パール、アイザックの元へ
「では、今後の予定や正式な婚約手続きは、また後日。アイザック殿下、遅くなってしまったので、夕食を一緒にいかがですか?」
「ありがとうございます。ぜひ。」
「はぁ…。ザックと兄弟か。」
「リオンよろしく。リック兄上も。」
「まだ、兄ではありません。」
「すぐになるよ?」
「…まだ先です。」
「ふふふっ。」
私は、その3人のやり取りで、笑ってしまった。
「今日は、何だろうな?」
「リーナ、知ってる?」
「いいえ。ルーフ分かる?」
「もちろん。クンクン…この匂いは油淋鶏だな。」
「ゆーりんちー?」
アイザック様は、どんな料理か分からないようだ。
まぁ、そうだろう。この世界になくて、私が以前リクエストして作ってもらったのだから。
「はい。美味しいですよ。」
「それは楽しみ。」
食堂へ移動し着席すると、料理が運ばれてくる。
「これは何?」
「お米です。」
「え?これが?」
小さい頃のピクニックの日から、我が家の食卓にはお米が度々並ぶようになっていた。
「油淋鶏と合いますよ。」
「そうそう。一度食べるとやめられないよ。」
「殿下もどうぞお召し上がりください。」
「で、では…パク。……………うまっ。」
その後は、時折目を丸くしながら、無言で食べ進める。
お父様達も食べ進め、4人のお皿は、あっという間に空になった。
「こんなに美味しい物があったんだな…。」
アイザック様は、ボソッと呟いた。
「これらも、リーナのリクエストから生まれました。」
「サリーナ、貴方は本当に…。」
アイザック様の言葉はそこで止まった。
その先が気になるけど?
「婚約の印は何がいい?」
「?」
「婚約をしたら、お互いに何か送り合う習わしなんだよ。」
私が首を傾げていると、お父様が教えてくれた。
「えーと、一般的には何を送るのですか?」
「その家によって様々だな。金の時もあれば、宝飾品の時もある。」
結納金みたいなものか…。
こういうのって、なんか意味があったりするよね?
「それって、財力を示す物とかなんとか、意味がありますか?」
「まあ、ある意味そうだな。その家の価値観も出るからな。」
「手頃な物では、いけないということですか?」
「いけなくはないが…。」
お父様は言葉を濁した。
まぁ、あまりに手頃では、面目立たない所もあるのだろう。
「サリーナは、欲しいものがあるの?」
「特にないのです…。」
「前世には、そのような習わしは無かったのかな?」
「お金…結納金という物や、婚約指輪と、結婚指輪というものがありましたね。」
「婚約指輪?結婚指輪?違いは?」
「その名の通りですが、婚約の約束をする時に送るものと、結婚式にペアでつけるものですね。」
「ペアで…?」
「はい。結婚指輪は、生活の邪魔にならないシンプルなものが多いです。」
「それは、常につけるということ?」
「そうです。左手の薬指に常につけている方が多かったですね。心臓につながる指だと言われていました。」
「採用!僕はサリーナへ指輪を送るよ。まずは婚約指輪だよね?結婚指輪がシンプルなら、婚約指輪は少し華やかでも良いのかな?」
「はい。」
「どんな石がいい?」
「えーと、お任せいたします。」
「分かった。」
「アイザック様は何がよろしいですか?」
「僕は、周りの牽制にもなるから、スウィンティー家を表す何かが良いかな。」
「我が家を表すものですか?」
私が首を捻ると、兄様達がアイディアを出してくれる。
「家紋を入れた何かとか?」
「リーナの目の色の何か。」
「まぁ、無難だな。」
「あら、もっと分かりやすいのがあるわよ。」
パールがにこにこしながら、会話に入ってきた。
「「「何?」」」
サリーナ、パトリック、ダリオンは声を揃えて、パールに問いかけた。
「わ·た·し·た·ち!」
「「「え?」」」
「パール!貴方達は物じゃないのよ!?」
「でも、一番分かりやすいわよ。リーナの力の一部を渡す事になるのだもの。」
「そんなの…。」
「リーナとの繋がりは消えないから、大丈夫よ。」
「そうじゃなくて、貴方達と離れるなんて…。」
「全員行く必要はないだろうし、毎日会えばいいじゃない。ね、王子様。」
「あ、ああ。もしそうなった時はいつでも会えるように取り計らう。」
「でも、学校が…。」
「送り迎えで、会えるんじゃない?」
「ルーフとアルはどう思う?」
「問題ない。俺は、行かないし。」
「僕は行っても、いつでも飛んでこれるし良いよ~。」
「はぁ…。お父様、どう思いますか?」
「確かに一番分かりやすいな。契約獣の約束にも反しない。」
「分かりました。…アイザック様、私の大切な友達をよろしくお願いいたします。」
「ああ。大切に預かるよ。」
「預かる?」
「結婚したら、一緒に住むんだし、それまで預かるという事で。」
「は、はい。」
結婚…一緒に住む…。
そ、そうよね…。
「…あ、それなら、別に婚約の印を送った方がいいですよね?何にしよう。」
「リーナ。今日は、もう遅い。ゆっくり考えなさい。アイザック殿下も、城へは連絡いたしますので、今日はお泊まりください。」
「え?あ、…いや、帰るよ。」
赤い顔をしたアイザック様が席を立った。
「私も行くわ。」
パールが、アイザック様へ近づく。
「パール?」
「さっき話してたやつよ。私が行く。リーナ、王子…じゃなくて、アイザック君は私が見ておくわね。」
「アイザック君って…。それに見ておくって、何を?」
「他の女に現を抜かさないように…と、リーナのタイプに近づく様に…。」
「パール!?」
「リーナ、任せてね。」
パールは、ウインクをした。
はぁ…。全く、パールは…。
「アイザック様。…パールは少し気分屋ですが、嘘のない素直な良い子です。食事は一日一食で、何でも食べます。あとは、」
「リーナ、自分で説明できるわ…。」
「あ、そうか。そうよね。…パール、貴方が話せることは、」
「分かってるわ。内緒よね。」
「うん。アイザック様、よろしくお願いいたします。」
「ああ。…サリーナ、あの…えーと……僕の事はザックと呼んで欲しい…。」
「あ…、ざ、ザック様。…では、私の事はリーナと。」
「リ、リーナ。また明日。」
「は、はい…。」
そして、ザック様はパールを連れて、王城へ帰って行った。
夜…
私は、いつもはソファで寝るルーフを、抱きまくらにしていた。
「重いんだが…。」
「少しだけ。」
アルも近くにいてくれる。
「僕も撫でて~。」
「お安い御用よ。」
私は、アルをゆっくり撫でた。
「ルーフ、アル、おやすみ。」
「「おやすみ。」」
“パール、おやすみ。”
“おやすみ。”
!?
「返ってきた!」
「そりゃあ、な。」
「うん。繋がりは、そのままだしね。」
“だから、言ったじゃない。いつでも話せるし、何も変わらないわよ。”
“撫でられない…。”
“…明日、頼むわ。”
“任せて!”
“アイザック君が、朝でも帰りでも時間を作ってくれるそうよ。”
“都合の良い方でお願いします、と伝えて。”
“では両方、ですって。ねぇ…、小型手紙魔法陣だっけ?あれ、もう1つ作って。”
“お父様に確認しておくわ。”
“分かった。じゃ、おやすみ。”
“おやすみ、パール。”




