2年後、卒業パーティー
結局、あれから平和に学校生活を送り、本日卒業を迎えた。
私は、どこかで見習いに入るわけでもなく、貴族女子によくある花嫁修業的な事をしようかと思っていたら、陛下からお声がかかり、学校の特別講師という形で週2回、生徒へ魔法を教えることになっている。
まだ見習い期間の年齢だからと断ったのだが…
「その魔力と、力量で何を言う。サリーナ嬢ほどの魔法使いはいないだろう。………嫌なら、無理にとは言わないが。」
花嫁修業と言っても、もうやることはないし、暇だから良いけど…。
「生徒達は、自分達とそう年齢が違わない私に教わる事を良しとするでしょうか?」
「それは確認した。」
「確認?」
「学校では、サリーナ嬢お慕いクラブというのがあるようではないか。」
「え?」
「知らなかったのか?」
「知りませんでした…。誰がそのような…。」
「教師たちも知っていた様だが?そもそも、この話を持ってきたのは学校長だ。」
初耳だ…。
…という事で、私は明日以降も学校に週2で来ることになったのだった。
「リーナ。」
「ザック様。」
「大丈夫か?体調でも悪い?」
「いいえ。少し考え事をしていただけです。」
現在は、制服から着替えて、卒業式後のパーティー会場へ向かう所だ。
エスコートをお願いしたザック様が、ボーッとしていた私を心配してくれたらしい。
「考え事?」
「学校生活が平和だったな…と言う事と、明後日からの講師についてです。」
「リーナなら問題ないと思う。サポートとしてジェシー先生もついてくれるのだろう?」
「ええ。それに関しては、安心しました。」
「他になにかあるのか?」
「特にこれと言うのはないのですが、緊張しています。」
「それは、初めてなのだから仕方ないと思う。」
「はい。私もそう思います。思っているのですが…」
「パールや、アル、ルーフが一緒に行ければいいけど。」
「許可されませんものね。」
「早いうちからリーナの魔力操作をしていれば、契約獣を持つほどの負担はないと分かったからな。」
そう。この数年で、以前の魔力操作を覚える前に私のやり方を覚えると、魔力が増えても負担が軽いことが分かったのだ。さらに、以前の魔力操作をしたまま年齢を重ねた人の方が、魔力操作の方法を変えた時に、魔力酔いの症状が重いと分かった。
「それに、貴族には、まだ古い考えの者が多い。」
「契約獣は戦のための道具ですか…」
「そう。悲しい事に、学校で戦闘訓練をして、他国に攻め込むとか馬鹿な事を言う輩も居るから。」
「迂闊に許可は出せませんね。」
「そういう事。…さぁ、着いた。」
会場前は、卒業生達でいっぱいだった。同行者を連れている者、連れていない者…その辺は自由になっていて、色々な人が居る。
婚約者がいる人は大体一緒に来ているようね。
「リーナ、行こう。」
「はい、ザック様。今日はありがとうございました。楽しく過ごせました。」
卒業パーティーは、王城でのものと違って挨拶回りもない為、友人やザック様とゆったりした夢のような時間を過ごすことが出来た。
「気をつかわないパーティーは、この卒業パーティーくらいだからな。これからは、駆け引きや探り合いが、今まで以上にあるから。」
王太子ではなくても、王家の婚約者として求められる事は多い。
「王族のうちは、出なくてはならない行事が多いから、リーナにも付き合わせることになる。」
「もちろんです。他に女性を連れていたら…」
「いたら?」
「泣きます!」
「泣くのか?」
「私を何だと思っているのですか?婚約者が他の女性をエスコートをしていたら、悲しいに決まっているではないですか。」
「リーナを悲しませる事などしないから、安心して。」
「はい。信じておりますから、大丈夫です。…ザック様は、アレックス殿下にお子が産まれたら、王位継承権を放棄する予定なのでしたよね?」
「ああ。爵位も断って普通の騎士になる。リーナには苦労をかけるかもしれないけど…。」
「いいえ。その方が私も性に合っていると、以前にもお話しました。」
アレックス殿下は、昨年結婚した。隣国の姫である妃殿下とは仲良く過ごしている様だ。私は、妃殿下とお茶飲み友達としてたまに会うのだが、その時に嬉しそうに惚気けられた。
以前からザック様は王位継承権の放棄について話をしており、契約獣を持たないのも様々な疑惑や思惑を持たれるのを防ぐ為だった。
使用人がおらず、自分達だけの生活…。
舞踏会も出なくていい。
言葉遣いやマナーも気にしない…とは言い切れないけど、今よりも私らしい生活が送れるといいな。
「リーナが成人する頃には叶うと良いけど。」
「ザック様。そればかりは、どうにもなりませんよ。」
「まぁ、神にしか分からないな。」
「そうですよ。」
「それまでに、困らない様色々な準備をしておこう。」
「はい。」
「家を買って…っと、どんな家がいい?」
「気が早いですね。」
「準備は早いに越したことはない。」
「そうですねぇ…家は大きくなくていいので庭は欲しいです。」
「そうだな。#パール達__皆__#が走り回れるくらいのが欲しいな。」
「皆でのんびり外で、食事も良いですね。」
「ああ、気持ちいいだろうなぁ。そうだ!ガゼボを作ろう。」
「良いですね!」
「周りに花も植えて…。」
「草取り頑張ります!」
「庭師を雇ってもいいんだよ?」
「私の手に負えなくなったら、お願いしますね。」
「分かった。」
「…ふふっ。」
「どうした?」
「夢は広がりますね。」
「ああ。」
私達は、未来に思いを馳せた。




