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6年後、アイザック成人祝の舞踏会

私は、13歳になった。


あの日、大騒ぎする人間を余所にルーフとパールは落ち着いており、私について話したのは『そのうち起きる』の一言だったそうだ。


それを信じ、お父様達は起きない私をそのままに、自宅への帰路についた。


私は馬車が揺れても、家についてベッドへ運ばれても、身体を清拭されても起きなかった。


しかし、何をしても起きなかった事が嘘のように、その次の日の朝には目を覚ました。

結局の所、魔力を使いすぎて回復するための睡眠だったのだ。


あの時はびっくりしたわよ。起きたら、お父様と兄様達の顔があるのだもの。

ザック様も心配して、泊まっていてくれたのよね。

懐かしいわ。


私は現在、普通科コースの7年生だ。

魔法の練習も順調で、あの日以降長い眠りにつくこともない。そして、ある程度の魔力を使っても問題ないまでになっている。

要するに、身体を慣らしながら少しずつ使う量を増やしていけば良かったのだ。


分かっていたことなのに…。


ちなみに、リック兄様は文官として働いており、ザック様とリオン兄様は騎士コースを卒業し、見習い期間を経て成人した。


今日は成人の儀とは別にザック様の成人祝の舞踏会が開かれる。

婚約者である私の契約獣、ルーフとアルの参加も認められた。もちろん、パールもザック様と参加する。


「サリーナ様、終わりました。」

「ありがとう。」


私は、メル達侍女の手で磨かれ、いつもよりツヤツヤキラキラになっている。


「お綺麗です。」

「貴方達のお陰ね。」

「何をおっしゃいますか!サリーナ様の美貌があってこそです!」


サリーナは、前にも増して美しく成長していた。


「そう言ってくれるのは、うちの皆だけよ。」


面と向かって言わないだけで、サリーナと会う者は皆見惚れるのだが、本人は自覚していない。


「リーナ、綺麗だ。」

「リック兄様まで…。」

「可愛い妹を褒めて何が悪い?」

「悪くはありませんが…。ありがとうございます。」

「それでは、行こうか。」

「はい。リック兄様。」


父ジャックは宰相の為、朝から王城へ行っている。ダリオンは騎士寮で生活している為家にはいない。

サリーナは、仕事が休みのパトリックと王城に向かった。


王城につき、広間に通されると、すでに多くの人がいた。


「アイザック殿下が入場したら、そこまで送る。」

「いいえ。ルーフとアルがいますし、一人で大丈夫ですわ。」

「そうか?」

「リック兄様は、サラ様の元にいてあげてください。」


サラ様とはリック兄様の婚約者だ。いつもは迎えに行くのだが、今日は私の為に現地集合にしたらしい。


「サラは気にしないと思うが…。」

「そういう事ではありませんわ。」

「?」

「あんなに愛らしいのです。サラ様に変な虫が近づいてきたらどうするのですか。」


そう!サラ様は可愛い!小動物の様に可愛い!


「それは困るな…。」

「ほら!サラ様がいらっしゃいました。」

「あ、ああ。」


サラ様の姿を見つけて、私達は近づく。


今日も可愛らしい!

年上とは思えない。


「サラ。」

「リック様。」


ふたりは、私やサラ様の家族に目をくれず

手を取り合う。


仲が良くて何より!


サリーナは微笑んだ。

その時、王族が入場する音楽が流れた。


普段、身分関係なく騎士をしているアイザックも、この時ばかりは王族であらねばならない。その為、婚約者とはいえ入場は別になる。


ザック様は騎士団に入り、前以上に逞しく精悍な顔立ちになった。


今日も格好いい…。


うっとりしていると、ザック様はこちらを見て一瞬固まった後、笑顔をくれた。

陛下の挨拶が終わると、ザック様はこちらへ来ようとするが、周りに止められている。


そりゃそうよ、本日の主役だもの。

招待客の挨拶を受けないと。


ザック様は、パールを撫でながら何やら耳打ちをしているのが見える。


“リーナ。早く終わらせるから待っててって。”


「クスッ。」


思わず笑ってしまった。


早く終わらそうとして、終わるものでもないでしょうに。


「リーナ、どうしたんだい?」

「ザック様が、挨拶を早く終わらそうとしているわ。」

「あ~、確かにこちらをチラチラ見ているな。俺達も早く挨拶に行こう。」


私達も他の貴族同様、挨拶の列に並んだ。


ん?

なんか変な感じ…。


王族に近づくにつれ、空気が淀んでくる。


「お兄様。」

「ああ。」


お兄様もこの空気を感じているようだ。表情がいつもより硬い。

王族の側に仕えているお父様へも目を向けると、顔が険しくなっていた。


お父様も気づいているみたいね。

この淀みの原因は…


サリーナが周囲の魔力を探ると、すぐに数組前の親子から放たれているものであると分かった。


さっきまでは何も感じなかったのに…。

まさか、王族に危害を加える気!?


“パール。”

“分かっているわ。”


挨拶中ザック様の横で伏せていたパールが立ち上がる。


“アルとルーフも準備しておいてね。”

“おう。”

“分かった。”

“アルはお父様の元へ。そして、何かあったら陛下まで飛んで。その旨もお父様へ伝えて。”

“は~い。”


アルはお父様の元へ飛び、肩に止まった。

アルが私の契約獣だというのは周知の事実。契約獣が物珍しくざわついてはいたが、お父様の元へ飛んだ事については、気にする者はいなかった。


お父様はこちらを見た。

その目は了承した事を語っている。




そして、親子の順番になった。


「陛下、王妃様、アイザック殿下、成人誠におめでとうございます。」

「ハンニー伯爵、今日は息子の為に感謝する。」

「ハンニー伯爵、感謝する。」


ハンニー伯爵…。

最近、愛人の元に産まれた娘さんを引き取ったのよね。


「これは、我が娘アイランでございます。お見知りおきを…。」

「よろしくお願いいたします。」


娘アイランが、言葉を発した瞬間。淀みが一気に広がった。


…が、一瞬で消え失せた。


「なぜ!?」


アイランは、礼をとって下に向いていた顔を勢いよく上げた。


「おい!アイラン!頭を下げろ!」

「え、ええ。」


ハンニー伯爵に言われ、アイランはすぐに元の姿勢に戻った。


「何が『何故』なのだ?」


陛下は、いつもより低い声でアイランに問いかける。


「い、いえ。何も…。」


陛下の目は親子を探っているようだ。


「……………まぁ、良い。今日はアイザックの祝いの日。楽しんでくれ。」

「ありがとうございます。」


親子は、そのまま陛下の前から下がった。


魔力が強い王族方も違和感は感じたはず。


お咎めが何もなしとは………未然に防げたし、今日は様子見と言う所かしら?

まぁ、見張りは付くのでしょうけど。


私はまたお父様を見た。目が合ったお父様は小さく頷いた。


大丈夫…という事かしらね。


その後、私達も挨拶を終えた。


公の場での祝いの挨拶は他の方と変わらない。あえて変わったといえば、ザック様の表情だろうか。

柔らかい、甘い表情だった。


「こちらが恥ずかしくなる。」

「あら。リック兄様がそれを言います?」

「なんだ?」

「自覚なしですか…。」

「分からん。」

「クスクスクスッ。」

「ほら、サラ様に笑われていますよ。」

「サラ、どうしたんだ?」

「いえ。仲がよろしいと思っただけですわ。」

「それは、まぁ…そうだな。」


肯定してしまう妹大好きパトリック。そんなパトリックを、サラはにこやかに見ていた。


「そんな事より、リオン兄様がいませんね。」

「今日は仕事で警備にあたると言っていたが、会場ではないのかもしれないな。」

「先程のこともありましたし、最近会えていなかったので、顔を見たかったのですが…。」

「アイザック殿下なら分かるだろう。」

「後で聞いてみましょう。」


そんな雑談をしていると、全ての招待客の挨拶が終わったようで、ザック様がこちらへ向かってくる。しかし、途中で女性達に囲まれてしまった。

最近は慣れたのか、パールがいてもザック様へ近づく女性も出てきている様だ。


ま、パールは危害を加える事はないし。

私は、まだ成人まで5年ある。

その間にあわよくば…という事かしらね。


「囲まれているぞ。」

「そうですね。」

「良いのか?」

「駄目なのですか?」


ザック様に限って、『あわよくば…』に乗る事は無いと信じている。


「リーナ。お前はアイザック殿下を好いているんだよな?」

「もちろんですよ。」

「あの殿下を見て思う所はないのか?」

「困り顔が可愛いです。」

「…そうか。」

「はい。でも、そろそろお話をしたいので行ってきます。」

「ああ。俺達は…」

「私はもう大丈夫です。兄様たちは、ダンスでもしてらしてください。」

「分かったそうする。ルーフ、リーナを頼んだ。」


ルーフは、パトリックを見て『もちろん』と言うように頷いた。


「では、ルーフ。行きましょう。」


サリーナは、アイザックへ向かって歩く。そして、女性達の後ろから声をかけた。


「失礼いたします。通していただけますか?」

「え?…!?」


女性達は振り向き驚いた後、サリーナの前から退いた。


「ザック様。」


サリーナは、アイザックへ笑いかける。


「リーナ。」


アイザックは甘い声と蕩けそうな表情をサリーナへ向けた。その表情は、婚約者を溺愛している事を周りへ伝えるのに十分だった。


「皆すまないが、愛しい婚約者が来たので失礼する。」

…「「「あ、は、はい。」」」…


アイザックがサリーナの腰に手を回し、その場から離れ、その後ろからはパールとルーフがついていく。



その光景を、アイランが離れた所からジッと見つめていた。




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