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お風呂に入りたい

5分程経つと、お父様が目を開けた。続いて他の皆も目を開ける。


「…出来ん。」

「私もです。」


お父様とロンドは肩を落とす。


「私はもう一歩で掴めそうです。」

「俺も。」

「僕も。」


そう言うのは、兄様達とメルだ。


「………出来た、様な気がする。」

「「「「「え?」」」」」


ザック様の言葉に皆は驚き、私は喜んだ。


やった!

私は特別ではないと、証明されたわ!


“聞こえているわよ…。”

“あれ?”


私の心の声は、パール達に筒抜けだった様だ。


「リーナ。」

「はい!」

「可視化を頼んでもいい?」

「もちろんです!」


ザック様からの申し出を二つ返事で引き受けた。


「リーナと同じだ…。」

「纏う魔力量が増えている?殿下、王城に戻ったら魔力量の再判定を受けてください。」

「分かった。」

「あれ?でも、ザック様の魔力量はある程度あるって…。」


私は、ふと疑問に思って聞いてみた。


「魔力の操作が上手くいっていなかったのなら、測定器にも正確に流し込めていなかった可能性が高い。」

「それで、結果が変わるのですか?…それって、本人が持つ潜在的な魔力量の正確な値は出ませんよね?」

「……………陛下へ報告し、改良が必要だな。」


それで区切りがついたと判断したのだろう。ルーフが話しかけてきた。


「なぁ、リーナ。そろそろ練習に行っていいか?」

「そうだった!お父様。ルーフ達が魔法の練習をしたいそうなので、もう少し時間を良いですか?」

「俺も。」

「僕も。」

「アイザック殿下、よろしいですか?」

「ああ。僕も練習をしたい。」

「では、今日はここで一泊しよう。ロンドとメルも練習してみてくれ。」

「「はい。」」


え?夜までここで練習するって事?

まだ昼前よ?

私、汗を流したかったな。

………ま、しょうがないか。

でも、水浴びくらいできる所はないかな?


「お父様。この辺りで湖などはありますか?」

「少し戻るとあるぞ。」

「その少しは、歩いていけますか?」

「歩くのは遠いな…。」

「…分かりました。」


諦めるしかないか…。


と思っていたら、魔力操作ができたザック様が魔法の練習をしている様子が、目に入った。


そうだよ!魔法!


「メル!」


サリーナは、魔力操作練習中のメルの所へ向かった。


「サリーナ様。どうかなさいましたか?」

「バケツとか桶はある?」

「馬車の荷物入れに、ございます。お持ちしますか?」

「良いわ。練習続けていて。」


荷物が入っている場所は分かる。私はひとり、馬車に向かった。


「えーと…、あった!」

「リーナ。」

「ザック様。魔法の練習は良いのですか?」

「うん。調子が良すぎてびっくりしてる。リーナは、何をしているの?」

「汗を流す用意をしようと思って。」

「?」

「このバケツを洗って、ここに水を溜めます。少し温めの温度にして、これで身体を洗います。そして、水を頭から被って…」


あれ?水の球体を作って、温めることって可能なのかな?


サリーナは手のひらに水の球体を作る。

手に熱を集めるイメージ。

そして、熱を水球に伝える。


「どうでしょう?」


見た目からは温かくなっているか、分からない。


「ザック様、触ってみてください。」

「その水の球を?」

「はい。」

「………温かい。」

「では、これをバケツに…。」


サリーナが、バケツの中に水球をおろすと、球体ではなくなった。

そして、サリーナもお湯に触ってみる。


「うん、温かい。つぎは…」


サリーナは再度、温かい水の球を作る。

その球をシャボン玉の様に移動させようとすると、割れてしまった。


「リーナ。何をしようとしているの?」

「温かいこの水の球を自由に扱えれば、シャワーもできるのではないかと…。」

「シャワーか…。」


アイザックもサリーナの様に水の球を作る。


「リーナ。これから、どうする?」

「手から熱を伝えます。」

「熱…。」


アイザックは、手に神経を集中した。すると、水が沸騰し始める。


「ザック様!?やり過ぎです!火傷してしまいます!」


アイザックが、ポンとその球を投げると、少し離れたところで、地面に落ちて割れた。


「加減が分からない…。」

「今日の所は、シャワーは諦めて、身体を拭くだけにしましょう…。」


いくら何でも、全てが簡単には行かないわよね。私も、もっともっと練習が必要ね。


「せっかく、魔法がスムーズに使えるようになったのに、まだ役立たずでごめん。」

「いいえ。ザック様のせいではございません。私も練習を頑張ります!」

「リーナ。」

「はい?」

「ありがとう。」

「?」

「分からなくて良いよ。僕がお礼を言いたくなっただけだから。」

「???」


サリーナが不思議そうな顔をしても、アイザックは微笑んだだけで、それ以上何も言わなかった。


「リーナ。急に何やら、やりだすから驚いたよ。もう終わったのかい?」


私達が話していると、お父様が様子を見にやってきた。


「あ、はい。思っていたものは無理でしたが、汗を流す事くらいは出来そうです。」

「汗を流す?」

「あれ?話しませんでした?」

「湖はあるか聞かれはしたが?」


私は、お父様に説明した。


「なるほどな、そういう事か。」

「普段の訓練等では、どうしているのですか?」

「私は最近、訓練に出ることは少ないが、何もしないことが多いかと思う。湖が近いなら水浴びすることもあるが…。」

「魔法が使えるのに?」

「リーナ。忘れていないか?浴びる程の水を出せる者は少ない。」

「…そうでした。」


そっか。浴びる水があるなら、他の用途に使うか…。


「お父様、今日は皆が順番に使える様に、お湯を用意しますね。」

「しかし、そんな量…。いや、限界を知っておくのも必要か。」

「まだ、全然元気ですよ。」

「無理はしない事だ。」

「はい!」


皆が練習している間、私とザック様は、シャワーや、お湯を作る練習をしていた。

ザック様は、まだ熱湯になってしまうが、それを私が水で薄めて丁度良くする。


そして皆、練習が終わり馬車の近くまで戻ってきた時にバケツを見て驚いている。


「バケツが2つしかなかったので、順番にお願いします。こちらが汚れ用、こちらが仕上げ流し用です。」


私とメルがいるからなのか、男性陣は順番に馬車の影で身体を拭いていく。


「さっぱりしたよ。リーナ、ありがとう。」


ザック様が、濡れ髪のままこちらへやってきた。


「いいえ。ザック様も一緒に用意をしたのです。お礼は…。」

「でも、リーナが言わなければ、こんな思いはできなかったから。」

「ザック様…。」


サリーナとアイザックは見つめあった。


この年齢で、この男の色気。

末恐ろしい…。


「リーナ、次はお前たちだ。馬車の中でやりなさい。」


お父様に声をかけられる。


はっ、やばい!何か吸い込まれそうだったわ!


「はい!お父様!…ザック様、失礼いたします。」

「あ、うん。」


私は、ザック様にひと声かけて離れた。


「サリーナ様。お手伝い致します。」

「ありがとう。」

「では、中へ…。」


メルが馬車のドアを開けてくれる。


馬車の中?

ここ、濡れるよね?


「メル…。」

「はい。」

「馬車の中でやって濡れたら、寝る時困るよね?」

「あちらの馬車で寝ることができるので、大丈夫ですよ。」

「…明日までに乾く?」

「はい。……たぶん。」


とりあえず、私とメルは濡らさないように注意しながら清拭した。


「やっぱり、少し濡れてしまったわね。」

「そうですね。今日はあちらの馬車で、寝ましょう。」

「分かったわ。」


馬車から出ようとした時、メルの髪から雫が落ちた。


タオルの枚数も限られているのに、私の髪を拭いてくれたから…。


メルの髪に対して、私の髪は水が落ちては来ない。


………そうだ!


「メル、ここは濡れていないわ。座って。」

「サリーナ様。どうなさいましたか?」


私は濡れていない場所を指し、座るよう促すが、首を傾げるだけで座らない。


「良いから、座って!」


座ろうとしなかったメルを、少し強引に座らせた。


「そのままね。」


サリーナは、手のひらを自分の頭に向ける。


初めがメルだと失敗したら大変!まずは試しに自分のを。


ドライヤー…、温かい風…。

ついでに、つやつやキューティクル!


ブワァ!


髪の周りに風がふく。


うん、温かい。


少しして風を止めて、髪を触ってみる。


乾いてる。そして、こころなしかサラサラなような…。


「サリーナ様!?それは!?」

「ちょっと試してみたの。大丈夫そうだから、メルにもしてみていいかしら?」

「よろしいのですか?…お願いいたします。」


メルは、そういうときつく目を閉じる。


ブワァ!


メルの髪は完全に乾き、つやつやしてキューティクルができている。


「サリーナ様。サラサラです…。」


メルは自分の髪を触りながら、驚いている。


「うん、うん。成功してよかったわ。」


私は馬車を降りると振り返り、馬車の中にも魔法をかけた。


「サリーナ様、何をなさったのですか?」

「馬車の中も乾かしたのよ。」


メルは、馬車の中を覗き込む。


「…乾いています。」

「良かった。ついでに、お父様達の髪も乾かしましょう。濡れたままでは風邪をひいてしまうわ。」

「そうなのですか?」


メルは、不思議そうだ。

それもそうだろう。

この世界で髪は、タオルドライして終わりだ。後は、乾くまで待つか、完全に乾かない内に結ってしまう事もある。


髪には最悪よね…。


その為、髪が傷みパサパサの子も多い。


「お父様。」

「終わったかい?…!?」


ロンドと話していたお父様は、こちらを見て目を見開く。


「リーナ、髪が…。」

「はい!乾かしました。」

「乾かす…、そうか。しかし、それだけではないと思うくらい艷やかだが…。」

「ダメージケアもしました。」

「ダメージケア…。」

「はい。皆の髪も乾かしますね。」

「あ、ああ。ありがとう。………リーナだからな。」

「何ですか?」

「いや、何でもないよ。頼む。」


私は、皆の髪を乾かしていった。




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