整理もできるし、良いことが思いつくかも。」

「行く。」


ルーフは、尻尾をぶんぶんと振る。


「ふふふっ。」


音が聞こえてきそう。


「クスっ…失礼しました。散歩のご用意をいたします。」

「ありがとう。よろしくね。」


メルも私と同じことを思ったのだろうか。笑顔で散歩の準備をしてくれた。


私達は外に出て、我が家の庭師が作ってくれた庭を散策する事にした。


「久しぶりに、こののんびり感を堪能している気がする。」

「休みは今までもあっただろう?」

「学生の休みと、卒業してからのこの感じは違う気がするの。」

「そうか?」

「きっと気持ちの問題ね。」

「しかし、明日からも行くんだろう?」

「学校?そうよ。講師としてね。」

「気持ちが変わるものなのか?」


ルーフは不思議そうに首をひねる。


「緊張はするわよ。でも、週2回だし生徒だったときより、身体も気持ちも楽よ。前世と比べたら、学生時代も十分楽だったけどね。」

「#前世__あの時__#は、朝から夜遅くまでいなかったもんな。」

「ええ。貴方達には寂しい思いをさせていたわね。ごめんなさい。」

「…寂しかったというよりも、心配だったな。」

「ルーフ…。」

「今のリーナは楽しそうで、前世の様な心配はない。」

「そう?」

「魔法の訓練で疲れても倒れても、楽しそうだ。」

「ええ、楽しいわ。自分の思い描いた魔法ができたら、感動もする。」

「リーナが幸せなら、俺達も幸せだ。」

「そうだよ~。僕達も楽しく過ごせるんだから。」


私とルーフの頭上からアルの声も聞こえる。


「アル、戻ってたの?」

「うん!はい、お土産。」

「ひめりんご?」


アルは、足で掴んでいた小さなりんごを、私が差し出した手においた。


「森で見つけた。」

「森?え~と、森の所有者の許可とか…。」


私がメルの方へ振り返ると…。


「この辺りの森は全てスウィーティー家の物ですので問題ありません。」

「それなら良かった。アル、ありがとう。でも、他の敷地からは持ってきては駄目よ。」

「分かった!」

「さっそく食べても良い?」

「うん!」


私は水魔法を使い、洗ってからりんごを噛じった。


「ん~!甘酸っぱくて美味しい。」


顔は自然と笑顔になる。


「良かったぁ!もっと採ってこようかぁ?」

「うーん…、場所はここから遠い?どの方向?」

「あっち。ひとっ飛びだよぉ。」


アルは、民家が少なく森が多い方向を指した。


「メル、午後の予定はなかったわよね?」

「はい。」

「それなら、ちょっと私も出かけようかしら。」

「お出かけですか?」

「そう。ひめりんごを採りに…」

「では、馬車をご用意します。」

「いいえ。その必要はないわ。」

「!」

「バスケットだけ持ってきて。」

「畏まりました。」


メルは小走りで家の中へ入っていった。


「俺も行く。」

「もちろんよ。」


私達はメルがバスケットを持って戻るのを待った。


メルがバスケットを抱えて戻ってきた。


「お待たせいたしました。」

「ありがとう。さてと…」


私が動こうとすると、メルの目が輝いた…気がした。


「…メルも行く?」

「はい!」


首をぶんぶん縦に振る。


ふふっ、昔から変わらないわ。

メルとはもう15年の付き合いになるのね。


普段冷静なのに、時折子供のような反応をする時があるメルは、まだ不思議に思う所も多い。


そもそも、年齢が不詳よね。私が3歳の頃から見た目が変わらない…。


「サリーナ様。いかがされましたか?」

「…メルは、いつまでも変わらないなぁ…と思っていただけよ。」

「それは成長していないと…。」

「違うわ。いつまでも若いと言う事よ。」

「それは、サリーナ様に細胞の活性化魔法を教えていただきましたから!」


私は、髪ドライの他にも、ちょこちょこ自分に便利な魔法を作り、使っていた。

それを見たメルも一緒に練習していたのは確かだ。


「サリーナ様ほど上手くできませんが、日々頑張っています。」

「そうかしら?メルの方がツヤツヤのような気がするのだけれど。」

「何をおっしゃいますか。サリーナ様の肌の方が…」

「ねぇ~、褒め合ってないで行こうよ~。どっちも可愛いし、綺麗だからさぁ~。」

「アル…。」

「アル様…。」

「…メル、行きましょうか。」

「…はい。」

「では、魔法をかけるわよ。ルーフもね。」

「おう。」


私は、ルーフとメルに飛行の魔法をかけた。この魔法が使えるようになってから、人目が少ない時に移動手段として使っている。


ルーフは熱風で浮くことができるが、長時間飛ぶ事は苦手で、メルは仕組みが理解できず使えない様だ。


「リーナ良い?」

「ええ。準備OKよ。」

「じゃあ、しゅっぱ~つ!」


アルが勢いよく、高度を上げた。

私達も地面を蹴り、空へ飛び立つ。


高度はこれくらいでいいかしら。


アルは私達の遥か頭上を飛んでいるが、私達は下にいる人が気にならない位の高さを飛べばそれで良い。


今日はメルもいるからのんびり行きましょう。


私は少しスピードを落として、先程アルが示していた方へ向かった。

私自身のスピードは自由に調節できるが、ルーフとメルのスピードは自動的に私と同じになる。


メルを見ると、口角が上がり楽しそうだ。


「リーナぁ!あそこだよぉ!」


アルが叫ぶ。

言われた方を見ると、森の中に赤い色が転々と見える。


「メル、ここは…」

「もちろん。スウィーティー家の物です。」

「よし!降りるわよ。」


私達は徐々に高度を下げ、着地した。


「美味しそうなりんごばかりね。」

「はい。」

「リーナ、採るよ~!」

「私もそちらに行くわ。ルーフとメルで、採ったりんごをキャッチしてね。」


私は木の上まで飛ぶと、アルと私が採ったりんごをそっと落とした。

それを、ルーフは身体に乗せたバスケットでキャッチし、メルは着けていたエプロンを広げてキャッチする。


あっという間に多くのひめりんごが採れた。


「バスケットいっぱいね。これ以上採ったら、飛んでいる間に落ちてしまうわ。もう終わりましょう。」

「「「はい。」」」

「さぁ、帰りましょうか。」


その時、青く小さな花が私の視界に入った。


「ん?あれは…ブルースター?」


ブルースターといえば…。


「あれは、オキシ草ですね。茎の汁が肌につくとかぶれる事がありますので、お気をつけください。」


その説明を聞いて確信した。


「やっぱり、ブルースターのようね。こちらでは、オキシ草と言うのね。」

「あの花がどうなさいました?」

「思い出したの。花言葉が『幸福な愛、信じあう心』なのよ。サラ様のお部屋にぴったりでしょう?」

「花言葉ですか?」


メルは不思議そうに首を傾げる。


「こちらにはない?」

「どんなものでしょうか?」

「花に思いや意味を込めて、人へ送るのよ。一番有名なのが赤いバラね。バラは本数によっても意味が変わるの。1本なら『一目惚れ』、10本なら『貴方は完璧』、99本で『永遠の愛』、100本は『100%の愛』、もっと細かくあったけど、覚えているのはこれだけね。」

「素敵です。しかし、そのような物は我が国にはありませんね…。」

「そうなのね。では、リック兄様へ説明をしておけばいいかしら?ブルースター…いえ、オキシ草は花言葉だけでなく、サラ様のイメージとも合う可愛らしい花だわ。クッションやベッドカバーに刺繍しましょう。」



「…という訳なのですが、兄様いかがですか?」


私は帰ってきたリック兄様との食事中、オキシ草について話をした。


「そんな意味があるんだな。聞いたらサラが喜ぶ。」

「では、それで進めます。他に用意する物でリクエストはありますか?ドレスは?宝飾品は?それから消耗品のブランドは?」


私は気になる事を一気に聞いた。そんな事は今まで無かったので、リック兄様は驚いている様だ。目をパチパチさせている。


「リック兄様?」

「……え、ああ。えーと…ドレスと宝飾品は、サラと一緒に見に行った。完成したらこちらへ運ばれてくる。」

「分かりました。」

「消耗品のブランドは…分からない。」

「そうですか。」

「聞いておくか?」

「それは無粋というものです。…私の記憶を頼りに用意してみます。」

「そうか?」

「はい。さっそく明日、仕事帰りに街に寄ってきます。」

「分かった。」



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